輸出前の大麻の花穂の検査:海外バイヤーに認められる分析証明書の要件(前編)

大麻の花穂をタイから海外の医療市場へ輸出するには、まず検査機関がバッチごとに検査します。検査機関はその結果を分析証明書(COA)として発行します。COAは、そのバッチに何が含まれているかを示す報告書です。この報告書についてタイの規則が定めているのは最低限の内容だけです。それ以外の要件は輸入国の規制当局とバイヤーの契約で決まり、その基準はタイの規則よりずっと厳しくなっています。この記事は前編・後編の2回に分けて、欧州やオーストラリアのバイヤーがCOAを受け入れるために必要な項目をまとめます。各基準値は、確認できた範囲だけを載せています。

タイの規則が定める範囲と、その限界

タイでは、大麻の花穂は規制ハーブに当たります。法的根拠は保健省告示「規制ハーブ(大麻)」仏暦2568年で、2025年6月26日に施行されました。

販売や輸出をする花穂は、GACPの認証を受けた栽培施設で育てたものでなければなりません。GACPはGood Agricultural and Collection Practices(薬用植物の適正農業・採取規範)の略です。薬用植物の栽培、収穫、取り扱いの方法を定めた品質基準です。輸出には、これとは別に輸出許可も必要です。輸出許可の条件はDTAM(タイ伝統・代替医療局)が定めています。

2026年には、仏暦2569年の2つの省令によって許認可が厳しくなりました(このトピックで解説しています)。大麻・ヘンプ抽出物に関する省令は2026年4月26日に施行されました。規制ハーブ(第2号)は花穂の許可基準を厳しくする省令で、2026年4月30日に施行されました。ただし、どちらの省令もCOAに載せる項目は定めていません。

大麻管理法案(Cannabis Control Act)はまだ成立していません。内閣は2026年9月22日に法案を承認し、下院に送りました(法案の現状はこちら)。

つまり、GACP認証と輸出許可の条件は、タイが求める最低限にすぎません。この最低限だけを準備した輸出業者は、欧州やオーストラリアのバイヤーが使えないCOAを持って商談に臨むことになりかねません。農場からバイヤーに届くまでの流れは輸出までの道筋で説明しています。主な輸入市場の比較は5つの医療用花穂市場の比較を、輸出に関する用語は輸出用語集をご覧ください。

最初にやること: COAがどの基準を満たし、どの基準値をクリアする必要があるのかを、バイヤーに書面で確認してください。その答えを見れば、どの検査を依頼すればよいかが分かります。バイヤーが使えない検査項目にお金を払わずに済みます。

1. バイヤーが基準にする欧州の規格

2024年7月1日から、欧州薬局方(Ph. Eur.)にモノグラフ3028 Cannabis flower (Cannabis flos)(大麻の花穂)が収載されています。Ph. Eur.は、医薬品の品質基準を定めた欧州の公式な規格書です。発行元はEDQM(欧州医薬品品質部門)です。モノグラフとは、1つの原料について、どの試験に合格する必要があるか、各試験の基準値はいくつかを定めた公式の規格です。

モノグラフ3028は追補11.5(Supplement 11.5)で公表されました。同じときに、カンナビジオール(CBD)のモノグラフも別に公表されています。欧州のバイヤーが「Ph. Eur.に適合した」花穂を求めるときは、この文書のことを指しています。

このモノグラフは2つの用途を対象にしています。1つは、抽出物を作るための原料としての花穂です。もう1つは、吸入または経口で用いる生薬としての花穂です。

このモノグラフは、乾燥させたすべての薬用植物に適用される一般モノグラフHerbal drugs(1433)とあわせて読む必要があります。花穂は患者が吸入することもあるため、いくつかの基準値は一般的な生薬の基準より厳しく設定されています。

下の表はチェックリストとして使えます。「(報告ベース)」と記した項目は、モノグラフの公式本文ではなく、公表された抜粋や要約から取った情報です。頼りにする前に、公式本文で確認してください。

試験 確認する内容 要件
確認試験A 肉眼観察:大麻の花穂であることを目で確認する 植物学的な記述と一致すること
確認試験B 顕微鏡観察:顕微鏡で植物の組織構造を確認する 記述と一致すること
確認試験C HPTLC(高性能薄層クロマトグラフィー):プレート上にカンナビノイドに特有のパターンを出す試験 パターンが一致すること(報告ベース)
定量(カンナビノイド含量) 液体クロマトグラフィー:各カンナビノイドを分離して測定する分析法 報告ベース:濃度が分かっている標準試料1点と比べ(「一点外部標準法」)、補正係数を使う
総CBN CBN(カンナビノール)と、その酸型であるCBNAの合計。CBNはTHCが分解してできるため、古さや劣化の目安になる 報告が必要(報告ベース)
異物 花穂以外のもの 最大2%。患者に処方する場合は、報告によると種子なし、長さ1.0 cmを超える葉なし。2025年の改訂案(Pharmeuropa 37.4)では「成熟した種子なし」に緩和され、葉は2%の上限の中に数える
乾燥減量 試料を乾燥させたときに減る重量、つまり水分の総量 最大12.0%(案の段階では10.0%)。報告されている試験条件:刻むか粉砕した花穂(ふるいにかけないもの)1.000 g(1グラムを小数点以下3桁まで量る)、40 °C、中程度の減圧、24時間
元素不純物(重金属)、Ph. Eur. 2.4.27章 有害な金属。単位はppm(100万分率。1 kgあたりのmg数) 医薬品として患者に処方する場合:ヒ素(As)≤0.2、カドミウム(Cd)≤0.3、鉛(Pb)≤0.5 ppm。それ以外の場合:Cd ≤1.0、Pb ≤5.0 ppm。水銀(Hg)≤0.1 ppm(報告ベース)
残留農薬 農薬の残留 Ph. Eur. 2.8.13章
アフラトキシンB1 一部のAspergillus属のカビが作る毒素 最大2 µg/kg(1 kgあたりのマイクログラム数)、試験法はPh. Eur. 2.8.18章(報告ベース)
微生物 細菌、酵母、カビ Ph. Eur. 5.1.8章/5.1.4章(吸入か経口かで異なる)

モノグラフは、花穂を3つのケモタイプに分けています。ケモタイプとは、THCとCBDの含量にもとづく化学的なタイプのことです。数値はすべて乾燥重量あたりです。

  • THCタイプ: 総THCが5.0%以上、かつ総CBDが1.0%以下。
  • CBDタイプ: 総CBDが5.0%以上、かつ総THCが1.0%以下。
  • 中間タイプ(報告ベース): 両方とも1.0%以上で、THC:CBDの比が0.2〜5.0の範囲。

患者に処方する花穂には、**±10%**の許容幅もあります。これは、実際に測った総THCと総CBDが、ラベルに書いた含量からどこまで外れてよいかを決めるものです。ケモタイプの境界線を広げるものではありません。

栽培者にとって特に大事な点が2つあります。1つ目は、患者に処方する場合の金属の基準値(Cd 0.3、Pb 0.5 ppm)が、一般の基準値(Cd 1.0、Pb 5.0 ppm)よりずっと厳しいことです。食用作物の基準に合格する花穂でも、この基準には不合格になることがあります。

2つ目は、報告によると、このモノグラフには別のカビ毒であるオクラトキシンAについての明確な要件がないことです。それでも、バイヤーは契約でこの項目を追加することがよくあります。改訂版のモノグラフは、2025年のPharmeuropa第37.4号で意見募集のために公表されています。PharmeuropaはEDQMの機関誌で、規格の案を公表して意見を募る場です。契約を結ぶときに、どの版が有効なのかを確認してください。

訳者注:花穂に含まれる重金属は、たいてい根が吸い上げたもの、つまり土や培地、水、肥料から来ています。輸出用に本格的に栽培する前に、少量のバッチを1つ、患者に処方する場合の金属の基準値で全項目の検査に出してください。不合格だったら、培地、水、肥料を別々に検査すると、原因がどこにあるかが分かります。少量の検査で不合格になるほうが、輸出バッチが不合格になるよりはるかに安く済みます。また、高温多湿の保管環境ではAspergillus属のカビが増えやすくなります。そのため、アフラトキシンの検査結果は、保管場所がどれだけ乾燥していて、どれだけ密閉されているかで変わります(水分については後編を参照)。

やること: 契約がモノグラフ3028のどの版にもとづいているかを、バイヤーに確認してください。花穂の用途が吸入、経口、抽出物の原料のどれなのかも確認しましょう。その答えによって、バッチがクリアすべき金属と微生物の基準値が決まります。

2. THCの数値の裏にある分析法

検査機関がカンナビノイドを測る方法は、主に2つです。1つ目のGC(ガスクロマトグラフィー)は、高温の注入口で試料を加熱します。この熱で、生きた植物が作る酸型のTHCAがTHCに変わりますが、すべてが変わるわけではありません。そのため、GCで出した「THC」の数値はHPLCの結果と比べられません。ただし、検査機関が事前に誘導体化(熱で変化しないように試料を化学的に処理すること)をしていれば別です。

HPLC(高速液体クロマトグラフィー)では、酸型は変化しません。THCAとΔ9-THCを別々に報告し、検査機関がそこから合計値を計算します。

  • 総THC = Δ9-THC + (0.877 × THCA)
  • 総CBD = CBD + (0.877 × CBDA)

THCAはTHCに変わるときにCO₂を1つ失うため、分子が軽くなります。0.877という係数は、その分子量の比です。CBDAがCBDに変わる場合も同じです。

バイヤーは通常、HPLCで再検査します。あなたのCOAが別の分析法を使っていると、2つの数値は一致しません。するとバイヤーは報告書全体を疑うかもしれません。詳しくは、記事の冒頭でリンクしたCOAのトピックで説明しています。

訳者注:タイの検査機関に問い合わせるときは、試料を送る前に、カンナビノイドをHPLCで測っているかを確認してください。酸型と中性型を別々に報告するかどうかも確認しましょう。その答えを聞けば、お金を払う前に、報告書が海外で使えるものかどうかが分かります。

やること: カンナビノイドの分析法をCOAに明記するよう求めてください。分析法が書かれず、「THC」の数値が1つしかない報告書は受け取らないでください。

3. 微生物:最も不合格になりやすい検査

最も分かりやすい数値を公表しているのは、オーストラリアの医薬品規制当局であるTGA(Therapeutic Goods Administration、医薬品・医療機器行政局)です。以下の数値は2つの文書から取っています。

  • TGAのガイダンスMicrobiological quality of medicinal cannabis products(Version 1.0、2020年2月。ウェブページとしても公開)。医薬品の微生物基準を定めたTherapeutic Goods OrderであるTGO 100の第11条(1)を適用したものです。
  • TGO 93。医療用大麻の製品基準です(Therapeutic Goods (Standard for Medicinal Cannabis) Order 2017。Federal Registerの2022年3月28日付編纂版)。

TGAのガイダンスは改訂されることがあります。数値を頼りにする前に、最新版を確認してください。

単位について簡単に説明します。CFU/gは、1グラムあたりのコロニー形成単位です。検査機関は試料を培地のプレートに広げます。生きた微生物やその塊が1つずつ、目に見えるコロニーに育ち、その数を数えます。TAMCは総好気性微生物数で、酸素のある環境で増えるすべての細菌の数です。TYMCは総酵母・カビ数です。

要件 吸入(喫煙または気化吸入) 経口(報告ベース。Ph. Eur. 5.1.4の天然由来原料に対する緩和規定)
TAMC ≤ 200 CFU/g ≤ 20,000 CFU/g
TYMC ≤ 20 CFU/g ≤ 200 CFU/g
胆汁酸抵抗性グラム陰性菌(多くの腸内細菌を含むグループ) 検出されないこと ≤ 100 CFU/g
Staphylococcus aureus 検出されないこと 1 g中に検出されないこと
Escherichia coli — 1 g中に検出されないこと
Salmonella — 検出されないこと
Pseudomonas aeruginosa 1 g中に検出されないこと(吸入製品に対するTGAの一般基準による) —

TGAは、吸入の基準値を最低限の要件としており、これですべてではないとしています。

この記事の中で最も大事なのは、2つの列の差です。吸入用の花穂では、細菌の基準値は100分の1、酵母・カビの基準値は10分の1になります。吸入用の花穂は、施設がどれだけ清潔でも、もともと付いている微生物だけで不合格になることがよくあります。

そのため、バイヤーは除染(微生物を殺す処理)を、選択肢ではなく購入の条件にすることが多いのです。この数値を見たことがない栽培者が、最初の不合格に驚くことが多いのも同じ理由です。

訳者注:タイの30〜35 °Cの気温と雨季の湿度は、乾燥中や保管中の花穂にカビや細菌が増える原因になります。それでも衛生的な取り扱いは大切です。処理の前の段階で微生物の量を減らせるからです。契約を結ぶ前に、少量のバッチを1つ吸入の基準値で検査してください。年に2回収穫するなら、雨季のバッチと乾季のバッチを別々に検査しましょう。その結果で、処理をしなくても吸入の基準値を満たせるか、満たせるならどの季節かが分かります。

やること: 試験の結果を上の表の吸入の列と比べてください。酵母・カビが20 CFU/gを超えていたら、除染を計画するか、基準値がもっとゆるい用途向けのバイヤーを探してください。

4. 除染:微生物は減るが、香りも減る

下の表には2つの単位が出てきます。kGy(キログレイ)は、原料1 kgあたりに吸収された放射線の量です。log減少は、どれだけの微生物を殺したかを表します。1-logは90%、3-logは99.9%、6-logは99.9999%を殺すという意味です。

これらの数値はあくまで目安です。業界の技術比較から取ったもので、規制当局や査読付きの線量研究によるものではありません。

方法 完全に殺菌するための一般的な線量 減少量 届く深さ テルペン(香り成分)への影響
コバルト60(Co-60)線源からのガンマ線 7.5〜8.4 kGy 約6-log 深くまで、全方向から均一に届く テルペンの組成パターンは変わらない。一部のテルペンは減る
電子線(E-beam) 約10.3 kGy 約4.5〜6 log 浅め。花穂をどれだけ密に詰めるかが影響する 最初の損失はわずかだが、保管中に大きくなる。モノテルペン(最も揮発しやすい香り成分)が最も影響を受ける
コールドプラズマ(低温で電気を帯びたガス) 約6-logまで約12分 10分で約3-log 表面のみ よりマイルドだとうたわれているが、毎回同じ結果が出るとは証明されていない
酸化エチレン(滅菌用のガス) — — — 国の当局が認め、残留管理がバリデーション(妥当性確認)されない限り、EUの医療用花穂には現実的な方法ではない

ガンマ線については、査読付きの研究(Frontiers in Pharmacology、2016年)で、THCとCBDの含量に変化はなかったと報告されています。一部のテルペンはわずかに減りましたが、テルペンの組成パターンは変わりませんでした。

オランダでは、Bedrocanの花穂がOffice of Medicinal Cannabis(OMC)を通じて供給されています。OMCは医療用大麻を扱うオランダ政府の機関です。この花穂はガンマ線照射されています。OMCの最近の出荷証明書(各バッチの供給を許可する文書)には、10.0 kGyの線量が記載されています。

ドイツでは、放射線照射した医療用花穂にはBfArM(連邦医薬品医療機器研究所)の承認が必要です。法的根拠は、放射線で処理した医薬品に関するドイツの政令AMRadVです。申請には次の3つを含めることが求められます。

  • プロセスバリデーション(妥当性確認。処理が毎回同じ結果を出すことの証明)
  • 照射前の微生物の量
  • 成分のスペクトルが変わっていないことを示すデータ

輸入業者によると、承認は製品ごとに取る必要があるそうです。

ここには商業上の大きなジレンマがあります。放射線照射でモノテルペンの一部が失われます。モノテルペンは香りを左右し、そのため価格も左右します。高価格帯のバイヤーは、まさにこの理由で処理済みの花穂を受け取りません。しかし、吸入用の酵母・カビの基準値20 CFU/gは変わりません。除染をしないと決めた栽培者は、基準値の違う別の市場を選んでいることになります。処理を省いたからといって、同じ花穂がこの市場に入れるわけではありません。

訳者注:タイの栽培者にとって、処理をするかどうかで、花穂が吸入用の市場に受け入れられるかが決まることがあります。タイ原子力技術研究所(TINT)は、ハーブやスパイスのガンマ線照射を公共サービスとして提供しています。また、ハーブ製品向けに電子線処理も導入しています。ただし、TINTやタイ国内のほかの施設が大麻の花穂を受け付けるかどうかは確認できませんでした。施設に直接問い合わせてください。処理のために許可を受けた施設の外へ花穂を移す前に、どの許可や記録が必要かをDTAMに確認してください。決める前に、バイヤーにも次の点を確認しましょう。放射線照射した花穂を受け入れるか、どの方法と線量か、輸入国側でバイヤーが処理するのか、です。処理ができる場合は、まず小規模な試験から始めてください。同じバッチで処理の前後にテルペンと微生物を検査すると、業界の数値に頼らずに自分の花穂の香りの損失が分かります。電子線を使う場合は、花穂を均一に詰めてください。詰め具合で電子線の届く深さが変わるからです。

やること: 除染についてのバイヤーの方針を、収穫前に書面でもらってください。そのうえで、処理をして吸入用の市場を目指すのか、未処理の花穂を受け入れるバイヤーを探すのかを決めましょう。

参考文献(前編)

この記事は、それぞれの国や地域で合法的に事業を行う読者のための参考情報です。規制、検査、法律に関する助言ではありません。「報告ベース」と記した数値は、モノグラフの公表された抜粋や要約から取ったものです。除染の数値は目安です。最新の基準値は、該当する薬局方の最新版と規制当局のガイダンスで確認してください。検査機関を頼りにする前に、その検査範囲を直接確認してください。

ご質問や、ご自身の試験バッチの結果は、このトピックの下の返信欄でお気軽にお寄せください。

後編はこちら:輸出前の大麻の花穂の検査:水分、タイの検査機関、分析証明書の最終確認(後編)