開花初期のストレッチ:12/12に切り替えると大麻が伸びる理由、伸びる量の目安、トレーニングで抑える方法(前編)

フォトピリオド大麻の照明時間を1日18時間から12時間に減らすと、多くの株はその後1〜3週間で大きく背が伸びます。栽培者はこれを「開花期のストレッチ」と呼びます。栽培者の報告では、遺伝的性質(系統)によっては、切り替え当日より約50〜300%高くなることがあります。前編では、ストレッチが起こる理由と、株のタイプごとにどれだけ伸びるかを説明します。あわせて、ライトとの距離の目安と、高さを抑える4つのトレーニング方法も紹介します。

ストレッチとは何か、いつ起こるか

フォトピリオド大麻は、夜(暗期)が十分に長くなると開花を始めます。室内では、タイマーを「18時間点灯・6時間消灯(18/6)」から「12時間点灯・12時間消灯(12/12)」に切り替えて開花させます。この切り替えを、栽培者は「フリップ」と呼びます。フリップ前の株は栄養成長期にあり、葉と茎だけを育てています。

株の先端がライトにどこまで近づくかは、ストレッチで決まります。花芽がつく位置(バッドサイト)すべてに光が均一に届くかどうかも、ストレッチに左右されます。それが収穫量に影響します。そのため、ストレッチの管理は室内栽培の基本技術です。

目安は次のとおりです。

  • 時期: フリップの1〜3日後に始まります。2週目に最も速く伸び、その後ペースが落ちて、3〜4週目までに止まります。
  • 見た目の変化: 茎で葉がつく節と節の間(節間)がはっきり長くなります。まず主茎が伸び、続いて側枝が伸びます。
  • 株が伸びる理由: 野生の大麻は風で受粉します。花が高い位置にあるほど花粉を受けやすく、繁殖に有利になります。

2024年、イスラエル政府の農業研究機関であるボルカニ研究所(Volcani Institute)の研究チームが、学術誌 Horticulture Research に研究を発表しました。それによると、ストレッチには2つの段階があります。第1段階(フリップ後およそ5〜10日目)では、主茎と節間が急速に伸びます。第2段階では新しい節間が伸びなくなり、株は詰まった花の房をつくります。

高さの増加の大部分は、最初の10日間に起こります。栽培記録にフリップの日付を書いておきましょう。そのうえで、いちばん背の高い株を1日目、10日目、21日目に測ります。こうすると、自分の栽培室でその品種が実際にどれだけ伸びるかがわかります。

株が伸びる理由:ホルモンと光の色

主役はジベレリン

ジベレリン(GA)は植物ホルモンの一種で、主に茎の細胞を長く伸ばす働きをします。フリップ後、成長点ではGA₄というジベレリンの量が少しずつ減っていきます。最初の数日はまだ茎がよく伸び、節間も長くなります。

10日目ごろになると、新しい節間は伸びなくなります。茎の伸びが遅くなり、引き締まった花の房ができ始めます。

これは実験でも確かめられています。研究者が12/12で育てている株にジベレリンを与えると、茎と節間が長くなり、花の発達が遅れました。このことから、ストレッチを主に引き起こしているのはジベレリンだと考えられます。

オーキシンは補助役

オーキシン(IAA)も植物ホルモンの一種です。成長点にたまり、ジベレリンと一緒に細胞を長くします。ただし、オーキシン単独でのストレッチへの影響は、ジベレリンに比べて小さいです。

遠赤色光は株を光の方へ伸ばす

植物は、フィトクロムという色素で光の色を感じ取ります。フィトクロムには2つの型があり、互いに切り替わります。Pr型は赤色光を吸収します。Pfr型は遠赤色光を吸収します。遠赤色光とは、人の目に見える範囲のぎりぎり端にある深い赤色の光です。

赤色光が少なく遠赤色光が多い光を受けると、PfrとPrの比率が下がります。株はこれを「周りの背の高い植物の陰になっている」と受け取ります。そこで、周りより上に出ようとして茎を伸ばします。これを避陰反応といいます。

HPS(高圧ナトリウムランプ)は、LEDより遠赤色光を多く出します。そのため、HPSの下の株は一般にストレッチが大きくなります。最新のフルスペクトルLEDでは、青・赤・遠赤色光の配合を調整できます。その分、ストレッチをより細かく管理できます。

ここからわかる、やるべきこと:

  • 高さ対策は、フリップ後の最初の10日間に合わせて計画しましょう。この時期は茎が最も速く伸び、しかもまだやわらかいからです。
  • LEDに遠赤色光だけを調整できるチャンネルがあれば、1〜2週目は低めにします。避陰反応を起こさないためです。
  • 開花初期に成長を促す資材を使う前に、必ずラベルを読みましょう。ジベレリン酸を含む製品は避けます。ジベレリンが加わると、ストレッチが長引くためです。

株のタイプ別のストレッチ量

この表では、栽培者が一般的に使うインディカとサティバの区分を使っています。さらに、日の長さではなく株の齢で開花するオートフラワーも載せています。ストレッチの数値は、フリップ後に増えた高さを、フリップ当日の高さに対する割合で示したものです。

株のタイプ 一般的なストレッチ量(栽培者の報告による概算) 例 栽培上のポイント
純インディカ 50〜100% Hindu Kush、Afghan、Northern Lights コンパクトで、室内でも管理しやすいです。目標の高さの約半分に達したらフリップします。
純サティバ 200〜300% Thai Stick、Durban Poison、Haze 高さが3倍になることもあります。フリップ前のトレーニングが欠かせません。
インディカ優性ハイブリッド 75〜150% Girl Scout Cookies、OG Kush ストレッチは中程度です。室内栽培によく合います。
サティバ優性ハイブリッド 150〜250% Amnesia Haze、Super Silver Haze スクリーン・オブ・グリーンのネットかスーパークロッピングが必要です(どちらも後述)。
オートフラワー 25〜75% Auto Northern Lights、Auto Blueberry ストレッチが最も小さいタイプです。照明時間を変えなくても自然に開花します。

フリップのタイミングの計算方法

ストレッチが100%なら株の高さは2倍に、200%なら3倍になります。

  1. まず、最終的な目標の高さを決めます。使える高さを測り、そこからポットの分とライトまでの間隔として20〜30 cmを引きます。
  2. 次に、目標の高さを(1+ストレッチ)で割ります。100%なら1、200%なら2として計算します。
  3. 例:ストレッチ100%の品種で目標が120 cmなら、約60 cmでフリップします(120 ÷ 2)。
  4. 目標が同じで、ストレッチ200%のサティバなら、約40 cmでフリップします(120 ÷ 3)。

訳者注:タイではThai Stick系をはじめ、サティバ寄りの株がよく育てられています。表のとおり、こうした株は高さが3倍になることもあります。ただし、模倣された品種名や誤った品種名で売られている種子は、表どおりに伸びないことがあります(タイの種子販売業者を見極める方法を参照)。他の農場から買ったクローンにも、害虫、ホップ潜在ウイロイドなどの病気、品種違いといったリスクがあります。ですから、表はあくまで出発点と考えてください。新しい品種は、まず1〜2株だけ小さな試験バッチとして育てましょう。フリップ時と21日目に高さを測ります。その実測の比率をもとに、本番の栽培でのフリップの高さを決めてください。

ストレッチ中のライトとの距離

株が伸びると、先端は毎日ライトに近づいていきます。下の表は、段階ごとのライトからキャノピー上面(葉と花穂のいちばん上の層)までの距離を、センチメートルで示しています。

ライトの種類(目安の数値) 栄養成長期(cm) ストレッチ期・1〜3週目(cm) 開花最盛期(cm) 備考
LED 200〜300 W 45〜60 35〜45 30〜40 発熱が少なく、近くに吊るせる
LED 400〜600 W 50〜70 40〜55 35〜45 光が強い。PPFDメーターで確認する
HPS 400 W 50〜65 40〜50 35〜45 熱い。ハンドテストを行う
HPS 600〜1000 W 60〜80 50〜65 40〜55 非常に熱い。排気ファンが必要
CMH/LEC 315 W 50〜65 40〜50 35〜45 幅広いスペクトルで、ストレッチを起こしにくい

CMHは、セラミックメタルハライドランプの略です。同じランプはLECという名前でも売られています。PPFDメーターは、キャノピーに届く光のうち植物が使える量を、μmol/m²/sの単位で測る機器です。

ハンドテスト: 手の甲をライトに向けて、キャノピーの高さで30秒かざします。熱くて不快に感じたら、ライトが近すぎます。5〜10 cm上げてください。

訳者注:ハンドテストでわかるのは熱であって、光の強さではありません。LEDは発熱が少ないため、手が熱さを感じる前に、先端が光を浴びすぎていることがあります。表でLEDにPPFDメーターを勧めているのはそのためです。また、もともと室温が30〜35 °Cあるタイの栽培室では、手が部屋の暑さも感じてしまい、結果がわかりにくくなります。キャノピーの高さに温度計も吊るしておきましょう。

ストレッチが最も速い時期には、先端が1日に5〜10 cm伸びることがあります。2週目は、ライトとの距離を毎日確認しましょう。ライトを吊るすロープか壁に固定した定規に、最低限の安全距離の位置を示す印をつけておきます。そうすれば、栽培室で作業する人なら誰でも、ライトを上げるべきときがすぐにわかります。

高さを抑えるトレーニング方法

元のガイドでは、ストレッチを抑える方法が6つ挙げられています。ここではそのうち、4つのトレーニング方法を紹介します。残りの2つ(光の色と昼夜の温度差)は後編で扱います。後編では、成長調整剤と週ごとのチェックリストも取り上げます。

1. 低ストレストレーニング:枝を傷めずに曲げる

低ストレストレーニング(LST)とは、組織を傷めないように枝をやさしく曲げる方法です。目的は、平らで均一なキャノピーをつくり、どの先端にも同じくらい光が当たるようにすることです。

  • 方法: 枝にやわらかい結束具を巻きます。下へ引っ張り、ポットの縁かトレリス(枝を支える枠)に固定します。
  • 時期: 栄養成長期の3〜4週目から、開花期2週目の終わりまでです。
  • メリット: 株へのストレスが小さく、オートフラワーを含むすべてのタイプに使えます。

2. スーパークロッピング:茎の内部をやわらかくしてから曲げる

スーパークロッピングは、高ストレストレーニングの一つです。茎の内部組織をわざとつぶして、茎を90°曲げられるようにします。曲げた部分はその後治って、太く丈夫な「こぶ(ナックル)」になります。

  • 方法: 親指と人差し指で茎をやさしくつまみ、内部がやわらかくなるまで押しつぶします。外側の表皮は破らないようにします。茎を90°に曲げ、その位置で固定します。
  • 時期: 開花期の1〜2週目、枝がまだ曲げやすいうちに行います。
  • 効果: 1か所曲げるごとに、高さがその場で15〜30 cm下がります。治ったこぶは水と養分をより多く運ぶので、その上の花穂が大きく育ちます。
  • 注意: オートフラワーにはスーパークロッピングを行わないでください。

3. スクリーン・オブ・グリーン:ネットでキャノピーを水平に保つ

スクリーン・オブ・グリーン(SCRoG)では、株の上に平らなネットを張ります。枝はネットの網目を通って伸び、同じ高さにそろいます。

  • 設置: 網目5〜10 cmのネットを、ポットから40〜50 cm上に張ります。
  • 差し込み(タッキング): 開花期の1〜3週目は、枝先がネットより上に伸びるたびに、網目に通して下へ戻します。ストレッチが終わるまでに、ネットの80〜90%を埋めることを目指します。
  • メリット: 完全に平らなキャノピーになります。元のガイドでは、収量が20〜40%増えると報告されています。

4. フリップ前のトッピングと先端の部分摘心

これらのカットは、必ずフリップ前に行います。できれば2〜3週間前が理想です。カットすると、1本の高い主茎の代わりに、低めの先端が何本も伸びるようになります。

  • トッピング: 主茎の成長点を切り取ると、新しい先端が2本できます。これは2〜3回繰り返せます。
  • FIM(「フィミング」): 成長点を全部ではなく、約75%だけ取り除きます。新しい先端が3〜4本できますが、結果は予測しにくくなります。
  • オートフラワーには、トッピングもFIMも絶対に行わないでください。

訳者注:タイの屋外やグリーンハウスでは、ライトの色も気温もコントロールできません。そのため、この4つのトレーニング方法が主な手段になります。キャノピーを低くしてすき間をつくると、枝の間を空気が通りやすくなります。これは雨季の花穂の腐れ(灰色かび病)の予防にも役立ちます。次の栽培では、まだ試したことのない方法を1つ選び、1〜2株で試してみてください。同じ品種でトレーニングしていない株と、最終的な高さを比べます。そうすれば、自分の環境でその方法が何センチ高さを抑えられるかがわかります。

次のフリップに向けた簡単な計画

  1. 使える高さを測り、品種に合ったフリップの高さを計算します。
  2. フォトピリオド株なら、フリップの2〜3週間前にトッピングします。
  3. 結束具、トレリス、ネットはフリップ前に設置しておきます。そうすれば1日目からトレーニングを始められます。
  4. 1日目、10日目、21日目に株の高さを記録します。次の計算で実測値を使うためです。

このトピックの下に、品種名、フリップ時の高さ、最終的な高さを投稿してください。タイや周辺地域の栽培者どうしで、似た栽培室での実際のストレッチの数値を比べられるようになります。

参考文献

  1. Dutch Passion (2022). Cannabis Flowering Stretch Master Guide. https://dutch-passion.blog/cannabis-flowering-stretch-master-guide/
  2. Royal Queen Seeds (2023). How to Control and Prevent Stretching in Cannabis Plants. https://www.royalqueenseeds.com/us/blog-how-to-control-stretching-reigning-in-cannabis-growth-spurts-n487
  3. Chilled Tech (2024). Reduce Plant Stretch by Controlling Day/Night Temperatures.
  4. 420 Fast Buds (2024). PGR Weed — Synthetic PGRs and Their Dangers.
  5. Alter H, Sade Y, Sood A, Carmeli-Weissberg M, Shaya F, Kamenetsky-Goldstein R, Bernstein N, Spitzer-Rimon B (2024). Inflorescence development in female cannabis plants is mediated by photoperiod and gibberellin. Horticulture Research 11(11): uhae245. https://doi.org/10.1093/hr/uhae245

本記事は、合法的な医療・農業目的の栽培のための教育情報です。タイでは、2025年6月26日に施行された仏暦2568年保健省告示「規制ハーブ(大麻)」により、大麻の花穂は規制ハーブに指定されています。2026年4月30日に施行された規制ハーブに関する省令(第2号)仏暦2569年により、大麻の花穂の許可基準はさらに厳しくなりました。大麻を栽培するには、お住まいの国・地域の法律に基づく許可が必要です。

後編はこちら:開花初期のストレッチ:光の色、昼夜の温度差、成長調整剤、1〜3週目の計画(後編)

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