2026年4月から、タイで大麻の花穂を販売するライセンスを得るには、医療・薬局・ハーブ医薬のいずれかのライセンスが必要になりました。一般の店舗登録だけでは足りません。2026年にライセンスを失っているのは、普通の小売店と同じように運営されている店です。このガイドは前編と後編の2回に分けて、ディスペンサリーのライセンスを維持するために必要なことと、停止処分を受ける原因を説明します。
このガイドで扱う内容
ディスペンサリー(大麻販売店、ร้านจำหน่ายกัญชา)とは、大麻の花穂、大麻抽出物、または大麻を含む製品を販売する店です。保健省の統計では、2025年12月28日時点でライセンスを持つ大麻販売店は18,433店でした。2025年中に期限を迎えた8,636件の店舗ライセンスのうち、更新されたのは1,339件だけです。つまり7,297店が閉店しました。これらの閉店は、2026年4月の規則が施行される前に起きています。
前編で扱う内容:
- 2026年4月の規則で何が変わったか
- 花穂のライセンスを維持するための4つの要件
- 停止処分につながることが最も多い3つの指摘事項
- 何を、誰に販売してよいか
- グロウショップ(栽培用品を販売する店)の法的リスク
- ライセンスを持つディスペンサリーの定期業務カレンダー
後編では、立入検査、スタッフの配置、更新、法令順守にかかる費用、オンライン販売、苦情記録を扱います。
訳者注:このガイドは一般的な情報であり、法的助言ではありません。ご自身のライセンスに関する判断は、大麻ライセンスを扱っているタイの弁護士に相談してください。
2026年4月の規則で何が変わったか
仏暦2569年の2つの省令によって、タイで大麻を販売できる人の範囲が狭まりました。省令とは、法律に基づいて大臣が定める細かな規則のことです。この2つの省令は、4日違いで施行されました。
抽出物に関する省令(2026年4月26日施行)
略称は「大麻又はヘンプ抽出物に関する省令 仏暦2569年」です。麻薬法典 仏暦2564年に基づいて定められました。対象は、THCを0.2%を超えて含む抽出物です。THC(テトラヒドロカンナビノール)は、大麻に含まれる主な酩酊成分です。
- これらの抽出物のライセンスを受けられるのは、次の3種類だけです。外国人事業法 仏暦2542年でいう「外国人」に当たらないタイの法人(登記済みの会社など)、国の機関、タイ赤十字社です。
- 同法で外国人とみなされる会社は、これらの抽出物を製造するライセンスを取得できません。
- ライセンスの目的は4つに限られます。医療目的、学習・研究、工業用途、そして国の機関による麻薬犯罪の予防・取締りです。
- 実際には、これらの抽出物を嗜好目的で販売することはできなくなりました。
花穂に関する省令(第2号)(2026年4月30日施行)
略称は「規制ハーブに関する省令(第2号)仏暦2569年」です。この省令は麻薬法典ではなく、タイ伝統医療知識保護振興法 仏暦2542年(1999年)に基づきます。大麻の花穂は、この法律で規制ハーブとされています。国は花穂を麻薬法ではなく、タイ伝統医療の法律で規制しています。
- 新規・更新を問わず、花穂の販売ライセンスすべてに4つの基準を定めています。
- 2022年から2025年まで続いた、単独で営業する小売型ディスペンサリーの形態は終わりました。
訳者注:1999年法の第4条では、同法に基づく規則や告示は官報(ราชกิจจานุเบกษา、政府の公式広報)に掲載された時点で効力を持つと定めています。そのため、花穂に関する省令は5月1日ではなく2026年4月30日から適用されます。販売そのものは、別の文書が定めています。2025年6月26日に施行された保健省告示「規制ハーブ(大麻)」仏暦2568年です。この告示により、花穂はPT 33(ภ.ท.33)の処方箋がある場合に限り、最長30日分までしか販売できません。同じ告示で、花穂の広告とオンライン販売も禁止されています。
あなたへの影響:2022年から2025年の間に単独の小売型ディスペンサリーを開いた場合、そのままでは要件を満たしません。花穂の販売を続けられるのは、事業として医療・薬局・ハーブのいずれかのライセンスも持っている場合だけです。このガイドでは、これを「適格ライセンス」と呼びます(要件3を参照)。
やること:事業で現在持っているライセンスと登録をすべて書き出し、それぞれの住所と有効期限も記入してください。この一覧は、以下のすべての項目で使います。
花穂のライセンスを維持するための4つの要件
第2号省令は4つの基準を挙げています。最初の申請時に適用され、更新のたびにも改めて適用されます。
1. 店舗物件を管理する権限
店舗物件を所有している必要があります。賃貸の場合は、所有者の書面による同意が必要です。大麻ライセンスに記載された住所は、適格ライセンスの住所と完全に一致していなければなりません。
たとえば、ハーブ製品のライセンスでは3A号室なのに、大麻ライセンスには3B号室と書かれているとします。元の記事によると、このような不一致は停止処分の原因として最も多い3つのうちの1つです。
やること:更新の前に、すべてのライセンスと登録を並べて確認してください。階や部屋番号まで、すべての住所が同じか確かめます。この確認をしておけば、書類上の不備だけが原因の更新拒否や停止処分を防げます。
2. 専用の独立した保管場所
大麻の花穂は、ほかの商品と同じ保管場所に置いてはいけません。省令は、保管設備を「良好な状態に維持」し、床に直接置かないことを求めています。検査官はこれを現場で確認します。
一般在庫とは別に置いた、鍵付きでラベルを貼った保管庫に在庫記録を添えておけば、この要件を満たします。ライセンス申請時に保管場所の写真を撮ってください。配置を変えるときは、事前にライセンス当局に届け出てください。写真は、設備が承認されたとおりであることの証拠になります。
訳者注:タイの暑さや雨季の湿気で、閉め切った棚の中の花穂が傷むことがあります。棚は直射日光の当たらない場所に置き、湿りやすい外壁からも離してください。棚の中に簡単な温湿度計を置いておくと、状態がずれたときにすぐ気づけます。停電でエアコンが止まった後は特に重要です。目標とする範囲は、フォーラムの保存条件のトピックに載っています。
やること:鍵付きの棚と在庫記録を今すぐ用意し、写真をライセンス書類と一緒に保管してください。
3. 適格ライセンス:最も難しい要件
単独で営業している店の多くにとって、これが最も満たしにくい基準です。次のうち少なくとも1つを持っている必要があります。
- 病院やクリニックなど、医療施設(สถานพยาบาล)の営業許可
- 現代薬局の営業許可、または医薬品製造の許可
- ハーブ製品の製造・輸入・販売の許可
- 大麻またはヘンプの抽出物を製造する工場の許可
- 民間療法師(หมอพื้นบ้าน、国が認定した伝統的な治療者)の認定
- 医薬品やハーブの工場、医薬品やハーブの販売店など、ほかのライセンス事業者に花穂を販売する栽培施設
大麻ライセンスしか持っていない店は、もう要件を満たしません。あなたの店がこれに当たるなら、ライセンスの更新日が事実上の期限です。
やること:現実的に取得できる適格ライセンスはどれか、取得にどのくらいかかるかを今すぐ調べてください。適格ライセンスがなければ、当局は更新を拒否します。
4. 営業時間中は常に研修修了者が店にいること
DTAMとは、保健省に属するタイ伝統医療・代替医療局のことです。営業時間中は常に、DTAMの大麻取扱い研修を修了した人が少なくとも1人、店内にいなければなりません。
この研修は以前は任意でした。今では、常勤の人件費がかかる要件になっています。研修修了者が病気で休んだ場合は、資格のある代わりの人が来るまで店を閉めておく必要があります。猶予期間はありません。
認められる資格は次のとおりです。
- 免許を持つ薬剤師
- 医師
- タイ伝統医療の施術者
- DTAMの公式な大麻取扱い研修の修了者
やること:少なくとも2人のスタッフに研修を受けさせ、どちらもいないときは店を閉めるというルールを決めてください。この配置の計画方法は後編で説明します。
停止処分につながることが最も多い3つの指摘事項
2025〜2026年、検査官は3つの違反に重点を置いています。3つとも、抜き打ちの立入検査で簡単に確認できます。また、どれも検査官が店にいる間に直すことはできません。
- 住所の不一致。 大麻ライセンスに記載された名前、住所、部屋番号が、適格ライセンスと違っている。検査官は立入検査中にこれを照合します。元の記事によると、タイ語版と英語版で階数の書き方が違っていただけで通知を受けた例もあります。
- 資格者が店にいない。 検査官が来たときに、その場にいる誰もDTAMの修了証を示せない。これはその場で違反になります。研修修了者が10分前までいたとしても、関係ありません。
- 記録の欠落や日付のさかのぼり記入。 次の記録は常に最新にし、すぐ検査に出せるようにしておく必要があります。在庫記録、PT 33処方箋の記録(医療用ディスペンサリーの場合)、そしてバッチ記録です。バッチ記録は、それぞれの販売がどの製造バッチから出たかを示します。直近30日の記録に抜けがあると、ちょっとした事務上のミスではなく、法令違反として扱われます。
やること:週に1回、検査官と同じ目線でこの3点を確認してください。住所を照合し、すべての営業時間に修了証を持つ人がシフトに入っているかを確かめ、直近30日の記録に抜けがないか調べます。自分で見つけた問題なら、検査官に見つかる前に直せます。
何を、誰に販売してよいか
現在の規則では、次のようになっています。
- 医療用ディスペンサリー(クリニックや薬局の一部として運営されるもの)は、ライセンスを持つ施術者が出した有効な処方箋のある患者に大麻を販売できます。1枚の処方箋で出せるのは最長30日分です。
- ハーブ製品の店は、該当する適格ライセンスがあれば、低THC製品(THC 0.2%以下)をウェルネス製品として販売できます。ただし、「この製品で病気が治る」といった治療効果をうたってはいけません。
- 処方箋のない来店客への嗜好目的の販売は、仏暦2568年告示が2025年6月26日に施行されて以降、タイのどこでも合法な事業形態ではありません。
仏暦2568年告示は、次のことも禁止しています。
- 寺院など宗教儀式を行う場所、寮、公園、動物園、遊園地での花穂の販売
- 自動販売機による販売
- 店内で吸うための花穂の販売(ライセンスを持つ施術者が自分の患者を治療する場合を除く)
DTAMの2026年6月の取締り指針では、若者への販売を重大な違反として扱い、ライセンスの取消しにつながりうるとしています。
訳者注:1999年法の第78条は、許可なく規制ハーブを販売すること(第46条)に対する刑事罰を定めています。罰則は1年以下の懲役、2万バーツ以下の罰金、またはその両方です。一部の記事では「3か月/25,000バーツ」という罰則が紹介されていますが、そのような罰則は同法にはありません。
やること:20歳未満の可能性がある客には、必ず身分証を確認してください。有効なPT 33処方箋を受け取らないまま花穂を販売することは、絶対にしないでください。この2つの確認で、販売に関する最も重い違反を防げます。
グロウショップ:法的リスクのありか
栽培用品だけを販売する店は、大麻を販売しているわけではありません。法的リスクは間接的ですが、確かに存在します。
- 宣伝の言葉づかい。 店内やオンラインの宣伝が、違法な自宅栽培をはっきり対象にしていると、幇助(ほうじょ)の責任を問われるおそれがあります。幇助とは、他人の犯罪を手助けすることです。元の記事はこれを麻薬法典の問題として扱っていましたが、大麻の花穂は現在、麻薬ではなく規制ハーブです。どの法律が適用されるかは事実関係によるので、タイの弁護士に相談してください。「大麻向けに最適化」とうたったセット商品よりも、植物栽培全般についての中立的で技術的な表現のほうが安全です。
- スタッフの助言。 無許可の栽培のためにスタッフが機材の組み合わせを勧めると、同じリスクが生じます。栽培の質問には、ライセンスを持つ事業の範囲でのみ答えるようスタッフを教育してください。
- 年齢。 法律が直接対象にしているのは大麻の販売です。それでも、20歳未満に見える客が「自分で使うために大麻を育てている」と話した場合を考えてみてください。その客に栽培用品を販売すると、記録に残るリスクになります。
- 請求書。 販売記録は詳しく残してください。あなたが販売した機材が、後に警察によって無許可の栽培現場で見つかることがあります。元の記事は、購入者と申告された用途がわかる請求書の記録を、いちばん頼りになる防御手段だとしています。
訳者注:請求書の記録がどこまであなたを守るかは、個々の事件の事実関係によって変わります。客のことで警察から店に連絡があった場合は、できるだけ早くタイの弁護士に相談してください。
やること:今月中に、店の看板、商品名、SNSの投稿を見直してください。商品と無許可の大麻栽培を結びつける表現は、すべて削除してください。
ライセンスを持つディスペンサリーの定期業務カレンダー
| 頻度 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 毎日 | 開店前に、DTAMの研修修了者がいることを確認する。開店時の在庫を記録する。 | 要件4を満たし、在庫記録を最新に保つため。 |
| 販売のたび | 処方箋番号、患者ID、製品のバッチ、数量をPT 33の記録に記入する。 | 検査官がすべての販売を処方箋と照合できるようにするため。 |
| 毎週 | 実際の在庫を数えて記録と比べる。差があればすぐに原因を調べる。 | 説明のつかない差があると、虚偽報告の調査につながることがあるため。 |
| 毎月 | 保管状態を確認する。期限切れの在庫は許可を受けた処理業者を通じて廃棄し、記録する。 | 保管場所が「良好な状態に維持」されていて、記録なしに在庫が出ていないことを示すため。 |
| 更新前 | すべてのライセンスの住所が一致しているか確認する。適格ライセンスが有効か確かめる。全スタッフのDTAM研修を改めて確認する。 | 住所の不一致と適格ライセンスの欠如が、更新拒否の主な理由だから。 |
まとめ
2026年4月以降、タイで法令を守って営業するディスペンサリーには、次の4つが同時に必要です。
- 医療・薬局・ハーブのいずれかの適格ライセンス
- すべての営業時間中に、DTAMの研修修了者が実際に店にいること
- すべてのライセンスで住所が同じであること
- 在庫記録をリアルタイムで最新に保つこと
4つのうち1つでも欠けると、ライセンスが停止されるおそれがあります。
次にやること:上のカレンダーを印刷して、カウンターの近くに貼ってください。質問や、共有したい立入検査の経験があれば、このトピックの下に返信として投稿してください。
参考文献
- Ministry of Public Health Thailand. (2025). Notification of the Ministry of Public Health Re: Controlled Herbs (Cannabis), B.E. 2568. Royal Gazette, 2025年6月25日公布、2025年6月26日施行. https://www.dtam.moph.go.th/sub-law/42864/
- Ministry of Public Health Thailand. (2026). Ministerial Regulation on Permission to Study, Research or Export Controlled Herbs, or to Sell or Process Controlled Herbs for Commercial Purposes (No. 2) B.E. 2569 (2026)(非公式の英語題名). Royal Gazette, 2026年4月30日施行. https://ratchakitcha.soc.go.th/documents/114061.pdf
- Ministry of Public Health Thailand. (2026). Ministerial Regulation on Permission to Produce, Import, Export, Sell or Possess Category 5 Narcotics, Specifically Cannabis or Hemp Extracts, B.E. 2569 (2026)(非公式の英語題名). Royal Gazette, 2026年4月26日施行.
- Thai Traditional Medicine Protection Act B.E. 2542 (1999), 第4条、第46条、第78条(訳者注で引用).
後編はこちら:タイで大麻ディスペンサリーを運営し、ライセンスを失わないために:立入検査、スタッフの配置、更新、オンライン規則、有害事象記録(後編)