患者に大麻を合法的に供給している国はどこも、2つの方式のどちらかを選んでいます。1つ目は、大麻を医薬品として扱い、通常の医薬品規制当局に任せる方式です。2つ目は、大麻を特別な対象として扱い、専門の政府機関を置く方式です。どちらを選ぶかで、供給者であるあなたにとって3つのことが変わります。誰があなたから買うのか、どの認証が必要か、そして輸入枠によって販売量に上限がかかるかどうかです。
この記事が扱うのは国際的なルールで、タイの法律ではありません。 タイでは、大麻の花穂は保健省告示「規制ハーブ(大麻)」仏暦2568年に基づく規制ハーブです。花穂は、様式PT 33(ภ.ท.33)の処方箋に基づいて調剤されます。タイのルールは、トピックタイの大麻規制(2022年〜2026年)で説明しています。以下の内容は、タイで何が認められているかを示すものではありません。
訳者注:必要な方のために、タイの法律の要点をまとめます。仏暦2568年の告示は、タイ伝統医療保護法 仏暦2542年に基づいて出され、2025年6月26日に施行されました。PT 33の処方箋1枚でカバーできるのは最長30日分です。大麻の花穂の広告とオンライン販売は禁止されています。違反した場合、1999年の同法第78条により、1年以下の懲役、2万バーツ以下の罰金、またはその両方が科されます。大麻管理法案(Cannabis Control Act)はまだ法律になっていません。内閣は2026年9月22日に法案を承認し、下院に送付しました。
1. 国内法より先にある国際条約
各国は、条約が定める枠の中で自国の制度を作ります。1961年の麻薬に関する単一条約(Single Convention on Narcotic Drugs, 1961) は、アヘン、コカイン、大麻などの規制薬物を扱う国連の中心的な条約です。この条約の3つの部分が、各国の医療用大麻制度の形を決めています。
第4条:医療と学術目的に限る
第4条は、規制薬物の使用を医療と学術目的に限っています。対象はすべての段階に及びます。生産、製造、取引、流通、使用、所持のすべてです。
この条約を監督しているのは、ウィーンに本部を置く国際麻薬統制委員会(INCB)です。INCBは第4条を根拠に、医療目的以外の大麻使用を合法化することは条約違反だと繰り返し表明してきました。
第23条と第28条:栽培を認めるなら政府機関を置く
これらの条文は、もともとアヘンのために作られ、のちに大麻にも適用されるようになりました。大麻の栽培を認める国は、政府機関を1つ指定しなければなりません。その機関は次のことを行う必要があります。
- 栽培者に許可を与える。
- 収穫終了から4か月以内に、収穫物の全量を実際に引き取る。
- 卸売、在庫保有、輸入、輸出の独占権を持つ。
第28条には重要な例外があります。産業目的(繊維と種子)または園芸目的だけで栽培される大麻には、この条約は適用されません。この例外が、産業用ヘンプ分野の条約上の根拠です。
訳者注:ヘンプの例外は条約に含まれています。ただし、何をヘンプとみなし、何を輸出してよいかは、各国の国内法が決めます。ヘンプとしてタイから輸出できるものについては、ヘンプとしてタイから実際に輸出できるもの:抽出物、種子、繊維、化粧品を参照してください。
第19条〜第21条:年間の見積り
各国は毎年、医療と学術目的に必要な規制薬物の量を、薬物ごとに見積ってINCBに提出します。INCBはこの見積りを確認し、制度を運用し、国と国の間の薬物の流れを追跡します。各国は、実際に生産、輸入、使用した量も報告します。
この見積りが上限になります。国は、1年間に見積りを超える量を製造・輸入できません。第19条により、年間の見積りが少なすぎたと分かった国は、補足見積り(年度途中の追加申請)を提出できます。
輸出する側にとっては、需要があるだけでは販売量が決まらないということです。販売量を決めるのは、輸入国の現在の見積りです。見積りは引き上げられますが、この正式な手続きを通す必要があります。
2020年の変更と、変わらなかったこと
条約は薬物を「附表」と呼ばれるリストに分類しており、附表ごとに規制の強さが違います。2020年12月2日、麻薬委員会(CND)は世界保健機関(WHO)の勧告について投票を行いました。CNDは、薬物をどの附表に入れるかを加盟国が投票で決める国連の委員会です。この投票で、大麻と大麻樹脂を附表IVから外すことが決まりました。
附表IVは最も厳しいリストでした。特に危険で医療上の価値が乏しいとされる物質のための区分です。大麻は今も附表Iに入っているので、条約の規制はすべて引き続き適用されます。この投票で取り除かれたのは、医療研究と医療利用に対する象徴的かつ実務的な障壁です。大麻が規制から外れたわけではありません。報道ではこの点がよく誤って伝えられます。
訳者注:輸出契約を結ぶ前に、買い手に2つのことを書面で求めてください。1つ目は、相手国の当局が発行した輸入許可証です。2つ目は、あなたの出荷量が相手国の現在の見積りに収まっているという確認です。注文を合法的に届けられるかどうかを早い段階で見極めるためです。INCBは見積りをウェブサイトで公開しています(参考文献を参照)。2025年7月からは、大麻の栽培量・生産量の見積りについて、国別の月次更新も公開しています。
2. 方式1:大麻専門の政府機関
この方式では、国が他の医薬品とは別に大麻を扱う機関を新設または指定します。この機関が栽培者への許可、生産の委託、サプライチェーンの管理、輸出入の管理を行います。誰が処方、調剤、栽培、在庫保有をできるかについても、大麻だけの独自ルールが設けられます。
最大の利点は、1つの機関で第23条と第28条の条約上の要件を直接満たせることです。また、大麻製品が1つずつ通常の医薬品登録を通るのを待たずに、サプライチェーンを素早く作れます。
最大の欠点は、もう1つの制度を並行して持つことになる点です。大麻は通常の医薬品制度の外に置かれ、独自の例外と書類手続きを抱えます。政治の変化の影響も受けやすい傾向があります。
3. 方式2:通常の医薬品ルート
この方式では、大麻製品も他の医薬品と同じルートをたどります。医薬品規制当局が、品質、安全性、有効性のデータを審査したうえで製品を登録します。そのうえで医師が処方し、一般の薬局が調剤します。
利点は一貫性です。登録された製品には次のものがそろっています。
- 承認された効能・効果(治療が承認された病気や症状)
- 承認された用量
- 患者向けの添付文書
- ファーマコビジランスの義務(販売後に副作用を収集し報告すること)
- 法的責任を負う、名前の明らかな製造業者
欠点は、このルートが遅く、対象となる製品が少ないことです。大部分の大麻製品は、臨床試験を含む通常の開発ルートを経ていません。だからこそ、大麻はどちらの方式にもすっきり収まらないのです。登録済みのカンナビノイド医薬品は少なく、ほとんどの国で、生薬としての大麻の花穂はその中に入っていません。
2つの方式が目指すゴールは同じで、高い水準の品質、安全性、有効性です。違うのはゴールへの道筋で、目標そのものではありません。多くの国は2つを組み合わせています。供給は専門機関が担い、登録製品は医薬品規制当局が並行して扱います。
検討している市場ごとに、2つの名前を書き出してください。大麻の供給に許可を出す機関と、医薬品を登録する機関です。そうすれば、本当の顧客が誰で、あなたの製品がどちらのルールを満たすべきかが分かります。
4. 実際の例
- オランダ(専門機関方式)。 政府の医療用大麻局(Office of Medicinal Cannabis) が、2001年1月1日から大麻に関する単一条約上の義務を担っています。同局は、薬局への医療用大麻の供給と輸出入を独占しています。薬局での処方箋による調剤は2003年に始まりました。薬局を通じた制度としては最も長く続いているものの1つです。オランダの医師と薬剤師の役割分担は、フォーラムの別トピックで説明しています。
- ドイツ(混合方式)。 ドイツは2017年、連邦の医薬品規制当局であるBfArMの中に大麻局(Cannabis Agency)を設けました。大麻局は入札で国内栽培の契約先を決め、収穫物を引き取ります。そのうえで収穫物を製造業者、卸売業者、薬局に販売します。輸入は、これとは別のBfArMの許可に基づいて続いています。
- 韓国(登録医薬品のみ)。 韓国の改正麻薬法は2019年3月に施行されました。当時の報道によると、患者が入手できるのは、すでに他国で承認されたカンナビノイド医薬品だけです。例として、一部の重いてんかん向けのカンナビジオール(CBD)医薬品Epidiolexと、THCとCBDを含む口腔スプレーSativexがあります。これらは希少疾病用医薬品(まれな病気のための薬)を扱う国のセンターを通じて輸入されます。未承認の抽出物と花穂は引き続き違法です。
訳者注:韓国の例から、近くのアジア市場でも登録済みの完成医薬品しか受け入れない場合があることが分かります。そうした市場では、花穂や粗抽出物を売る農場には直接の顧客がいません。ある市場に時間をかける前に、その市場がこの3つのパターンのどれに当たるかを確認してください。5つの医療用花穂市場を比較:ドイツ、オーストラリア、スイス、英国、イスラエルから読み始めるとよいでしょう。
5. アヘンの例:この制度は実際に機能している
この制度を支持する理由の1つは、大麻より急性のリスクが高い薬物群で、すでに機能していることです。
国連条約と国内法のもとで、オーストラリアの島しょ州であるタスマニアでは、アヘン用のケシが栽培されています。収穫物は世界中の製薬工場に送られます。その後、病院や地域の薬局でコデイン、モルヒネ、オキシコドンとして調剤されます。栽培、製造、流通、調剤の各段階が厳しく管理されています。
この制度を大麻に当てはめることは、多くの場合、新しいルールを作ることではなく、既存のルールを広げることです。大麻の要件の多くがオピオイド医薬品のルールに似ているのはこのためです。ただし、そのルールの一つひとつが本当に大麻に合っているかは、今も問い直す価値があります。
対象市場で大麻の要件が異様に厳しく見えたら、それがどの規則の条文に基づくのかを当局か輸入業者に尋ねてください。多くの場合、オピオイド医薬品のルールをそのまま当てはめたものです。それが分かれば、医薬品の供給業者と同じ書類を準備すべきだと判断できます。
6. 合法ルートが使いにくいと、患者は別の入手先に流れる
どちらの方式を選んでも、患者が実際に製品を入手できなければ制度は機能しません。大麻の処方について研修を受けた医師や、処方に前向きな医師が少ない制度もあります。合法の入手経路にたどり着きにくい制度もあります。どちらの場合も、患者が大麻の使用をやめるわけではありません。
多くの患者は、誰も検査していない違法または半合法の製品を買うようになります。そうした製品は効力が予測できず、汚染のリスクも現実にあります。法的には正しくても使いにくい制度は、患者の使用をなくすのではなく、未検査の供給源へ押しやるだけです。事業計画では、この需要を「ないもの」とせず、数に入れるべきです。
訳者注:花穂に処方箋が必要な国なら、同じ理屈が当てはまります。農場や許可を受けたディスペンサリー(大麻販売店)を運営しているなら、患者があなたから合法的に買うまでの手順を書き出してください。手順が1つ増えるごとに、買い手が未検査の入手先に流れうる箇所が見えてきます。また、すべてのバッチに検査機関の分析証明書(COA:効力と汚染物質に関する検査報告書)を付けてください。あなたの製品が、検査済みでより安全な選択肢だと証明するためです。
7. あなたの事業にとっての意味
アジアで大麻事業を築くなら、対象市場がどちらの方式を採っているかで、4つの実務上のことが決まります。
| 質問 | 大麻専門機関の場合 | 医薬品ルートの場合 |
|---|---|---|
| 顧客は誰か | その機関、または機関が認めた許可済みの輸入業者・卸売業者 | 販売承認(登録医薬品を販売するための許可)を持つ製薬会社 |
| 製品に何が求められるか | 機関の規格を満たす、標準化された生薬原料 | 申請資料一式(品質・安全性・有効性のデータをすべてまとめたドシエ)を備えた登録医薬品 |
| どの認証が必要か | 農場にはGACP(適正農業・採取規範)、加工段階にはGMP(適正製造規範) | 販売承認に裏付けられた完全なGMP |
| 量を制限するものは何か | INCBに提出された国の見積り | 見積りに加え、承認された病気・症状の患者数 |
どちらの方式でも、価格交渉が始まる前に、国の見積りによって最大量が決まっています。輸入国の見積りを超える供給契約は、商業上のリスクにとどまりません。その国が見積りを引き上げるまで(たとえばINCBが確認した補足見積りによって)、出荷そのものができません。
訳者注:輸出を目指すタイや東南アジアの農場は、次の手順から始められます。
- 対象市場を1つか2つに絞り、その方式を確認します。買い手が誰かを知るためです。
- 第1章で説明したとおり、出荷量を輸入国の見積りと照らし合わせます。合法的に出荷できない注文に署名してしまうのを防ぐためです。
- 認証の計画を立てます。専門機関方式ならGACP認証の農場が直接供給できますが、加工段階にはやはりGMPが必要です。医薬品ルートの場合は、通常、市場に直接ではなく、GMP認証を受けた製造業者に供給することになります。
- タイ側の手続きを確認します。輸出にはタイの許可も必要です。署名する前に、あなたの製品にどの許可が必要かをタイの当局に問い合わせてください。輸出までの流れは輸出ルート:タイの農場から規制された海外市場へで説明しています。
- 製品がTHC 0.2%を超える抽出物なら、誰が許可を持てるかを確認します。大麻又はヘンプ抽出物に関する省令 仏暦2569年(2026年4月26日施行)では、許可を持てるのは3種類だけです。外国人事業法 仏暦2542年上の「外国人」に当たらないタイの法人、国の機関、そしてタイ赤十字社です。規制ハーブに関する省令(第2号)仏暦2569年(2026年4月30日施行)により、花穂の許可基準はより厳しくなりました。どちらもタイの仏暦2569年の2つの省令:2026年4月に大麻事業者にとって実際に何が変わったのかで説明しています。
8. この分野の今後の方向
ある言葉の変化が、考え方の実際の変化を表しています。「医療用大麻」という言葉は、少しずつ「カンナビノイド療法」に置き換えられつつあります。この言葉は、製品を植物ではなく成分で定義します。THC、CBD、そしてテルペンなどのその他の成分です。
この新しい言葉は、科学的な理解の発展に沿ったものです。研究の対象は、植物そのものから、体に備わった信号伝達の仕組みであるエンドカンナビノイドシステムへと移りました。このシステムには、受容体、人の体が作るエンドカンナビノイド、植物が作るフィトカンナビノイドが含まれます。
この変化は規制にも関わります。製品が生薬原料から、申請資料一式を備えた成分の明確な製品に近づくほど、医薬品ルートに合うようになります。そうなれば、専門機関の必要性は下がります。これを進歩と見るか、選択肢が狭まると見るかは、植物全体を使った製剤に、単離した成分にはない効果があるかどうかで変わります(これはよくアントラージュ効果と呼ばれます)。この点について、科学はまだ結論を出していません。
訳者注:栽培者にとってこの流れは、成分組成が安定していて数値で裏付けられていることを、買い手がますます重視するようになることを意味します。タイでは、新しい設備なしで今日から始められます。すべてのバッチのサンプルをカンナビノイドとテルペンの検査に出し、栽培品種(カルティバー)ごとに1つの表に結果をまとめてください。数回の収穫を重ねると、その表から、登録製品を目指す製造業者に供給できるほど品質が一貫しているかどうかが分かります。
経験を共有してください
アジアのどこかの市場で、許可当局とやり取りした経験はありますか。申請、輸入許可、輸入枠に関する問い合わせ、却下など、どんなものでも構いません。どんな書類を求められたか、各段階にどれくらい時間がかかったかを、このトピックの下に投稿してください。実際の手続きの情報は、公開されたどんな要約よりも他の栽培者の役に立ちます。
参考文献
- Single Convention on Narcotic Drugs, 1961, as amended by the 1972 Protocol — 第4条、第19条〜第21条、第23条、第28条(UN Treaty Collection): https://treaties.un.org/doc/Treaties/1975/08/19750808%2006-05%20PM/Ch_VI_18p.pdf
- UNODC, “CND votes on recommendations for cannabis and cannabis-related substances”(2020年12月2日): CND Votes on Recommendations for Cannabis and Cannabis-Related Substances
- INCB, Estimated World Requirements for Narcotic Drugs: Narcotic Drugs Estimates
- Office of Medicinal Cannabis(オランダ): https://english.cannabisbureau.nl/
- 大麻庁に関するBfArMのプレスリリース(2017年、ドイツ語): https://www.bfarm.de/SharedDocs/Pressemitteilungen/DE/2017/pm7-2017.html
この記事は、Asiannabis Communityの規制とコンプライアンスに関する教育シリーズの一部です。国際的なルールについての一般的な情報を提供するもので、法的助言ではなく、タイの法律を説明するものでもありません。行動する前に、関係当局で最新の要件を確認してください。