大麻の収穫タイミング:香り、フラッシング、段階収穫、収穫日のチェックリスト(後編)

トリコームの色を見ると、大麻の花穂に含まれるTHCの量がおおよそわかります。ただし、収穫に最適な日は、香り、花穂の重さ、カビのリスク、乾燥スペースの余裕によっても変わります。後編では、こうした要素をどう比べて判断するか、フラッシングについて対照試験で何がわかったかを解説します。株を一度に刈るか段階的に収穫するかも取り上げ、最後に収穫日のチェックリストを載せています。

前編のおさらいです。200倍以上の顕微鏡で見ると、柄のあるトリコームの頭部は、透明、白濁、琥珀色の順に変化します。白濁の段階は、THCAが最も多い時期と重なります。THCAとは、植物がTHCを蓄えておくときの酸の形です。琥珀色は、THCが作用のより弱いカンナビノール(CBN)に分解されていることを示します。雌しべ(ピスティル)の色は、大まかな最初の目安にすぎません。

本記事は後編です。前編:https://asiannabis.com/t/1362

香りのピークは効力のピークより先に来る

テルペンは、トリコームがカンナビノイドと一緒につくる香り成分です。THCAよりはるかに揮発しやすいため、生きている株からも常に失われています。次の条件では、失われるスピードが上がります。

  • キャノピーの温度が26〜28 °Cを超えている
  • 直射日光や、紫外線(UV)を追加した栽培ライトによって紫外線が強い
  • 空気が乾燥している。VPD(飽差:空気が植物から水分を引き出す力の強さを示す指標)が高いと、樹脂からテルペンも引き出されます。

そのため、香りはTHCAより数日早くピークを迎えると報告する栽培者が多くいます。香りと風味を最優先するなら、「ほぼ白濁」の段階より少し前に収穫する方法もあります。THCAをわずかに手放す代わりに、より新鮮で豊かな香りが得られます。

このアドバイスは、主に栽培者の経験に基づくものです。根拠になっているのは、テルペンがTHCAより揮発しやすいという事実です。

訳者注:タイや東南アジアの屋外・温室のキャノピーは、晴れた日の午後に26〜28 °Cを超えることがよくあります。熱帯の日差しは紫外線も強いです。収穫に関するアドバイスの多くは涼しい気候の地域から来ていますが、タイや東南アジアの株はそうした地域の株より、収穫前に香りを多く失う可能性があります。開花の最後の数週間は、できる範囲でキャノピーを26〜28 °C未満に保ちましょう。たとえば、最も暑い時間帯にファンやエアコンを回します。

やること: 香りを最も重視するなら、小さなテストをしてみましょう。同じ栽培品種(カルティバー)の株を2株用意し、1本は「ほぼ白濁」になる数日前に、もう1本は「ほぼ白濁」の時点で収穫します。両方を同じ方法で乾燥・キュアリングし、香りを比べます。その品種で早めに刈る価値があるかどうかがわかります。

収穫後に香りを保つ

収穫タイミングで決まるのは、スタート地点だけです。香りがどれだけ残るかは、乾燥とキュアリングで決まります。主な要因は次のとおりです。

  • 乾燥の条件
  • 水分活性(乾燥した花穂の中で、カビや微生物が使える自由水がどれだけあるかを示す指標)
  • 瓶でのキュアリング
  • バーピング(キュアリング中の瓶を短時間開けて、湿気を逃がすこと)

これらはすべて、収穫、乾燥、キュアリング:品質を左右する科学と、詳しいガイド収穫を台無しにしない大麻の乾燥:クロロフィル、テルペン、水分活性、ケースハードニング(前編)で解説しています。

訳者注:タイの雨季には、屋外の相対湿度が85〜95%に達することがあります。この条件で乾燥させるための実用的な5つのセットアップを、外気湿度85–95%での大麻の乾燥:タイの5つのセットアップをコスト比較・ランク付けで比較しています。

やること: 収穫前にこれらのガイドを読み、乾燥スペースを準備しておきましょう。収穫当日になってから考え始めるのは避けてください。

収穫前のフラッシング

フラッシングとは、収穫前の最後の1〜2週間、pHを調整した真水だけを与えることです。大麻栽培の中でも、特に意見が分かれるやり方の一つです。

対照試験では、カンナビノイドやテルペンの含有量について、フラッシングによる明確で一貫した効果は確認されていません。大麻用の養液や培地を販売する企業Rx Green Technologiesは、2019年に社内試験を行いました。この試験は査読を受けていません。フラッシング期間を0日、7日、10日、14日と変えても、THC、テルペン、収量に有意な差は出ませんでした。ブラインドテストでの味にも差はありませんでした。

Saloner、Sade、Bernsteinによる2024年の査読付き研究(Industrial Crops and Products掲載)では、5つの栽培品種で試験しました。フラッシングの影響は限られていました。一部の品種ではカンナビノイドの含有量が変わり、2品種で上がり、1品種で下がりました。それでも著者らは、フラッシングを許容できるやり方だと結論づけています。

多くの栽培者は、えぐい「青臭い」味の原因は、残った養分よりも、葉の緑色の色素であるクロロフィルにあると考えています。乾燥とキュアリングがうまくいかないと、クロロフィルが花穂に残ります。

それでも、経験豊富な栽培者の多くは、自分の環境ではフラッシングした株のほうが煙がまろやかだと報告しています。両方の立場のエビデンスは、収穫前のフラッシング:試験でわかったことと、鉢の洗い流しが本当に役立つときで検討しています。このトピックでは、問題を解決する手段としてフラッシングが本当に役立つケースも扱っています。

やること: 自分の栽培で試してみましょう。同じ栽培品種の株を2株用意し、1株だけフラッシングします。両方を同じ方法で乾燥・キュアリングします。どちらがどちらかわからないように、ほかの人にサンプルのラベル付けを頼んでから比べます。こうすると、自分の思い込みが結果に入り込みません。

最高の効力と、最適な収穫日は別のもの

この2つはよく混同されますが、別の考え方です。

THCAのピークは、おおむね「ほぼ白濁」の段階で訪れます。この時点でトリコームの頭部は完全に不透明になり、がく(萼:一つひとつの花を包む、ふくらんだカップ状の部分)が最も速いペースでふくらんでいます。ラボ検査でTHCAを最大にしたい場合や、花穂1グラムあたりの抽出量を最大にしたい場合は、ここで収穫します。

乾燥させた花穂(ホールフラワー)として最適な日は、さらに次の4つの要素で決まります。

  • 花穂の密度とがくのふくらみ。 多くの品種では、THCAのピーク後も1〜2週間、がくが大きくなり樹脂が増えることで、実際の重さが増え続けると栽培者は報告しています。THCAのピークで刈ると、その分の収量を逃すことがあります。
  • 香り。 軽いモノテルペンは、THCAのピーク後も揮発し続けます。株を長く置くほど、香りは重く、新鮮さに欠けるものになります。
  • カビ。 湿度が高い環境や花穂が密な場合、THCAのピークを過ぎると、1日ごとにボトリティス(灰色かび病。バッドロットとも呼ばれます)のリスクが高まります。病気を避けることが主な目的なら、最適な日は効力が最も高い日より早いかもしれません。
  • 作業と市場。 部屋のスペース、スタッフの予定、買い手の需要の都合で、生物学的に理想的なタイミングで収穫できるとは限りません。

誰にとっても正しい、ただ一つの答えはありません。最適な日は、どの目標を優先するかで決まります。

訳者注:タイの雨季の屋外・温室栽培では、たいていカビのリスクがほかの要素より重くなります。ボトリティスでだめになった作物は、THCAがどれだけ含まれていても価値がありません。

やること: 開花が終わる前に、目標を優先順に書き出しておきましょう。たとえば「1. カビを出さない、2. 香り、3. 重さ」です。収穫日にサインが食い違ったら、このリストに従って決めます。

株を一度に刈るか、段階的に収穫するか

株を一度に刈る

株全体を1回の作業で刈り取ります。利点は次のとおりです。

  • 作業がシンプルです。収穫は1回で済み、すぐに部屋を片付けて次の準備に入れます。
  • すべての花穂をまとめて処理するので、1つの均一なバッチとして乾燥・キュアリングできます。
  • 収穫期間中の総作業量が少なくて済みます。

段階的に収穫する

先に上部のコーラ(枝先にある、主要な花穂の塊)を刈ります。下部の花穂は株に残し、新しく届くようになった光の下で成熟を続けさせます。

うまくいく理由: キャノピーの中では、光が均一に届きません。開花期間全体を通じて、上部の花穂は下部の花穂よりはるかに多くの光を受けます。栽培者はこの光をPPFD(ある地点に毎秒届く、植物が使える光の量)として測ります。多くの品種で、下部の花穂は上部のコーラより7〜14日ほど遅れて成熟すると栽培者は報告しています。上部を刈ると、下部の花穂に直接光が届くようになります。その結果、株を一度に刈った場合より、目に見えて密で樹脂の多い花穂に仕上がります。

段階収穫をすすめない理由:

  • 残った株の切り口は、どれも病気の侵入口になります。湿度が高い環境では特にそうです。
  • 残りの数週間に、切り口から葉の多い新芽が伸びることがあります。節が葉の成長に戻ってしまうこともあります(リベジ)。こうした新芽はたいてい不要です。
  • 収穫と乾燥のバッチが複数になり、収穫後の作業が大変になります。

タイの雨季は、開花後期の高い湿度のせいでボトリティスが発生しやすくなります。屋外や温室では、段階収穫は現実的でないかもしれません。切り口から病気が入るリスクと、余分な日数だけ湿気にさらされることが、下部の花穂で得られるものを上回る可能性があります。

訳者注:湿度を管理できる室内なら、段階収穫はより現実的です。ただし、停電でエアコンや除湿機が何時間も止まることがあり、そうなると新しい切り口が湿った空気にさらされます。

やること: 雨季の屋外や温室では、株を一度に刈りましょう。湿度を管理できる室内では、まず1株だけ段階収穫を試します。切り口にカビが出ていないか毎日確認します。そのうえで、その株の下部の花穂を、一度に刈った株の下部の花穂と比べます。自分の栽培室で、手間を増やす価値があるかどうかがわかります。

収穫日のチェックリスト

サイン 目安
雌しべの色 70%以上がオレンジ、茶色、赤(品種によって異なる)
上部コーラのトリコーム ほぼ白濁。琥珀色の割合は目的に合わせる
下部の花穂のトリコーム 段階収穫する予定なら、透明と白濁が多めの状態
新しい雌しべ 出なくなっている、またはごくわずか(がくの形成が終わったサイン)
がくの発達 苞(ほう)が目に見えてふくらんでいる。成長点(分裂組織)から新しい成長がない
香りの強さ ピークに達している。香りはライト点灯前の早朝に最も強い
ボトリティスの確認 カビが少しでも見えたら、トリコームの状態にかかわらず即収穫
乾燥スペース 刈る前に準備完了:暗く、涼しく、湿度を管理でき、直接当たらないやさしい風がある
品種情報 ブリーダーが示す開花期間は、確定した日ではなく最低限の目安として扱う

やること: この表を印刷し、収穫日に株ごと・バッチごとに各項目をチェックしましょう。チェック済みの表はその栽培サイクルの記録と一緒に保管し、乾燥後の花穂の仕上がりと比べられるようにします。

刈り取った後

収穫の品質は、刈った日に決まるわけではありません。同じように育った株でも、処理する条件が違えば仕上がりに差が出ます。その差の大部分は、乾燥とキュアリングで説明できます。

やること: まず、3つの段階すべてをまとめた収穫、乾燥、キュアリング:品質を左右する科学を読み、次に乾燥とキュアリングの詳しいガイドを読みましょう。収穫日の前に、乾燥室を空のまま1日運転し、温度と湿度を記録します。濡れた株でいっぱいになったときに、必要な条件を保てるかどうかがわかります。

本記事で触れた出典

  • Rx Green Technologies, “Cannabis Flushing: What a Controlled Trial Actually Found”、2019年に実施された社内試験(報告書の日付は2019年11月)、査読なし:https://www.rxgreentechnologies.com/rxgt_trials/flushing-trial/
  • Saloner A., Sade Y. and Bernstein N. (2024). “To flush or not to flush: Does flushing the growing media affect cannabinoid and terpenoid production in cannabis?” Industrial Crops and Products 220, 119157. https://doi.org/10.1016/j.indcrop.2024.119157
  • カンナビノールの受容体結合に関する研究。前編で、CBNがCB1受容体に結合する力はTHCのおよそ10分の1しかないことの根拠として引用しました。数値は研究や測定方法によって異なります。例:Rhee et al. (1997), Journal of Medicinal Chemistry 40: 3228.

フラッシングや段階収穫を自分の栽培で試したことがあれば、このトピックの下に結果を投稿してください。タイや東南アジアの条件での結果は、ほかの栽培者にとって特に役立ちます。