The Rev 著 True Living Organics (Green Candy Press)の屋外栽培に関する記述を翻訳・編集したものです。この記述が最初に載った版はわかっていないため、お手持ちの版で内容をご確認ください。
屋外のリビングソイルのベッドで何より大切なのは、安定した水の供給と良い排水です。後編では次の内容を扱います。重力式の点滴灌漑によるベッドへの水やり、モンスーン気候に合わせた変更点、動物の侵入を防ぐ方法、屋外での鉢栽培、そして季節ごとのチェックリストです。
ここで紹介する方法は、The Rev によるものです。The Rev は、リビングソイルでの大麻栽培を扱った本『True Living Organics』の著者です。リビングソイルとは、有機物を分解して植物に養分を届ける生物が活発に暮らしている土のことです。この本は、温帯気候に属する米国の太平洋岸北西部の栽培者向けに書かれています。「(原典の数値)」と記した数値は本の記載で、訳者は独自に検証していません。
本記事は後編です。前編:https://asiannabis.com/t/1404
1. 灌漑:重力式の点滴灌漑
重力式では、ベッドより高い場所に水タンクを置きます。水の重みで、水がパイプと細いチューブを通り、各株の小さな滴下器(エミッター)まで送られます。原典は、屋外栽培や大規模栽培にこの方式を勧めています。
- ポンプが不要で、水の無駄もほとんどありません。 水は株のある場所にだけ落ちます。
- 基本の資材はPVCパイプと点滴チューブです。暑い気候での設計とメンテナンスについては、熱帯地域における大麻の点滴灌漑をご覧ください。
- パイプは地中に埋めることもできます。 原典では、人目から隠すために埋めていました。合法の農場では、チューブを日光(紫外線)や物理的な傷から守れることが本当の利点です。
- 栽培を始める前に、水源とパイプを整えておきましょう。 屋外では、水が作物の出来を左右します。
訳者注:タイの農村部では停電がよく起こります。重力式なら、タンクに水が残っている限り、停電中も水やりが止まりません。その場所でこれまでに経験した最も長い停電にも足りるように、タンクの容量を決めるか、水の補充方法を決めておきましょう。
圧力に関する訳者注:実際に問題になるのは圧力です。タンクから得られる圧力は、エミッターより1 m高くなるごとに約0.1 barしか増えません。圧力補正型(PC)エミッターは、圧力が変わっても同じ流量を出すエミッターです。ただし、その多くは約0.7〜1 bar(10〜14.5 psi)にならないと正しく働きません。その圧力を得るにはタンクを7〜10 mの高さに置く必要があり、現実的なことはほとんどありません。
タンクを低い台に置く場合は、低圧用か非PCの滴下器、またはドリップテープを使いましょう。ドリップテープとは、出水口があらかじめ付いた、薄く平たいホースです。配管は短くし、水平に敷きます。タンクの出口の後に目の細かいフィルターを付け、細かさはエミッターのメーカーの指定に合わせます。たとえばRain Birdは、自社の圧力補正型エミッターに100メッシュ(約150ミクロン)を指定しています。配管の末端は定期的に開けて水を流し、滴下器が詰まる前に沈殿物やぬめりを洗い出しましょう。
エミッターを買う前に、タンクの最低水位からベッドまでの高さを測りましょう。メートル数に0.1を掛けると、圧力がbarでわかります。その数値を、エミッターのデータシートに書かれた最低圧力と比べてください。
絶対に守るルールがひとつあります。ティーは決して点滴システムに流さないでください。 コンポストティーとは、堆肥を水に浸してつくる液体で、多くの場合は空気を送り込みながらつくります。施用は手で行うか、広い植え付けでは低圧の背負い式噴霧器を使います。ティーはエミッターを詰まらせます。さらに困ったことに、点滴ラインの内側は温かく暗く、養分が付着しています。これはバイオフィルムがまさにできやすい環境です。バイオフィルムとは、チューブの内側に張り付く、微生物のぬるぬるした膜のことです。
原典は、大規模な室内栽培でも同じやり方をしています。水は点滴ラインで流し、ティーは手で施用します。
2. モンスーン気候に合わせた調整
訳者注:原典は温帯気候向けに書かれています。タイと東南アジアでは、特に大切な変更点が3つあり、ほかに小さな注意点が2つあります。
排水が先、灌漑はその次です。 タイやベトナムの多くの地域では、雨季の屋外栽培で困るのは、水不足ではなく水が多すぎることです。高畝のベッドは欠かせません。大雨の間も、根域を好気的な状態(空気が届き、根が呼吸できる状態)に保てるからです。参考として、1999年のレビュー(Van Cooten and Borrell, Australian Journal of Experimental Agriculture)があります。インドネシア東部の半乾燥地域での高畝栽培を扱ったもので、西ティモールでの圃場調査にもとづいています。そこでは、雨季の湛水(畑に水がたまる状態)を防ぐため、高さ20 cm、幅1.5 mの常設の高畝が使われたと報告されています。
粘土質の重い土や水はけの悪い土では、それより高くつくりましょう。水の逃げ道も必ず用意します。たとえば、ベッドから離れる方向へ水を流す溝や水路です。水路は雨季が始まる前、地面が乾いていて掘りやすいうちに掘っておきましょう。
堆肥の山は乾季につくり、雨のときは覆いましょう。 トップダウン方式の山とは、前編で説明した、将来の植え付け場所に直接積む堆肥の山です。この山は乾季につくります。タイの多くの地域では、乾季はおおよそ11月から4月です。雨季は、大雨の間、防水シート、マルチシート、簡単な雨よけなどで山を覆います。こうすると、溶けた養分が雨で山から流れ出る溶脱を抑えられます。山が水浸しになり、空気のない状態(嫌気状態)になるのも防げます。雨に当たる山には、ゆっくり効く資材を選びましょう。
堆肥化の速さは、日数を数えるより山の状態で判断しましょう。 原典によると、暑いほど堆肥化は速く進み、直射日光の下では1バッチが約2週間でできます(原典の数値)。これは一般的な堆肥化期間よりずっと短い日数です。山の状態は、温度、におい、手ざわりで判断しましょう。温度は、長い棒状の堆肥用温度計を山の中心に差し込んで測ります。
病原体を確実に死滅させたい場合は、高温堆肥化の基準に従いましょう。55 °C以上を少なくとも3日間続けて保ちます。何度も切り返す、屋外に長く積んだ堆肥の列(ウィンドロー)では、さらに長く保つ必要があります。
フォトピリオド。 フォトピリオドとは、1日のうちの明るい時間と暗い時間の長さです。フォトピリオド型の大麻は、これを手がかりに開花を始めます。赤道に近い地域のフォトピリオドは、原典の地域とは大きく異なります。植え付け時期を決める前に、東南アジアにおける大麻の屋外栽培をご覧ください。
遮光とミスト。 原典によると、とても暑い日には、日よけの屋根や遮光カバーの下で株に細かいミストをかけると、株を冷やせます。ミストは茎にかけないようにします。原典では、目に見えて生育が良くなったと報告しています。この地域では、最も暑い時期に遮光ネットの下で育てる作物が多く、屋外の大麻栽培でも検討する価値があります。
訳者注:ミストで冷やす効果は、空気が乾いているときに最も高くなります。雨季はもともと空気が湿っているため効果が下がります。さらに、濡れた葉や花穂はBotrytis(灰色かび病・花穂腐れ)などのカビのリスクを高めます。ミストは日中の暑く乾いた時間帯だけにし、夕方までに株が乾くようにしましょう。開花中の花穂にはミストをかけないでください。
3. あえて省いた内容
原典は、秘密を守ることに多くのページを割いています。畑を隠すこと、誰にも話さないこと、灌漑ラインを見つからないように埋めることなどです。こうした助言は、屋外栽培が違法で、栽培者が見つかることを恐れていた時代と場所に向けて書かれたものです。
この内容は本記事では扱いません。 本記事は、合法的に栽培する読者のためのものです。具体的には、規制ハーブに関するタイの届出・許可制度のもとでの栽培、栽培の品質基準である適正農業・採取規範(GACP)を満たす生産、または研究目的の栽培です。こうした栽培では作物を隠しません。記録を残し、いつでも検査を受けられるようにしておきます。
ただし、その内容のうち今も役に立つ部分がひとつあります。動物の侵入を防ぐことです。 原典で取り上げているのはイモムシ類とシカです。この地域では、イモムシ類、茎の中に潜る害虫(ステムボーラー)、ネズミ類、そして農村部では家畜を想定しておきましょう。フェンスなどの物理的な囲いを使います。多くの許可制度では栽培エリアへの立ち入り管理も求められるため、フェンスひとつで両方の役目を果たせます。
訳者注:イモムシ類の防除で薬剤の散布が必要な場合は、農業局(กรมวิชาการเกษตร)に登録された製品だけを使い、ラベルの指示に従ってください。開花期の防除プログラムについては、Bacillus thuringiensisによるバドワーム防除をご覧ください。
4. 屋外での鉢栽培
原典は、大規模な屋外栽培で鉢を使う意味はあまりないとしています。鉢を使う場合は、点滴で水やりをし、ティーは背負い式噴霧器で施用します。
暑く乾燥した天候では、屋外の不織布ポット(ファブリックポット)は早く乾くため、室内用よりかなり大きくする必要があります。不織布ポットの基本は、大麻栽培のグローバッグをご覧ください。すべてのポットに植え付ける前に、まずポットをひとつ用土で満たし、水をやってみましょう。暑い一日を通して重さを量るか手で触って確かめると、どのくらいの頻度で水やりが必要かがわかります。
5. 季節ごとのチェックリスト
1シーズン目:
- 堆肥の材料を将来の植え付け場所に直接積みます。または高畝のベッドをつくり、リビングソイルを入れます。湿った土地では高めにつくります。できれば乾季に行いましょう。
- 山に水をかけ、15日間そのままにしておきます(原典の数値)。湿り気が保たれ、酸っぱいにおいがしないことを確かめます。
- その後は、盛り上げた山を3〜4日ごとに切り返します。少なくとも週に1回は切り返しましょう(原典の数値)。大雨の間は山を覆います。
- 植え付けの前に、水源、フィルター、重力式の点滴ラインを設置します。タンクの高さで、使うエミッターに必要な圧力が得られるか確かめます。
- 分解しきっていない材料をベッドの縁にかき寄せてマルチにし、それから植え付けます。
- 必要なら、植え付けのときにコア施肥を行います。将来のドリップラインに穴を掘り、乾燥資材を詰める方法です。ドリップラインとは、大きく育った株のキャノピーの外縁の真下にできる輪のことです。
収穫時:
7. ベッドごとに1〜2株を掘り上げ、根の状態を確かめます。残りの株は地際で刈り取ります。根を土に残すのは、根の病気、センチュウ、ネアブラムシ、ダニが出なかった場合だけです。 出た場合は根を引き抜き、ベッドから離れた場所で処分します。
8. 許可やGACPの条件で栽培地での堆肥化が認められているなら、茎と健康なトリム(切りくず)を刻んで地表に置き、次のシーズンの山にします。日付、材料、量、場所を記録しておきましょう。
9. 堆肥化済みまたは処理済みの家畜ふん、グリーンサンド、その他の資材を山に加えます。
2シーズン目以降:
10. 山は小さくて十分です。
11. 新しい根は、前年の根が残した通り道に沿って伸びます。
12. 設備を計画するときは、給水と排水を最優先にします。大麻の作付けと作付けの間には、休閑期間、土壌の太陽熱消毒、カバークロップ(被覆作物)を検討しましょう。
下の返信欄で、あなたの経験を共有してください。 雨季をまるごと通した屋外のリビングソイルについては、まだ情報が足りません。最も不足しているのは、トップダウン方式の山から雨でどれだけ養分が溶脱するかという情報です。モンスーンの時期にベッドで栽培した経験のある方は、ぜひ投稿してください。地表の山がどうなったか、覆ったかどうか、ベッドの高さ、排水の対策を教えていただけると助かります。ご自身の栽培地についての質問も、下の返信欄で受け付けています。
関連記事:ベッドに入れる用土については、リビングソイルのリサイクルをご覧ください。本記事の前編では、ベッドの準備、点滴ライン、トップダウン方式の山、根を土に残す方法を扱っています。
本記事は、それぞれの地域で合法的に栽培する読者に向けた、園芸の技術情報です。屋外栽培は室内栽培とは別に規制されており、多くの場合、規制はより厳しくなります。また、ほとんどの許可制度では、栽培地の警備と立ち入り管理が求められます。タイでは、「規制ハーブ(大麻)に関する保健省告示 仏暦2568年」により、大麻の花穂は規制ハーブに指定されています。花穂の研究、輸出、販売、加工には許可が必要です。販売・輸出する花穂は、タイ伝統・代替医療局から適正農業・採取規範(GACP)の認証を受けた供給元のものでなければなりません。大麻管理法(Cannabis Control Act)はまだ法案の段階です。内閣が2026年9月22日に承認し、下院に送付しました。栽培を始める前に、お住まいの地域の法律を確認してください。本記事は法的助言ではありません。