タイの内閣は2026年9月22日、大麻管理法案(Cannabis Control Act)を承認し、下院に送付しました。ただし、これはまだ法案であり、法律ではありません。国会では第一読会もまだ開かれていません。下院保健委員会は独自の法案を起草中で、成立の時期も決まっていません。法律が官報(ราชกิจจานุเบกษา)に掲載されるまでは、現行の告示と省令がそのまま効力を持ちます。官報とは、タイの法律が施行される前に必ず掲載される公式の刊行物です。
2026年10月14日時点の状況。 大麻管理法案:2026年9月22日に内閣が承認し、現在は下院で審議待ちです。まだ法律ではありません。
1. 要点:タイにはまだ大麻法がありません
タイでは、大麻に関する法律(国会で可決される「法」)はまだ一つも成立していません。 現在効力を持つルールは、保健省の告示と省令です。どちらも国会で可決された法律ではありません。内閣の承認で法案は下院に移りましたが、今適用されているルールは何も変わっていません。
やるべきこと: 買い手、仕入れ先、役人から「新しい大麻法」と聞いたら、どの文書のことか、日付はいつかを確認してください。答えを聞けば、今あなたを拘束するルールなのか、まだ案の段階なのかがわかります。
2. 日付で見る経緯
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2026年4〜7月 | 法案について数回のパブリックコメントを実施。当時の名称は大麻・ヘンプ法(Cannabis and Hemp Act) |
| 2026年7月16日 | 下院保健委員会(委員長:サコンティー・パッティヤクン〈Sakoltee Phattiyakul〉)が、独自の**大麻・ヘンプ管理法案(Cannabis and Hemp Control Act)**の作業を急ぐと表明。保健省の法案と並べて審議する予定(Thairath、2026年7月16日) |
| 2026年7月20日 | DTAM(タイ伝統・代替医療局〈Department of Thai Traditional and Alternative Medicine〉、大麻を所管する保健省の部局)が、名称を**大麻管理法(Cannabis Control Act)**に改めた完成版の法案を、**パッタナー・プロムパット(Pattana Promphat)**保健大臣に提出 |
| 2026年8月3日 | パッタナー大臣が取締りの数字(第7節)を公表し、大麻は医療目的使用に限ると改めて強調 |
| 2026年9月22日 | 内閣が大麻管理法案を承認し、下院に送付(The Nation、2026年9月23日) |
| 現在(2026年10月) | 下院で審議待ち。法案であり、法律ではありません。 本稿の更新時点で、第一読会の日程は公表されていません |
2026年10月に再確認した内容: 複数のメディアが内閣の承認を報じ、パッタナー・プロムパット大臣が発表したと伝えています(The Nation、Thai Examiner、2026年9月23日)。第一読会の日程の公表は見つかりませんでした。7月にはThairathが、法案は2027年1月ごろに国会に提出される見込みだと報じていました。官報掲載を2027年とする日付は、すべて決まった日程ではなく、見通しとして扱ってください。
やるべきこと: 読んだニュースは必ずこの表と照らし合わせてください。2026年9月22日より前の日付の記事は、内閣承認前の法案の状態を書いたものです。
3. 内閣の承認は法律の成立ではありません
ここから先の手続きは、多くの報道が伝えるよりも長い道のりです。
DTAMが起草 → 大臣に提出 → 内閣が承認 → 下院(第一読会、委員会審査、第二・第三読会)→ 上院 → 国王の裁可 → 官報に掲載 → 施行日
第一読会とは、下院が法案の基本方針を受け入れるかどうかを最初に審議し、採決する場です。この法案は、2026年9月22日の内閣承認までの最初の3段階を終えたところです。この後のどの段階でも条文は変わる可能性があります。審議がそのまま止まってしまうこともあります。
事業者にとってこれが重要なのは、内閣が承認しただけで、法律がもう変わったかのような見出しが出回るからです。
やるべきこと: 法案だけを根拠に、登録、閉店、業態転換、投資をしないでください。法律が官報に載るまでは、第6節のルールに沿って仕事を続けてください。
4. 法案の内容
以下は、内閣が承認した法案についての報道(The Nation、Thai Examiner、2026年9月23日)をもとにまとめたものです。執筆時点で、公式の条文は公開されていませんでした。どの項目も変更される可能性があるものとして扱ってください。
対象範囲。 大麻と抽出物の用途は、資格のある医療従事者による治療と研究に限られます。嗜好目的使用(レクリエーション使用)は認められません。
ライセンス。 栽培、製造、輸入、輸出、販売にはライセンスが必要です。輸入・輸出ライセンスは原則として有効期間3年となる見込みです。栽培区画は小・中・大の規模別に登録し、場所を追跡できるようにします。
既存の店舗。 現在の店舗ライセンスは2026〜2028年の間に期限を迎えます。新しい法律のもとで更新するには、店舗は医師が常駐する医療施設にならなければなりません。
自宅栽培。 二次情報によると、大臣は2026年5月13日に、非営利の自宅栽培は処罰しないと述べたとされています。元のニュース記事や省の発表は見つかりませんでした。内閣承認後の法案についての報道にも、これを裏付けるものはありません。報道はあるものの、未確認です。
販売の制限。 20歳未満の人、妊娠中・授乳中の女性への販売は禁止です。学校、寺院、寮、公園、動物園、遊園地での販売も禁止です。
マーケティング。 大麻の花穂と樹脂の広告は禁止です。喫煙器具の宣伝も制限されます。
THCの基準と花穂は別々のルールです。 現行のルールでは、THC 0.2%を超える大麻またはヘンプの抽出物は第5類麻薬にあたります。第5類麻薬とは、タイの麻薬法の区分の一つです。一方、花穂はTHC濃度に関係なく、仏暦2568年の告示に基づく規制ハーブです。(仏暦はタイの暦で、543を引くと西暦になります。仏暦2568年=2025年、仏暦2569年=2026年です。)THC 0.2%未満の花穂も規制の対象です。0.2%を超える花穂も、この基準値を理由に麻薬になるわけではありません。法案がこの点を変えるという報道は、今のところありません。
追跡。 法律では、栽培の段階から大麻を管理することになります。これとは別に、DTAMはすでに登録店舗の一覧を、GPS座標とライセンスの有効期限つきでオンライン公開しています(The Nation、2026年7月8日)。大臣によると、この地図は約10,000か所、全体の95%以上をカバーしています(The Nation、2026年9月23日)。
罰則。 現在よりも明確で重い罰則になります。無許可の製造、輸入、輸出、販売には刑事罰が科される可能性があります。具体的な数字はまだ公表されていません。
運営体制。 保健大臣を委員長とする国家大麻委員会を設けます。
まとめると、法案の大半は、2025年6月以降に省令が進めてきた方向を法律として明文化するものです。そのうえで、栽培段階からの管理と、医療施設になることを条件とする店舗の更新ルールが加わります。
訳者注:店舗向けに花穂を栽培している場合、店舗の更新ルールは買い手に直接影響します。買い手ごとに、医療施設になる予定があるかを聞いてください。そうすれば、2026〜2028年の間にどの販売先がなくなりそうかがわかります。規模別の区画登録は、今のところ提案の段階です。それでも今のうちに、区画ごとの場所、面積、ライセンス番号を簡単に記録しておけば、提案が成立したときにすぐ対応できます。自宅で栽培している方は、公式の条文で確認されるまで、「処罰しない」という報道を当てにしないでください。
5. 内閣承認後の3つのシナリオ
以下はシナリオであり、予測ではありません。
シナリオA:ほぼ承認案どおりに成立する。 下院と上院が、内閣の案をほとんど修正せずに可決します。結果はおおむね第4節のとおりになります。
シナリオB:大幅に修正される、または統合される。 下院が内閣の法案を、保健委員会の大麻・ヘンプ管理法案など同じテーマの法案と一緒に審議するか、委員会で大きく書き直します。罰則の重さ、自宅栽培、ライセンスの区分、既存店舗の移行措置は、いずれも内閣案と違う形になる可能性があります。
シナリオC:審議が止まる。 法案が下院または上院で止まるか、成立前に国会が解散します。その場合、2022年以降と同じく、告示と省令による規制が続きます。
3つのどのシナリオでも、法律が官報に掲載されて施行されるまでは、仏暦2568年の告示と仏暦2569年の2つの省令が効力を持ち続けます。
やるべきこと: どのシナリオになっても、今のルールのもとで成り立つ計画を立ててください。下院が第一読会の日程を決めたら、計画を見直してください。
6. 今、実際に効力を持っているルール
大麻の花穂は、規制ハーブ(大麻)に関する保健省告示(仏暦2568年)(Notification of the Ministry of Public Health Re: Controlled Herbs (Cannabis) B.E. 2568)に基づく規制ハーブで、2025年6月26日から施行されています。花穂は、PT 33(ภ.ท.33)の処方箋がある場合に限って提供できます。PT 33は、大麻の花穂用の公式な処方箋の様式です。処方箋1枚でカバーできるのは最長30日分です。
花穂は、GACPの認証を受けた供給元のものでなければなりません。GACP(Good Agricultural and Collection Practices、適正農業・採取規範)とは、薬用植物の栽培、収穫、記録についての基準です。オンライン販売、広告、嗜好目的使用はすべて禁止されています。
仏暦2569年の2つの省令によって、ライセンスの要件が厳しくなりました。抽出物に関する省令は2026年4月26日に、規制ハーブ(第2号)省令は2026年4月30日に施行されました。どちらもPT 33のルールは変えていません。2020年のヘンプ規則と2021年の大麻規則に基づいて発行されたライセンスは、2026年12月31日までしか有効ではありません(The Nation、2026年4月28日)。法的な全体像は、タイの大麻規制 2022〜2026年を参照してください。
今すぐやるべきこと:
- 自分のライセンスがどの規則に基づいて発行されたかを確認してください。2020年または2021年の規則によるものなら2026年12月31日で失効するので、早めに更新の手続きを始めてください。
- GACP認証の有効期限を確認してください。店舗はGACP認証を受けた供給元からしか仕入れられないため、認証が切れると買い手を失うおそれがあります。
- 取引先の店舗が、PT 33の処方箋がある場合にだけ提供しているかを確認してください。買い手が営業停止になれば、その販売先を失います。
7. 取締りは法律の成立を待っていません
パッタナー大臣は2026年8月3日の会議で、2025年10月から続く取締りキャンペーンの数字を公表しました。検査した店舗1,326店、押収83件、押収した製品は1億900万バーツ以上、法的措置の対象となった個人・事業者40、ライセンス停止84件、取消し4件、審査した不服申立て39件です(ASEAN NOW、2026年8月)。
これとは別に関税局は、2026年6月17日から、大麻の違法輸出に押収量1キログラムあたり30,000バーツの罰金と没収を科すとしています(Pattaya Mail、2026年6月19日)。これは密輸に対する関税上の罰金であり、許可を受けた輸出にかかる手数料ではありません。報道は、その根拠となる法令の名前を挙げていません。
実際には、医療目的に限った市場への移行は、現行ルールの取締りを通じてすでに進んでいます。法律ができれば、その方向が正式なものになります。
訳者注:現行のルールは、タイ伝統医療保護法(Thai Traditional Medicine Protection Act、仏暦2542年=1999年)に基づいています。この法律では、ライセンスの停止命令の期間は最長90日です(第52条)。通知を受けてから30日以内に、タイ伝統医療知識保護・促進委員会に不服を申し立てることができます。ただし、申立てをしても命令は止まらず(第70条)、委員会の決定が最終となります(第71条)。ライセンスが取り消されると、この法律に基づく新しいライセンスは2年間発行されず、その後も発行するかどうかは許可権者の判断になります(第54条)。2016年のライセンス規則では、この2年間の禁止は会社だけでなく、取締役、管理者など責任のある人にも及びます。ライセンスなしで規制ハーブを販売・加工した場合や、停止期間中に営業した場合は、1年以下の懲役、2万バーツ以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります(第78条)。
やるべきこと: 店舗や販売所のライセンスを持っている場合は、DTAMのオンライン地図で自分の場所を探し、表示されているライセンスの有効期限が正しいかを確認してください。検査官はこの地図を使っているため、誤りがあると思いがけない立入検査につながることがあります。
8. 新しい情報を見たときの読み方
どの法令か? 告示、省令、法律はそれぞれ別のもので、手続きもそれぞれ違います。「タイの新しい大麻法」と書きながら、どれのことかを書いていない記事は判断材料になりません。
どの段階か? 起草、意見募集、提出、内閣承認、読会、可決、官報掲載、施行のどれにあたるかを確認してください。法案についての見出しは、法律についての見出しではありません。
いつの日付か? このテーマでは、半年前の記事が、もう古くなった状況を自信たっぷりに書いていることがあります。
官報を引用しているか? 巻・号を含む掲載番号と日付が書かれていれば、記者が別の記事ではなく、法令そのものを確認したことがわかります。
タイで事業をしている方は、下にぜひ書き込んでください。4月以降、実務で何か変わったことはありましたか。それとも変わったのは書類の上だけでしょうか。報道ではなく法案そのものの条文を見た方は、出典と日付を添えてここに投稿してください。他のメンバーにとって、これ以上役に立つ情報はありません。
本稿は一般的な情報であり、法的助言ではありません。ここで説明した立法手続きはまだ終わっていません。行動する前に官報を確認し、資格のあるタイの弁護士に相談してください。
参考文献
- Thairath、2026年7月16日:下院保健委員会が大麻・ヘンプ管理法案の作業を加速。法案は2027年1月ごろに国会提出の見込み。https://www.thairath.co.th/news/politic/2946688
- The Nation、2026年9月23日:内閣が大麻管理法案を承認。Thai cabinet endorses draft cannabis control bill for medical use
- Thai Examiner、2026年9月23日:内閣承認と法案の内容。Latest cannabis bill agreed by cabinet on Tuesday to rein in the out of control weed industry in Thailand - Thai Examiner
- The Nation、2026年7月8日:GPS座標とライセンス有効期限つきの、DTAMによる登録店舗のオンライン地図。Thailand cannabis draft law targets medical use and shop controls
- The Nation、2026年4月28日:2020年・2021年のライセンスは2026年12月31日まで有効。New cannabis-hemp extract rules take effect, limiting use to four purposes
- ASEAN NOW、2026年8月:2026年8月3日の会議で公表された取締りの数字。https://aseannow.com/thailand-news/thailand-steps-up-cannabis-shop-enforcement-r3114
- Pattaya Mail、2026年6月19日:大麻の違法輸出に1キログラムあたり30,000バーツの関税罰金。Thailand targets cannabis traffickers with new 30,000-baht-per-kilo penalty - Pattaya Mail
- 自宅栽培についての2026年5月13日の大臣発言とされるもの:二次情報(例:Cannabis For Thailand〈ブログ〉)でのみ確認。元のニュース記事は見つかりませんでした。Cannabis & Hemp Act Thailand: Consultation Closed 21 May 2026 | Cannabis for Thailand