ヘンプとしてタイから実際に輸出できるもの:種子、繊維、化粧品、食品、輸出書類と製品候補リスト(後編)

2025年6月26日から、タイでは大麻の花穂がTHC含有量にかかわらず規制ハーブになりました。根拠は保健省告示「規制ハーブ(大麻)」仏暦2568年です。花穂をタイから国外に出せるのは、許可を受けた医療用ルートに限られます。そのため、ヘンプ事業者が通常の取引として輸出するには、花穂以外の部位や製品を選ぶ必要があります。

後編では、それらの製品を扱います。対象は種子、繊維と茎、化粧品、食品です。あわせて税関コードと基本的な輸出書類を説明し、規則をクリアする難しさの順に並べた製品候補リストで締めくくります。タイが規制対象から外したTHC 0.2%以下の抽出物については、前編で説明しています。

本記事は後編です。前編:https://asiannabis.com/t/1439

4. 種子、繊維、成熟した茎

多くの国の麻薬法は、これらの部位を「大麻」の定義から外しています。例を3つ挙げます。

  • イギリス。 1971年薬物乱用法(Misuse of Drugs Act 1971)は、成熟した茎、成熟した茎から取った繊維、種子を適用除外としています。
  • オーストラリア。 ヘンプシードは食品に使えます。また、2018年の税関の承認により、一部のヘンプシード製品と繊維製品は輸入ライセンスや輸入許可が不要になりました。
  • ニュージーランド。 茎と種子は適用除外です。食品用の殻むき種子も含まれます。葉と花は引き続き規制対象です。

タイの輸出業者にとって、法律上の問題が最も少ない製品群です。課題は一般的なビジネス上のものです。1kgあたりの単価が低いため、運賃に見合うかを検討する必要があります。また、海外で実績のある繊維・種子の生産者と価格で競うことになります。

タイ側では、これらの製品に麻薬関連の許可手続きは要りません。また、タイ食品医薬品局(Thai FDA)が主に扱う分野でもありません。

  • 種子 には通常、タイ農業局(กรมวิชาการเกษตร)が発行する植物検疫証明書が必要です。これは植物の健康証明書で、貨物が検査を受け、輸入国の病害虫に関する規則を満たしていることを示します。種子にはタイの種子・植物品種に関する規則も適用されます。播種用の種子には、ヘンプに関する省令 仏暦2563年(2020年)の条件が適用される場合もあります。
  • 繊維と茎 は通常、一般的な税関手続きと農産物の輸出手続きに従います。

最初の出荷の前に、自社製品に必要な許可を農業局と関税局に確認してください。

EU側では、ヘンプシード食品はノベルフードには当たりません(用語は第7章で説明します)。ただし、EU全体で共通のTHC上限があります。規則(EU)2022/1393 は 2023年1月1日 から適用されています。現在は、汚染物質に関する統合規則(EU)2023/915に組み込まれています。この規則はΔ9-THC当量の上限値を定めています。「Δ9-THC当量」とは、THCに加えてTHCAも合算するという意味です。上限は次のとおりです。

製品 Δ9-THC当量の上限
ヘンプシードと種子からつくった製品 3.0 mg/kg
ヘンプシードオイル 7.5 mg/kg

韓国の食品公典は、ヘンプシードの基準値をTHC 5 mg/kg以下、CBD 10 mg/kg以下としています。これは、アジア市場の規制ニュースを伝えるChemLinkedの報道によるものです。ヘンプシードの栄養面については、ヘンプシード:9種類の必須アミノ酸すべて、制限アミノ酸のリジン、タイの食品法の要件で解説しています。

訳者注: 種子には、収穫や脱穀のときに花穂の樹脂が付きます。この残留物は、EUの3.0 mg/kgのような厳しいTHC上限で不合格になるよくある原因です。タイの雨季には、湿った種子にカビが生えることもあります。カビは植物検疫の検査で問題になる場合があります。種子をよく清掃して乾燥させ、契約に署名する前に1ロットを検査してください。

やるべきこと: 清掃した種子を1ロット検査機関に送り、Δ9-THC当量をmg/kg単位で測ってもらいます。価格を提示する前に、その結果を輸出先市場の上限と比べてください。

5. 税関コードと基本的な輸出書類

輸出する製品はすべて、税関コードを付けて申告しなければなりません。このコードがHSコード(Harmonized System)で、商品に番号を付ける国際的な分類体系です。最初の6桁はほぼすべての国で共通です。タイと輸入国は、それぞれの関税のために桁を追加します。

コードが重要な理由は2つあります。第一に、コードによって輸入関税と、輸出先で求められる許可が決まります。第二に、コードが製品の説明と合っていないと、貨物が留め置かれる原因になりやすいからです。

種子、オイル、繊維、茎、抽出物、化粧品は、それぞれ別の項に分類されます。たとえば、ヘンプ(Cannabis sativa L.)の繊維で、未加工または加工済みだが紡いでいないものは第53.02項に分類されます。ヘンプシードは通常第1207.99号、ヘンプシードオイルは第1515.90号で申告されます。ほかの販売者のインボイスからコードを写さないでください。タイの関税率表で製品を調べ、最初の出荷の前に関税局でコードを確認してください。タイ税関は、関税分類について書面で事前教示を出しています。申請は関税局のウェブサイトからオンラインで、または関税分類の担当部署で行います。事前教示の有効期間は3年です。

ヘンプ製品の基本的な輸出書類には、通常次のものが含まれます。

  • 商業送り状(コマーシャルインボイス) – 販売する品目、数量、価格、買い手と売り手、HSコードを記載
  • 梱包明細書(パッキングリスト) – 梱包の方法、重量、梱包番号を記載
  • 輸出申告書 – タイ税関に提出
  • 植物検疫証明書 – 種子などの未加工の植物原料について、農業局が発行
  • 分析証明書 – 買い手や国境でTHCやCBDの含有量が確認される製品に必要
  • 原産地証明書 – 買い手が貿易協定に基づく低い関税の適用を受けたい場合に必要
  • その他の許可 – 製品の種類に応じてタイFDAや輸出先が求めるもの(抽出物については前編を参照)

すべての書類で、同じ製品名と同じHSコードを使ってください。許可を受けた大麻輸出の代金決済、経由国、書類の流れ全体については、タイからの許可済み大麻輸出の代金を受け取るにはとタイから正規に輸出する大麻を買い手に届けるまでで解説しています。

やるべきこと: 製品ごとに、製品名、HSコード、必要な書類を1行にまとめます。その内容を関税局と農業局に確認してもらい、本格的な注文の前に少量の試験出荷を行ってください。

6. 化粧品

タイでは、タイの製造業者がつくる化粧品に、大麻・ヘンプ由来の成分を4種類使うことが認められています。条件は、最終製品のTHCが 重量比0.2%以下 であることです。ChemLinkedによると、4種類は次のとおりです。

  • ヘンプシードオイルまたは種子エキス
  • 花以外の部位(樹皮、茎、繊維、枝、根、葉)とヘンプシード
  • CBD抽出物(輸入CBDや合成CBDは使用不可)
  • 大麻またはヘンプ由来のテルペン

EU

EUの化粧品は、規則(EC)1223/2009で規制されています。CBDそのものは禁止されていません。ただし、附属書IIの306番は、麻薬に関する単一条約(1961年の国連の薬物条約)に掲載された麻薬の使用を禁止しています。その結果、次のようになります。

  • 花穂の先端部(flowering tops) からつくった抽出物、樹脂、チンキに含まれるCBDは禁止
  • 合成CBDや、花穂の先端部を含まない葉と種子から得たCBDは禁止されない

2026年、SCCS(消費者安全科学委員会:化粧品の安全性についてEUに助言する科学者の委員会)は、化粧品中のCBDは0.19%まで安全であり、不純物として含まれるTHCは0.00025%までとする結論を出しました。これらは提案段階の参考値です。拘束力のある上限は、まだ規則に書き込まれていません。

EU向けのラベルは、タイ向けのラベルとは別に作る必要があります。

  • 成分は INCI名(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients:化粧品成分の国際標準名称)で表示します。例:Cannabis Sativa Seed Oil、Cannabidiol。
  • EU域外の製造業者には、EU域内に拠点を置く 責任者(Responsible Person) が必要です。これはEUで製品の法的責任を負う会社で、その名称と住所をラベルに記載しなければなりません。
  • 必須表示は、各加盟国が求める言語で書く必要があります。複数の国で販売する場合は、通常、多言語ラベルか国別のラベルが必要になります。

アジア

アジアの市場はEUよりはるかに厳しく、その数値は甘く見られがちです。

  • 日本。 改正大麻取締法が 2024年12月12日 に施行されました。旧ルールでは、成熟した茎か種子からつくった製品だけが認められていました。新ルールでは、部位ではなくTHCの含有量で判断します。THCの残留限度値は、油脂と粉末が 10 ppm、化粧品を含む固形・粘性の製品が 1 ppm、水溶液が 0.1 ppm です。
  • 中国。 2021年5月28日から、大麻由来の化粧品成分が禁止されました。CBDは使用禁止成分のリストに加えられました。大麻草(Cannabis sativa)の葉エキス、果実、種子油は、使用禁止の植物成分リストに加えられました。日本のように上限を厳しくしたのではなく、全面的な禁止です。

日本のppm単位の上限は、THC 0.2%という規格より100〜10,000倍低い値です(0.2%は2,000 ppmに当たります)。タイの上限に合わせてつくった化粧品が、日本でもそのまま通るとは限りません。

やるべきこと: 処方を決める前に輸出先を決めてください。その国の上限に合わせて処方し、最終製品をその上限に照らして検査してもらいます。

7. 食品と、EUでCBD食品が販売できない理由

EUでいう ノベルフード(新規食品) とは、ノベルフード規則が定める基準日より前に、EUで一般的に食べられていなかった食品や成分のことです。販売する前に、安全性評価を受けて認可を得なければなりません。食品中のCBDにはこの認可が必要ですが、まだ1件も認可されていません。

EFSA(欧州食品安全機関)は、成人のCBDの暫定的な安全摂取量を1日約2 mgとしています。これは、ほとんどのCBD食品に含まれる量を大きく下回ります。

食品ラベルには、さらに2つのEU規則が適用されます。

  • 消費者向け食品情報規則(EU)1169/2011は、ラベルに表示すべき内容を定めています
  • 健康強調表示はすべて、規則(EC)1924/2006の対象です

喫煙用の製品は、そもそも食品ではありません。そのため各国は、喫煙用の花穂を麻薬法やたばこ法で規制しています。例は次のとおりです。

  • イタリア – 2025年の治安に関する法令(暫定措置令48/2025、法律80/2025により法律化)による
  • オーストリア – たばこ法による
  • イギリス – 薬物乱用法による

やるべきこと: 認可が近いうちに出ると見込んで、CBD食品やサプリメントのEU発売を計画しないでください。食品を扱う場合は、ノベルフードに当たらないヘンプシード製品から始めてください。

8. タイのヘンプ事業者向け 現実的な製品候補リスト

以下のリストは、利益率ではなく、規則をクリアする難しさの順に並べています。最も簡単なものが先頭です。

  1. 食品用のヘンプシード、殻むき種子、シードオイル。 最も問題の少ないルートです。ただし、EUの上限である3.0 mg/kgと7.5 mg/kg、または輸出先国の同等の基準を満たすことが条件です。
  2. 繊維、ハード(茎の芯の木質部分)、ヘンプクリートの原料。 カンナビノイドの問題はまったくありません。制約になるのは運賃です。ヘンプクリート:数字が示すことを参照してください。
  3. タイの抽出物の基準である0.2%以内のCBD抽出物とアイソレート。 買い手には総THC 0.2%以下という仕様で示し、化粧品原料または企業間取引(B2B)の原料として販売します。タイでは麻薬規制から外れていますが、タイFDAの製品関連法の対象であることは変わりません。輸出先では、麻薬法ではなく化粧品法か食品法の問題になります。
  4. 化粧品の完成品。 実現は可能ですが、輸出先の規則に合わせて処方してください。日本はTHCの残留限度値をppm単位で定めており、中国は大麻由来の化粧品成分を全面的に禁止しています。
  5. EU向けのCBD食品とサプリメント。 現在はノベルフードの要件のため販売できません。認可が近いうちに出ることを前提に発売計画を立てないでください。
  6. 未加工のヘンプの花穂。 2025年6月からタイ側で規制対象となっており、多くの輸出先国でも禁止または制限されています。規制ハーブと第5種麻薬:タイのTHC 0.2%と1.0%の線引きを参照してください。輸出先市場での扱いについては、未加工のCBDフラワーと抽出物を参照してください。

訳者注: タイの小規模な生産者にとって、上位2つは必要な資金が最も少なく済みます。通常の農業書類と輸出書類のほかに、特別なライセンスも要りません。製品1つ、輸出先1か国から始めて、少量の試験ロットを出荷し、どの書類を求められたかを記録してください。その記録は、どんな概要記事よりも、その市場について多くのことを教えてくれます。

やるべきこと: 上位3つから製品を1つ、輸出先を1か国選び、試験出荷を1回行ってください。求められた書類と発生した遅れを、すべて記録してください。


このトピックの下で経験を共有してください。 タイからヘンプシード、繊維、抽出物を販売している方に伺います。最もトラブルが少なかった輸出先はどこでしたか。最も利益が出た国のことではありません。書類が一度で受理され、貨物が一度も留め置かれなかった国のことです。この情報は、2つ目の市場を計画するときに最も役立ちますが、どこにも公開されていません。

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出典

本記事は、それぞれの国・地域で合法的に事業を行う読者のための参考情報です。法律、税関、食品安全、税務に関する助言ではありません。食品法、化粧品法、麻薬法は、ここで挙げたすべての市場で異なり、短期間で変わります。処方、ラベル作成、出荷の前に、所管当局と有資格の専門家に確認してください。