リビングソイルのための乾燥ミネラル:カキ殻、石灰、石膏、タイでの入手方法(後編)

原典より翻訳・編集:The Rev 著 True Living Organics(Green Candy Press、初版2012年、第2版2016年、第3版2024年)。以下で紹介するレシピの主張は、この本によるものです。各主張は、参考文献に挙げた独立した情報源で確認しています。

リビングソイルのレシピの多くは、ゆっくり効く岩石ミネラルを5種類加えます。後編では、そのうちカルシウムを供給し、土壌pHを調整する3種類を取り上げます。カキ殻、石灰、石膏です。続いて、やせた熱帯の土で、どの問題にどの改良材が合うかを示します。最後に、5種類すべてのまとめ表と、タイ・東南アジアでの入手に関する注意点を載せます。

後編の結論を先にお伝えします。5種類のうち、最も裏付けがしっかりしているのは石膏です。カキ殻はよいカルシウム源ですが、「微生物の礁(リーフ)」になるという主張は証明されていません。消石灰はリビングソイルにはまったく向きません。

前編では、残り2種類のミネラルと、ロックダストの安全性を扱いました。グリーンサンドは、カリウム源としては力不足です。Azomite系のロックダストはリスクが低いものの、効果は証明されていません。リン鉱石は、pH 6を超えるとリンをごくゆっくりとしか放出しません。

レシピの主張は、主にTrue Living Organicsによるものです。この本はよくTLOと略されます。リビングソイルの本の中でも特によく知られた一冊で、著者はThe Revというペンネームで書いています。各ミネラルについて、3つの問いで確認します。それは何か、レシピは何を主張しているか、独立した証拠は何を示しているか、です。

本記事は後編です。前編:https://asiannabis.com/t/1401

1. カルシウムとpH:この3つをまとめて扱う理由

リビングソイルでは、有機質やミネラルの土壌改良材から、土壌生物が時間をかけて養分を取り出します。水溶性の肥料塩は微生物を殺してしまうことがあります。緩効性ミネラルなら、微生物を殺さずにこの仕組みに養分を補えます。

TLOはカルシウムを、植物が大量に必要とする主要栄養素に近いものとして扱っています。一般的な植物栄養学では、カルシウムは中量栄養素に分類されます。そのため、このやり方では、カルシウムをどう与えるかがとても大切になります。

後編で扱う3つのカルシウム源は、pHへの影響がまったく違います。pHは酸性からアルカリ性までを表す尺度で、7が中性です。カキ殻と苦土石灰(ドロマイト石灰)は、pHを上げて安定させます。石膏はpHをほとんど変えません。消石灰は、pHを危険なほど高くしてしまいます。

安全上の注意: 石膏の粉末には、結晶質シリカが含まれていることがあります。結晶質シリカは、肺の奥まで入り込む細かい鉱物の粉じんです。米国労働安全衛生局(OSHA)によると、長い期間吸い込むと、治らない肺の病気である珪肺(けいはい)や、肺がんの原因になることがあります。混ぜる作業は、屋外か換気のよい場所で行ってください。微粒子用の防じんマスク(N95以上、または同等の規格)を着けてください。粉末を加える前に土を湿らせ、掃除は乾いたほうきではなく水で行ってください。

やること: カルシウム源を選ぶ前に、今の培土のpHをpHメーターか検査キットで測ってください。その値を見れば、pHを上げてよいのか、今の値を保つべきなのかがわかります。

2. カキ殻:カルシウムと、微生物のすみかになるという主張

どんなものか。 カキ殻は、貝殻を砕いたり粉にしたりしたものです。コインくらいの大きさに粗く砕いたものと、細かいカキ殻粉末の両方が売られています。主成分は炭酸カルシウムで、含有率は約95%とされることが多く、ケイ酸塩や微量元素も少し含みます。

レシピの主張。 レシピでは、カキ殻に2つの別々の役割を持たせています。1つ目は、カルシウムの供給です。

2つ目は、人工の礁(リーフ)のような役割です。砕いた殻の表面には細かい穴が多くあります。そこにpHが少し高い小さな場所ができ、細菌がよく増える、とされています。土全体のpHは、狭い範囲でしか変わらないとされます。それ以外の部分は菌類が担い、菌類は殻から離れた場所を好む、とされています。

証拠が示すこと。 カルシウムを供給するという役割は、素材の性質と一致しています。カキ殻の主成分は炭酸カルシウムなので、実際にカルシウムを供給します。

礁という考え方は、物理的な仕組みとしてはありえる話です。ただし、データではなく推論として示されているだけです。容器栽培の培土でこれを確かめた対照試験は、見つかりませんでした。性質のよくわかっている素材について語られた、未検証の仕組みとして受け止めてください。

結論。 カキ殻はよいカルシウム源です。東南アジアの沿岸部では、最も手に入りやすい改良材の一つです。カキ養殖の副産物として、安く出回っているからです。

役に立つのは、ここから得られるもっと広い教訓です。カルシウムは1種類ではなく、複数の供給源から与えてください。 骨粉、フェザーミール(羽毛粉)、石灰、貝殻は、それぞれ違う速さでカルシウムを放出します。いくつかを組み合わせると、植物へのカルシウム供給が安定します。

訳者注:タイとベトナムでのカキ殻の買い方。 粗く砕いた殻も殻の粉末も、養鶏飼料の流通ルートで売られています。飼料用の殻には、塩分が残っていることがあります。塩分はEC(電気伝導度。水に溶けた塩類の量を示すメーターの値)を上げ、根や微生物にストレスを与えます。

飼料用の殻は、培土に混ぜる前にバケツの水ですすいでください。すすぎ水のECが水道水に近い値になるまで、これを繰り返します。その値になれば、塩分が抜けたと判断できます。

やること: カキ殻は、2〜3種類使うカルシウム源のうちの1つとして使ってください。養鶏飼料として売られていたものは、先にすすいでください。

3. 石灰:どの種類を選ぶか、そして消石灰が向かない理由

リビングソイルに消石灰(水酸化カルシウム)を使わないでください。 消石灰には腐食性があります。飽和した溶液はpH約12.4に達します。この強さでは、土の生き物や根を傷めるおそれがあります。

苦土石灰は、カルシウムとマグネシウムの両方を供給し、pHを安定させます。リビングソイルの培土に石灰を入れるときは、これが標準的な選択です。

粒状(ペレット状)の石灰は、ほかの形より溶けやすいわけではありません。 粒状石灰は、細かく粉砕した石灰を粒に固めたものです。反応が速いのは、粒が崩れたあと、細かい粒子が土に広がるからにすぎません。

どの石灰でも、反応の速さを主に決めるのは、売られている形ではなく粉砕の細かさです。粒子が細かいほど、土に触れる表面積が大きくなるからです。

訳者注:通称ではなく、袋の表示を読んでください。 タイの農業資材店では、何種類もの石灰資材が並んで売られています。日常の呼び名が、化学的な中身と一致するとは限りません。目安として、ปูนขาว はふつう水酸化カルシウム(消石灰)です。ปูนมาร์ล は主に炭酸カルシウムに粘土が混ざったもの、ปูนโดโลไมท์ はドロマイト、つまりカルシウムとマグネシウムの炭酸塩です。ラベルの化学名を確認してください。水酸化カルシウムと書かれた製品は、リビングソイルの培土用には買わないでください。

やること: 苦土石灰を買うときは、どのくらい細かく粉砕されているかを販売者に聞いてください。効く速さを決めるのは、形ではなく細かさです。

4. 石膏:pHを変えずにカルシウムと硫黄を補う

どんなものか。 石膏は硫酸カルシウム二水和物です。つまり、結晶の中に水を取り込んだ硫酸カルシウムです。

レシピの主張。 石膏は、土を再利用するレシピの定番材料です。レシピでは、再利用した土で硫黄が不足しないよう、ソフトロックフォスフェート(軟質リン鉱石、SRP)と組み合わせて使います。使用量はそれぞれのレシピに合わせたものなので、量は原書で確認してください。

独立した証拠が示すこと。 5種類のミネラルの中で、最も裏付けがしっかりしているのが石膏です。Ohio State University Extensionは、米国オハイオ州立大学の農業普及サービスで、石膏についてのファクトシートANR-20を公開しています。農業普及サービスとは、大学の研究を農家向けの実用的な指導にまとめる機関です。その指導内容は一貫しています。

  • 石膏は水にやや溶けやすく、溶解度は1リットルあたり約2 gです。カルシウムと、硫酸塩の形の硫黄を供給し、植物はどちらも吸収できます。農業用石灰の多くは石灰岩から作られますが、石膏はその石灰岩よりずっと溶けやすい資材です。
  • 石膏は石灰資材ではなく、土壌pHを目に見えるほど変えることはありません。 石膏の硫黄は、すでに硫酸塩として完全に酸化されています。そのため、土の中で酸を作ることがありません。ここが石灰との、そして単体硫黄(硫黄華)との大きな違いです。
  • 石灰は、pHが上がるほど溶けにくくなります。一方、石膏は中性やアルカリ性の土でもカルシウムを供給し続けます。
  • 農業での代表的な使い道は、ナトリウム質土壌(ソーダ質土壌)の改良です。これは、ナトリウムが多すぎて、土の構造や植物の生育が悪くなった土のことです。石膏のカルシウムがナトリウムと入れ替わり、ナトリウムを水で洗い流せるようになります。
  • カルシウムがすでに足りている場所では、ほとんど効果がありません。

結論。 pHを動かさずにカルシウムや硫黄を補いたいときは、石膏を使ってください。苦土石灰とカキ殻をすでに入れたリビングソイルの培土は、pHが上がっています。石膏なら、pHをそれ以上押し上げずに、カルシウムを追加できます。

硫黄不足を防ぐために石膏とSRPを組み合わせる場合、確実に硫黄を供給するのは石膏のほうです。ソフトロックフォスフェートの貢献は、それより小さくなります。

訳者注:買うべき等級と、避けるべき等級。 タイでは、石膏が農業用・工業用として広く売られています。農業用の硫酸カルシウム二水和物を買ってください。

建築用の石膏プラスターは使わないでください。これはふつう半水和物(焼石膏)で、結晶に含まれる水が少ない硫酸カルシウムです。水を吸うと、鉢の中で硬く固まってしまいます。リン酸肥料工場の副産物であるリン石膏も、信頼できる分析結果がない限り避けてください。放射性物質や重金属を含むことがあるからです。

訳者注:雨季の屋外ベッド。 石膏は、石灰よりずっと溶けやすい資材です。雨季の激しい雨にさらされる露地のベッドでは、屋根の下に置いた容器よりも早く流れ出ることがあります。屋外で育てている人は、石膏がまだ残っていると思い込まないでください。長雨のあとには、カルシウム不足の症状がないか改めて確認してください。

やること: 培土のpHがすでに目標値かそれ以上なら、カルシウム源には農業用石膏を使ってください。石灰やカキ殻は、それ以上加えないでください。

5. やせた熱帯の土の改良:どの問題にどの改良材が合うか

やせて疲れた熱帯の土に、これらのミネラルのどれを使えばよいか、という質問がよく寄せられます。下の表は、前編・後編で見た証拠をもとに、問題ごとに合う改良材をまとめたものです。

測定した・目で見た問題 検討する改良材 合う理由 注意点
酸性で、カルシウムとマグネシウムが必要な土 苦土石灰 カルシウムとマグネシウムを供給し、pHを安定させる 細かく粉砕されたものを選ぶ。効く速さは細かさで決まる
カルシウムは必要だが、pHはすでに十分高い 石膏 pHを動かさずにカルシウムを補える 農業用に限る
硫黄不足 石膏 石膏の硫酸塩は植物が吸収できる ソフトロックフォスフェートから得られる硫黄は少ない
長期間、安定したカルシウム供給が欲しい カキ殻と、ほかのカルシウム源の併用 供給源ごとに放出の速さが違う 飼料用の殻はすすぐ
リン不足 ソフトロックフォスフェートまたはリン鉱石 根の菌類を傷めずに、ゆっくりリンを供給する よく溶けるのはpH約5.5以下のときだけ。カドミウム含有量を確認する
再利用した培土の微量元素不足 火山岩または玄武岩のロックダスト 多くの元素を薄く、ゆっくり供給する 元素分析と重金属分析がある場合に限る
今作でのカリウム不足 硫酸カリ、ラングベイナイト、またはケルプミール(海藻粉末) 今作の期間内にカリウムを放出する グリーンサンドでは解決しない
ナトリウム過剰(ナトリウム質土壌) 石膏 カルシウムがナトリウムと入れ替わり、そのナトリウムを水が洗い流す ナトリウムを流しきるだけの十分な水が必要
排水や通気が悪い パーライトや軽石などの通気改良材(トピック1402) 通気と排水を直接よくする グリーンサンドの構造改善効果は、あってもわずか

訳者注:加える前に測ってください。 表のどの行も、推測ではなく、測定した・目で見た問題から始まっています。容器栽培なら、pHメーターとECメーターでほとんどを確認できます。畑の土なら、お金をかける前に、分析機関の土壌検査でpHと養分の量を知ることができます。タイの土地開発局(กรมพัฒนาที่ดิน)は、農家向けに土壌分析を行っています。osd101.ldd.go.th/osdlab でオンライン登録し、同局の分析所にサンプルを送ります。農家向けの基本的な分析は無料です。測定しないままでは、改良材が効いたかどうかを判断できません。

やること: 問題を1つ選び、それに合う改良材を1つ加えて、次の作で結果を記録してください。何が変化の原因だったかわかるように、一度に変えるのは1つだけにしてください。

6. まとめ表:5種類のミネラル

改良材 主な役割 証拠 実用上の結論
グリーンサンド 長期的なミネラルの蓄え。土の構造をよくする可能性 カリウムの主張は裏付けなし:2004年の研究レビューでは、養分としての価値はごくわずかだった 土の再利用では入れても入れなくてもよい。カリウム源として数えないこと
Azomite/ロックダスト 多くの微量元素を薄く供給 メーカーの主張は第三者による検証なし。窒素と塩素はごくわずか リスクの低い保険。地元産の玄武岩ダストは、重金属分析と元素分析がある場合に限る
ソフトロックフォスフェート/リン鉱石 ゆっくり効くリン、微量元素 pH約5.5〜6を超えると溶けにくいため、放出は生物の働き次第。アンモニアに関する主張は、酸処理した過リン酸石灰でしか研究されていない 生物が活発な土で、ゆっくり効くリン源として使う。カドミウム含有量を確認する
カキ殻 カルシウム、pHの安定 成分は確か。「微生物の礁」の仕組みは未検証 アジアの沿岸部では安くて質がよい。飼料用の殻はすすぐ。ほかのカルシウム源と併用する
石膏 カルシウムと硫黄。pHを変えない 大学の農業普及サービスの指導で十分に裏付けあり pHを動かさずにカルシウムと硫黄を補うための資材。石膏プラスターや、分析未確認のリン石膏は使わない

7. タイと東南アジアでの入手

訳者注: 5種類はどれも、この地域の野菜・果樹・観賞植物の栽培で使われている、ごく一般的な農業資材です。ブランド製品の購入先は、タイの正規代理店に問い合わせてください。一般肥料Q&A(General Nutrients Q&A)セクションで、ほかの栽培者に聞くこともできます。

  • カキ殻: 広く出回っていて安価です。粗く砕いたものも粉末も、養鶏飼料の流通ルートで売られています。飼料用の殻は塩分を含むことがあるので、培土に混ぜる前によくすすいでください。
  • 石膏: 農業用・工業用として広く出回っています。農業用の硫酸カルシウム二水和物を買ってください。建築用の石膏プラスターは、ふつう半水和物で硬く固まるため、使わないでください。リン石膏は放射性物質や重金属を含むことがあるため、信頼できる分析結果がない限り避けてください。
  • 苦土石灰: 簡単に見つかります。反応の速さを決めるのは形ではなく細かさなので、粒子の細かさを確認してください。
  • リン鉱石: この地域で手に入ります。微粉末のソフトロックフォスフェートは、粒状のリン鉱石より見つけにくい資材です。名前だけで判断せず、粒の大きさとカドミウム含有量を確認してください。
  • 火山岩・玄武岩のロックダスト: 採石場で売られていて、輸入ブランドのロックダストよりずっと安価です。元素分析と重金属分析の結果が手に入る場合に限って使ってください。
  • グリーンサンド: ほぼ輸入品に限られます。これまでの証拠を考えると、送料が気になるなら、最初に外してよい資材です。

何を買う場合でも、保証成分(販売者がラベルに記載している養分の割合)を確認してください。この数字は、元素の総含有量として読んでください。今作で植物が実際に吸収できる量ではありません。この差を理解することが、このガイドで最も大切なポイントです。

訳者注: タイで販売される肥料は、肥料法 仏暦2518年(1975年)と、それを改正した肥料法(第2号)仏暦2550年(2007年)の規制を受けます。ミネラル資材が肥料として売られている場合は、登録とラベルを確認してください。確認方法は、トピックタイで合法に販売されている肥料かを確認する方法で説明しています。

8. あなたの記録を共有してください

ミネラル改良材は、正しく評価するのが最も難しい資材です。期待される効果が表れるまでに、多くの栽培者が記録をつけている期間より長くかかるからです。同じ土のバッチを3サイクル以上、このガイドのミネラルを入れた場合と入れない場合で使ってきた方もいるかもしれません。その場合は、このトピックの下に詳しく投稿してください。ミネラルの種類、量、サイクル数、そして観察した結果です。このようなデータを持っている栽培者はごくわずかです。ご自分の培土についての質問も、ここで受け付けています。

リンと根の菌類の関係については、フォーラムのトピック菌根菌とその他の根の微生物をご覧ください。

参考文献


本記事は、お住まいの地域の法律を守って行動する読者に向けた、一般的な園芸情報です。大麻に関する規則は国ごとに異なります。タイでは、2025年6月26日に施行された保健省告示「規制ハーブ(大麻)」仏暦2568年により、大麻の花穂は規制ハーブに指定されています。花穂を販売できるのはPT 33(ภ.ท.33)の処方箋がある場合に限られ、花穂の広告やオンライン販売は禁止されています。嗜好目的での使用は認められていません。大麻管理法はまだ草案の段階です。2026年9月22日に内閣が承認し、下院に送られました。ベトナムなど大麻が禁止されている国では、本記事は栽培を勧めるものではありません。ここで取り上げた改良材は、合法な作物に使われる一般的な資材です。本記事は法的助言ではありません。