生物的防除(バイオロジカルコントロール)とは、生きた天敵を使って、害虫の数を被害が出ない水準に抑える方法です。天敵には、捕食性ダニ、捕食性昆虫、昆虫を殺す線虫、糸状菌(カビの仲間)、細菌があります。後編では、まずどの種を、どれくらいの量と温度で使うかを解説します。次に、微生物資材がどのように効くかを説明します。さらに、コンパニオンプランツにできることとできないこと、毎週の見回り(スカウティング)の予定、散布ローテーション、残留農薬検査も扱います。本記事は総合的病害虫管理 (IPM) のガイドの一部です。IPMでは、まず予防し、次に監視します。そのうえで害虫を手で取り除き、天敵を放します。化学農薬の散布は最後の手段です。
情報源は、米国の大学の普及指導サービス、発表済みの研究、国際的なガイダンスです。それぞれ初めて出てくる箇所で紹介し、「参考文献」にまとめています。タイと東南アジアの条件についての補足には「訳者注」と記しています。
本記事は後編です。前編:https://asiannabis.com/t/1301
1. 第4段階:生物的防除
以下の放飼量は、天敵を販売する会社が推奨する目安の範囲です。科学的に決まった数値ではありません。発生を予防するときは下限の量を使います。すでに害虫がいるときは上限の量を使います。
訳者注:生物的防除を使うと、得られることが3つあります。散布の回数が減り、花穂に化学物質が残らず、開花期の作業も減ります。
タイで使えるかどうかは、2つの点で決まります。1つ目は、その種をタイで購入できるかどうかです。販売会社に、タイに届けられる種はどれか、輸入許可が必要かどうかを問い合わせてください。2つ目は、栽培室の温度と湿度がその種に合っているかどうかです。これは下の表で確認できます。
始めるときは、テント1つか部屋1つで、1作の間、捕食者を1種だけ使ってください。同時に、前編で紹介した見回り記録もつけ続けてください。
1.1 捕食性ダニ
| 種 | 対象害虫 | 1回あたりの放飼量 | 条件 |
|---|---|---|---|
| Phytoseiulus persimilis | ナミハダニ(two-spotted spider mite)と、その他のTetranychus属のハダニ | 1 m²あたり2–50頭、週1–2回 | 最適13–27 °C。30 °Cを超えると活動しない。湿度70%が必要 |
| Neoseiulus (Amblyseius) californicus | ナミハダニとその他のハダニ | 1 m²あたり25–125頭、週1回を5回繰り返す | 最適13–32 °C。湿度60%未満に弱い |
| Amblyseius andersoni | アザミウマ(スリップス)の幼虫、コナジラミの卵、網を張らないハダニ | 1 m²あたり50–250頭、週1回を3回繰り返す | 14 °C以上、最適20–28 °C。湿度65%が必要 |
| Amblyseius swirskii | アザミウマの若い幼虫、コナジラミの卵と幼虫 | 1 m²あたり25–300頭 | 最適20–32 °C。18 °C未満では活動しない。湿度60%未満に弱い |
Phytoseiulus persimilisはハダニを食べ、ほかのものはほとんど食べません。そのため、ハダニが集中している場所(ホットスポット)をすばやく片づけます。ただし、ハダニがいなくなるとエサがなくなり、飢えて死んでしまいます。ですから、ハダニが再び出たら、もう一度放す必要があります。
このダニは気候の影響を強く受けます。米国のコネチカット大学(University of Connecticut)のIPMプログラムのデータでは、発育にかかる日数は30 °Cで約5日、20 °Cで9日、15 °Cで25日です。湿度が約60%を下回ると、卵が乾いてしおれてしまいます。
暑い部屋では、ふつうはNeoseiulus californicusを選びます。Amblyseius swirskiiは花粉も食べます。花粉だけでも生きられるので、害虫が来る前に放して定着させておくことができます。
訳者注:4月のタイの栽培室は30–35 °Cになり、この表のどのダニの最適範囲も超えてしまいます。エアコンで30 °C未満に保った部屋なら、N. californicusとA. swirskiiに合います。P. persimilisには、さらに涼しく、湿度の高い部屋が必要です。33–35 °Cになる開放型の温室には、どの種も合いません。このうち2種を高温で比べた試験については、30–32 °CにおけるAmblyseius swirskii対Phytoseiulus persimilisで取り上げています。
やること:記録から、過去2週間の最高温度と最低湿度を読み取ってください。その数値が適応範囲に入る種だけを選びます。
1.2 天敵の購入・受け取り・保管・放飼
訳者注:以下は一般的な手順です。必ず販売会社のラベルの指示を優先してください。
- 注文する前に、栽培室の温度と湿度を販売会社に伝えてください。配送にかかる日数、暑さに対してどう梱包しているか、何 °Cで何日保管できるかを確認します。
- 荷物を駐車中の車の中や、日の当たる玄関先に置いたままにしないでください。 タイの日中、そうした場所は表の温度範囲をはるかに超える暑さになります。
- 届いたら、日陰で開封してください。30倍のルーペで、ダニが動いているかを確認します。大半が死んでいたら写真を撮り、その日のうちに販売会社に連絡してください。
- できるだけ早く放してください。 時間帯は夕方か消灯中です。害虫が発生しているときは、被害の出ている葉の上に置きます。予防のときは、キャノピー全体に均等に散らします。
- 種名、頭数、日付、区画を記録に書き残してください。3日後と7日後にもう一度確認し、定着したかどうかを判断します。
- 製品が捕食者に安全だと販売会社が確認していない限り、放した捕食者の上から散布しないでください(前編参照)。
1.3 土と培地:見落とされがちな「栽培室のもう半分」
| 天敵 | 対象 | 使用量 | 条件 |
|---|---|---|---|
| Stratiolaelaps scimitus(長年Hypoaspis milesの名で販売)、土の中にすむ捕食性ダニ | キノコバエ(クロバネキノコバエ類)の卵・幼虫・蛹、アザミウマの蛹 | 1 m²あたり100–500頭、1–2回 | 15 °C以上。湿っていて、ふかふかの培地 |
| Steinernema feltiae(線虫) | キノコバエの幼虫、土の中で過ごす時期のアザミウマ、ハモグリバエ | 製品によって異なる。ラベルに従う | 10–31 °Cで活動、最適14–26 °C。35 °Cを超えると死ぬ |
Steinernema feltiaeは害虫の体内に入り込み、自分と共生している細菌(通常はXenorhabdus)を放出します。この細菌が血液の感染症(敗血症)を起こし、数日のうちに害虫を殺します。線虫が効くかどうかは、次の2点で決まります。
- 線虫は紫外線で傷みます。そのため、施用は夕方に行ってください。
- 施用後の数日間は培地を湿った状態に保ってください。線虫は、培地の粒の周りにある水の膜の中を移動するからです。
訳者注:タイの日差しの下に置いた黒い鉢は、中の培地が気温よりかなり熱くなることがあります。線虫を灌注する前に、差し込み式の温度計を培地に挿してください。活動範囲の上限である31 °Cを超えていたら、施用しないでください。
やること:培地の近くに水平に置いた黄色い粘着カードにキノコバエがかかっていたら、葉ではなく培地を処理してください。上の2つのうちどちらかを使い、2週間後にカードの捕獲数を比べます。
1.4 捕食性昆虫
| 天敵 | 獲物 | 1回あたりの放飼量 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Chrysoperla carnea(クサカゲロウ) | 主にアブラムシ。ほかにコナカイガラムシ、アザミウマ、ガの卵 | 1 m²あたり2–20頭、被害箇所に、毎週 | 獲物を捕らえるのは幼虫だけ。成虫は花の蜜を食べ、ほとんどが飛び去る |
| Orius laevigatus(捕食性カメムシ) | 各種のアザミウマ | 1 m²あたり0.5–10頭、1–2回 | 最適は20 °C以上。30 °Cを超えると効果が落ちる |
| Hippodamia convergens(テントウムシの一種、convergent lady beetle) | アブラムシ | 1.5を参照 | ほとんどが放飼後すぐにいなくなる |
販売会社のデータによると、Chrysoperla carneaの幼虫は、育つ間に平均で300〜400頭のアブラムシを食べます。数は獲物の種類と温度によって変わります。最もよく働くのは20–28 °Cです。
1.5 テントウムシ:実際のところ
カリフォルニア大学(University of California)のIPMプログラムは、率直に説明しています。市販のHippodamia convergensは、越冬中の集団から携帯式の吸引機で採集した野生のテントウムシです。ほとんどは1〜2日のうちに飛び去ります。アブラムシがたくさんいても同じです。UC IPMによれば、購入したテントウムシはもともと散らばって去る性質があります。
カリフォルニア大学の研究者が引用した研究では、約95%が48時間以内にいなくなりました。成虫1頭は、飛び去るまでに1日あたり約100頭のアブラムシを食べます。バラのアブラムシを抑えるには、1株あたり約1,500頭を、1〜2週間ごとに放す必要がありました。
そのため、テントウムシはアブラムシを一度にすばやく減らすために使い、夕方に放してください。そこに残って数を増やすことは期待しないでください。
コーネル大学協同普及事業(Cornell Cooperative Extension、米国ニューヨーク州のコーネル大学による普及指導サービス)は、2022年にヘンプのフィールドデー用の配布資料を発行しました。内容は、ハイトンネル(ビニールで覆ったかまぼこ型ハウス)でCannabis sativaを育てる際の生物的防除です。この資料によると、捕食性のタマバエAphidoletes aphidimyzaは、アブラムシのコロニーの中に最大70個の卵を産みます。また、生物的防除は予防的に、発生の初期に使わなければならないと強調しています。
やること:アブラムシ対策では、カードに羽のあるアブラムシがかかった時点で、クサカゲロウの幼虫かタマバエを使い始めてください。コロニーができるまで待たないでください。
2. 微生物資材
| 生物 | 害虫を殺す・作物を守る仕組み | 害虫が食べる必要は? |
|---|---|---|
| Beauveria bassiana | 胞子が昆虫の外皮(クチクラ)に付着し、酵素で外皮を破って、昆虫の体内で増える | いいえ。触れるだけで十分 |
| Bacillus thuringiensis(Bt) | 結晶タンパク質が、幼虫のアルカリ性の腸の中で溶ける。昆虫自身の酵素が毒素を活性化し、その毒素が腸の壁に穴を開ける | はい。食べる必要がある |
| Trichoderma harzianum | 根の表面で増え、病原菌の細胞壁を溶かす酵素を出し、その病原菌を栄養にする | 該当しない |
| Bacillus subtilis QST 713株 | 根の表面で増え、病原体を直接攻撃し、植物自身の防御反応を引き出す | 該当しない |
2.1 昆虫を殺す糸状菌の仕組み:Beauveria bassiana と Metarhizium
昆虫を殺す糸状菌(昆虫病原性糸状菌)は、皮膚から害虫に感染します。胞子が昆虫の体に付いてくっつき、外皮を溶かして体内で増え、やがて昆虫を殺します。害虫が食べる必要はありません。そのため、アブラムシ、アザミウマ、コナジラミのように、葉をかじらない害虫にも届きます。
コーネル大学の生物的防除ファクトシートは、Beauveria bassianaの要点を次のようにまとめています。
- アブラムシ、アザミウマ、コナジラミを含む700種以上の昆虫に感染します。
- 最もよく効くのは18–29 °Cで湿度が高いときです。
- 紫外線で胞子が死にます。紫外線B(UV-B)に15分当てると胞子の生存率が大きく下がりました。そのため、消灯中に施用してください。
- 効果が見えるまで6〜14日かかります。
- 益虫(有益昆虫)やミツバチに害を与えるおそれがあります。
ハダニに効くと決めつけないでください。製品ラベルにハダニが載っているかを確認してください。
Metarhiziumは、もう一つの昆虫病原性糸状菌のグループです。同じように皮膚から感染します。
訳者注:30–35 °Cになるタイの栽培室は、Beauveriaの最適範囲を超えています。雨季の湿度は菌の助けになりますが、キャノピーが濡れたままだと花穂のカビを招きます。製品を買う前に、販売者にタイ農業局(กรมวิชาการเกษตร)の登録番号を確認してください。
やること:まず1か所のホットスポットで試してください。株に印を付け、7日後と14日後に害虫を数えてから、部屋全体を処理するかを決めます。
2.2 適切なBacillus thuringiensisの選び方
Btでは、ブランドよりも亜種のほうが重要です。
- Bacillus thuringiensis subsp. kurstakiは、Cry1AとCry2Aという毒素を持ち、イモムシ類(チョウ・ガの幼虫)を対象にします。
- subsp. aizawaiはCry1Cも持ち、Spodoptera属のヨトウムシ類により強く効くとされています。
- ほかの亜種は双翅目(ハエ・カの仲間)を対象にします。キノコバエもここに含まれます。
幼虫がBtを食べる必要があるので、幼虫がかじっている部分そのものに薬液をかけてください。食害は30分以内に止まることがあり、通常1〜3日で死にます。日光の紫外線でタンパク質が分解されるので、葉の上での効果は短い間しか続きません。
やること:まずイモムシの種類を特定してください。ラベルの亜種がその種類に合っているかを確認し、夕方に散布します。
2.3 根圏の微生物
Trichoderma harzianumとBacillus subtilis QST 713は、先に根や表面に定着することで効果を出します。後から来た病原体は、すでに場所を取られているので定着できません。健康な根を守ることはできますが、すでに起きている感染は治せません。花穂を腐らせる灰色かび病の病原菌Botrytis cinerea(灰色かび病(ボトリティス)参照)がすでに広がっている場合も、期待どおりには効きません。ボトリティス対策で本当に効くのは、風通しと湿度の管理です。
タイで一般的に売られている肥料シリーズは、どれも病害虫防除資材ではありません。また、肥料の混合液が生きた菌(接種資材)を殺してしまうこともあります。そのため、大丈夫だと決めつけず、あなたのタンクの混合液の中でその製品が生き残れるかを確認してください。
やること:接種資材の販売会社に、どの肥料や添加剤と混ぜられるかを問い合わせてください。根のトラブルが出る前、栽培の最初の数週間から施用します。
3. コンパニオンプランツ:根拠が裏づけていること
コンパニオンプランツとは、作物を守ってくれることを期待して、作物の近くで育てるほかの植物です。このテーマは屋外大麻のコンパニオンプランツ(共栄植物)で扱っています。
| 主張 | 根拠 |
|---|---|
| マリーゴールドは、近くの作物から飛ぶ害虫を遠ざける | 弱い。いくつかのハエやチョウの害虫で試験したところ、忌避効果は見られなかった。米国農務省(USDA)の資料では、いくつかの害虫がマリーゴールドに引き寄せられるとされている |
| マリーゴールドはネコブセンチュウ(根を傷める土の中の線虫)を抑える | 効果はあるが条件付き。研究では、アルファ-テルチエニルなどのチオフェンと呼ばれる天然化合物の働きとされている。効くのは、マリーゴールドを被覆作物(カバークロップ)として育て、本作の数週間前に土にすき込んだ場合で、隣の鉢に植えても効かない |
| バジルなどのハーブは、室内でダニやアザミウマを遠ざける | 証明されていない。植物の香りが昆虫の行動を変えることは実験室の試験で見られるが、それは隣の株を守ることとは別の話 |
| コンパニオンプランツは、害虫に余分なすみかを与える | 十分に裏づけられているが、たいてい見過ごされている。コンパニオンプランツが1株増えるごとに、誰も確認しない寄主植物が増えることになる |
3.1 効果のある方法:バンカープラント
発表された研究で裏づけられている方法は、害虫を遠ざけるものではありません。天敵にエサを与える方法です。バンカープラントは花粉やほかの獲物を提供するので、何でも食べるタイプの天敵が、害虫が来る前に定着できます。2012年に学術誌Biological Controlに掲載された研究では、観賞用トウガラシを、いくつかの温室害虫に対するAmblyseius swirskiiのバンカープラントとして試験しました。
訳者注:マリーゴールド(ดาวเรือง)は、この地域のどこでも簡単に育ちます。ネコブセンチュウがいる屋外の畑では、被覆作物として育て、植え付けの数週間前に土にすき込んでください。2012年の研究で使われたのは観賞用トウガラシの品種です。タイで一般的な唐辛子の品種をバンカープラントとして試験した例は見つかりませんでした。バンカープラントはどれも、作物と同じように毎週の見回りで確認しなければなりません。
やること:1つの部屋で、バンカープラントを1種類試してください。近くの葉にいるA. swirskiiの数を、バンカープラントのない部屋と比べます。
4. 毎週の見回りと処理の予定表
室温では、ほとんどの害虫は1世代を終えるのに1週間以上かかります。毎週確認すれば、確認と確認の間に害虫の数が2回倍増することはありません。
| 時期 | 見回り | 主な対応 |
|---|---|---|
| 毎週、同じ曜日 | カードを交換する。決まった株で葉の裏を確認する。培地を確認する | ゼロも含めて数を記録する。ゼロの行があると、増え始めたときにすぐわかる |
| 栄養成長期の1–2週目 | 基準となる数を数える | 何でも食べるタイプの捕食性ダニを定着させる。根圏の微生物資材を肥料と一緒に与える |
| 栄養成長期の残り | 数が増えていないか見張る | 対象を絞った捕食者の放飼を、毎週繰り返す |
| 開花初期 | 葉への散布を安全に行える最後の時期 | 消灯中に生物農薬を葉面散布する。線虫を灌注する |
| 開花中期〜後期 | 見回りと、被害部分の手作業での除去 | 葉への散布はしない。密な花穂は薬剤の残留と水分をため込む |
| 処理をした後 | 3日後と7日後にもう一度確認する | 製品の効果を判断し、結果を記録する |
訳者注:タイの暑さではハダニの発育が速くなります(前編参照)。そのため、すでにわかっているホットスポットは週2回確認してください。全体の数を数えるのは週1回のままでかまいません。
4.1 消灯中の散布と、その代償
葉への散布は通常、暗期に行います。紫外線は、Beauveria bassianaの胞子、Btのタンパク質、線虫を傷めるからです。また、濡れた葉に強い光が当たると、散布による葉焼け(薬害)が起きるおそれがあります。コネチカット大学の殺虫石けんのガイダンスでは、次の場合を避けるよう勧めています。
- 暑く日差しの強い午後
- 約32 °Cを超えて高温ストレスを受けている株
- やわらかい新芽
ただし、大きな代償があります。暗く、涼しく、空気の動かない部屋でキャノピーが濡れたままだと、Botrytis cinereaを招きます。そのため、暗期の早い時間に散布し、ファンを回し続け、点灯前にキャノピーが乾いているようにしてください。
訳者注:屋外や温室では、「暗期」は夜のことです。タイの暑季には、温室の午後はしばしば32 °Cを超えるので、夕方の早い時間に散布してください。雨季には、葉が朝まで濡れたままのことがあります。乾いた夜になる予報で、株の間を空気が通るときだけ散布してください。
4.2 作用機構による製品のローテーション
殺虫剤抵抗性対策委員会(Insecticide Resistance Action Committee、IRAC)は、殺虫剤と殺ダニ剤を番号付きのグループに分類している国際的な委員会です。分け方の基準は作用機構、つまり製品が害虫を殺す仕組みです。同じグループ番号の製品は、ブランド名が違っても、害虫の体の同じ場所を攻撃します。
IRACの中心となるルールは、グループ番号だけを基準にローテーションすることです。目的は、害虫の新しい世代ごとに、前の世代とは違うグループの製品を当てることです。
使い方:
- ラベルでIRACのグループを確認してください。コードは数字で、文字が付くこともあります。載っていない場合は、IRACが公開している分類表で有効成分を調べます。
- 記録に「IRACグループ」の列を追加してください。
- 害虫の次の世代には、グループ番号の違う製品を選んでください。
グループ番号が同じなら、ブランドが2つあっても、害虫には同じ圧力がかかります。ローテーションしているように見えても、その2つを交互に使う意味はありません。1作の間ずっと、同じ接触型の製品を毎週使うことが、抵抗性を最も早く生み出すやり方です。
殺虫石けんは、触れることでしか効きません。含まれる脂肪酸が害虫の細胞膜を傷め、散布液が乾くと何も残りません。こうした製品は、効果が長く残る化学農薬のようには抵抗性を生みません。ただし、株全体にくまなくかける必要があり、益虫にも当たってしまいます。
5. それでも最後の手段に至った場合
化学的防除を選ぶのは、失敗ではなく判断です。よく考えて決めてください。
- 製品が合うように、害虫を種まで特定してください。植物の診療所で相談できます。
- 散布の後ではなく前に、あなたのライセンス区分で何が認められているかを確認してください。
- 部屋全体ではなく、ホットスポットを処理してください。
- 製品名、有効成分、使用量、日付、散布した人、収穫前日数を記録してください。収穫前日数とは、最後の散布から収穫までに空けなければならない最低日数です。
訳者注:タイでは、農業局(กรมวิชาการเกษตร)に登録された農薬だけを、ラベルの記載どおりに使ってください。病害虫防除用として売られている微生物資材については、販売者に農業局の登録番号を確認してください。タイのGACPで合法的に散布できるものも参照してください。
6. 残留農薬検査と医療用サプライチェーン
医療用や輸出用のサプライチェーンに入る花穂は、残留農薬の検査を受けます(大麻の残留農薬参照)。適正農業・採取規範(GACP)の枠組みでは、2つのことが求められます。1つ目は、花穂が該当する薬局方の残留基準値の範囲内に収まっていることです。残留基準値とは、農薬ごとに残っていてよい最大量です。薬局方とは、医薬品の品質基準を定めた公式の書物です。2つ目は、各バッチがどこから来たのかをたどれることです。
残留農薬で不合格になると、バッチ全体が不合格になります。しかも、それがわかるのは栽培費用をすべて使い終えた後です。あなたの見回り記録は、監査員が読む証拠になります。
訳者注:あなたのバッチにどの残留基準値が適用されるかは、買い手か許可当局に確認してください。タイの検査機関については、輸出前の大麻の花穂の検査(後編)を参照してください。
やること:収穫の前に、そのバッチに使ったすべての製品が、収穫前日数とともに記録に載っているかを確認してください。そのページを、バッチの検査結果と一緒に保管します。
あなたの経験
あなたの栽培室で実際にうまくいった方法を、このトピックの下に返信してください。特に役立つのは、東南アジアの暑い環境での捕食性ダニについての投稿です。Phytoseiulus persimilisについて発表されている適応範囲は、4月のタイの栽培室にはまったく当てはまりません。どの種が生き残ったか、どれくらいの量で放したか、生かしておくために何を変えたかを書いてください。うまくいかなかった方法の投稿のほうが、より価値があります。
参考文献
- コネチカット大学(University of Connecticut)の総合的病害虫管理ガイダンス(捕食性ダニの生態、殺虫石けん)。
- カリフォルニア大学(University of California)の総合的病害虫管理資料(Hippodamia convergens、convergent lady beetle)。
- Cornell Cooperative Extension、2022年、ハイトンネルで栽培するCannabis sativaの生物的防除に関するヘンプのフィールドデー配布資料。
- コーネル大学(Cornell)の生物的防除ファクトシート(Beauveria bassiana)。
- Xiao Y. et al. (2012). Amblyseius swirskiiのバンカープラントとしての観賞用トウガラシ、学術誌Biological Control。
- マリーゴールドのチオフェンに関する線虫学の文献。米国農務省(USDA)によるマリーゴールドの害虫リスト。
- 殺虫剤抵抗性対策委員会(Insecticide Resistance Action Committee)、作用機構ローテーションの原則。
- 欧州医薬品庁(European Medicines Agency)、生薬原料の適正農業・採取規範(GACP)に関するガイドライン。
- 市販の天敵販売会社による推奨放飼量。
本記事は、Asiannabis Communityの病害虫管理に関する教育シリーズの一部です。内容は、大麻の栽培が法的に認められている地域での教育を目的としています。