大麻の組織培養とマイクロプロパゲーション:ホップ潜在ウイロイドの除去、自宅ラボ、保存、熱帯での運用(後編)

後編では、大麻栽培者が組織培養を使う最大の理由を取り上げます。それは、ホップ潜在ウイロイド(HLVd)を持たない株をつくることです。あわせて、小さなラボの立ち上げ方、大麻特有の問題、マザープラントなしで栽培品種(カルティバー)を保存する方法、認証を受けた生産、タイの暑さの中での培養室の運用も解説します。ここでいう組織培養とは、小さな植物片を無菌容器に入れ、栄養を含むゲルの上で育てて、同じ性質の株を大量につくる方法です。

本記事は、公表された8件の研究をもとにしています。研究の一覧は「参考文献」にあり、本文の角かっこ内の数字がその番号です。セクション番号が5から始まるのは、前編にセクション1〜4があるためです。前編では、組織培養とは何か、挿し木との違い、培養を左右するホルモン、4つの作業段階とレシピを扱いました。

本記事は後編です。前編:https://asiannabis.com/t/1228

5. ホップ潜在ウイロイドの除去:組織培養を使う最大の理由

ウイロイドとは

HLVdは、病気を引き起こす小さな環状のRNAの鎖です。タンパク質の殻も、自前の遺伝子も持っていません。感染すると株全体に広がります。最初に見つかったのはビールの香りづけに使うホップです。大麻での初報告は2019年で、米国カリフォルニア州の事例が学術誌 Plant Disease に掲載されました [3]。

2023年に学術誌 Viruses に掲載された総説によると、カリフォルニア州の大麻栽培施設の約90%で検査が陽性でした。業界の損失は、年間最大40億米ドルと推定されています [1]。

症状と、症状が出る時期

「潜在(latent)」は「隠れている」という意味です。感染した株の多くは開花期まで正常に見え、開花期に入ってから被害が表に出ます。

  • 生育不良、花房の発達不良、株の小型化 [2]
  • 有柄腺毛トライコーム(大きな樹脂の頭部を持つもの)の減少と、小さく形の悪いトライコームの増加 [2]
  • THC含有量が50〜70%減少し、カンナビノイドとテルペンの生成量が最大50%減少したという報告 [1]
  • 茎がもろくなり、葉が変形することもある

症状が遅れて出るため、マザーは何年も健康に見えることがあります。その間も、そこから取った挿し木はすべてウイロイドを持っています。

やること: 何年も維持してきた品種の背丈が低くなったり、樹脂が減ったりしたら、肥料や照明を変える前に検査を受けてください。

広がり方:多くの栽培者が考えるより経路は多い

Punjaらは、北米の大麻のHLVdを調べた2025年の研究で、4つの感染経路を特定しました [2]。

  1. 挿し木。 感染したマザーから取った挿し木は、すべてウイロイドを持っています。
  2. 養液を循環させる水耕栽培システムでの根どうしの接触。
  3. 茎の傷。 汚染された刃物、トレリスネット、葉かきの作業でできます。
  4. 種子と花粉。 実生苗の最大100%が感染します。

同じ研究では、室温ですりつぶした葉の汁の中では7日間、乾燥した葉や根の中では4週間、ウイロイドが検出され続けました [2]。つまり、種子から始めても安全とは限りません。部屋に残った植物くずも、ウイロイドを残し続けます。

訳者注:タイでは、挿し木を農場どうしで分け合い、循環式システムを使う農場が多いため、経路1と2が重なります。研究でいう室温は、30〜35 °Cになるタイの栽培室とは違います。暑ければ植物くずのウイロイドが早く消えるとは考えず、くずは取り除いてください。購入した挿し木は、検査機関の結果が出るまで「未検査」として扱いましょう。

やること: 刃物は部屋ごとではなく、株ごとに消毒してください。収穫のたびに、葉・根・茎を部屋から片づけましょう。刃物に効く消毒剤は、上でリンクしたHLVdのトピックで確認できます。

挿し木では解決できない理由

HLVdは維管束組織にすみつきます。維管束組織とは、植物の中で水や樹液を運ぶ通り道です。そのため、感染したマザーから取った挿し木はすべてウイロイドを持っています。感染した株を治せる薬剤処理はありません。確実な方法は次のとおりです。

  1. 茎頂分裂組織(メリステム)培養。 メリステムとは、芽の先端にある成長点のことです。まだ維管束組織が届いていないほど小さな外植体(培養に使う植物片、explant)を切り出します。大きさは0.4 mmで、葉原基(将来葉になる小さな突起)が2つ以下のものです。Punjaらの報告では、得られた株のうちHLVd陰性だったのは平均で約41%でした。8つの遺伝子型(品種の遺伝的な構成)の間で、0%から100%まで差がありました [2]。
  2. メリステム培養と高温・低温処理の組み合わせ。 株を36 °Cで14日間置くと、ウイロイド力価(組織中のウイロイドの量)が速やかに下がりました。低温処理(暗所で2〜4 °C、8〜21か月)と小さなメリステムの培養を組み合わせると、どちらか一方だけより効果が高くなりました [1]。

結果は遺伝子型によって変わるため、すべての品種に当てはまる成功率はありません。そのため、メリステム培養で得た小植物(プラントレット)は、1本残らずRT-qPCR検査を受けてください。RT-qPCRは、ウイロイドの遺伝物質を検出する検査機関の検査です。検査が済むまで「クリーン」とは判断できません。増殖に回すのは陰性のものだけです。株がクリーンだと証明するのは、技術ではなく検査です。

系統をクリーンにする手順:メリステム培養と高温・低温処理

公表された結果をまとめると、クリーンにする作業は次の流れになります。

  1. 問題を確認する。 マザーをRT-qPCRで検査し、感染していることを確かめます。
  2. 必要に応じて高温・低温処理を行う。 株を36 °Cで14日間置いて力価を下げるか、上で説明した低温処理を行います [1]。
  3. できるだけ小さな先端を切る。 拡大して見ながら、0.5 mm未満で葉原基が2つ以下のメリステム先端を取ります [1][2]。
  4. 先端を多めに培養する。 残したいクリーン系統1つにつき、10〜20個の先端を培養します(前編のステージ1)。
  5. 小植物をすべて検査する。 サンプルを取れるだけの組織が育ったら検査し、陰性は残して陽性は廃棄します。
  6. 陰性のものだけを増やす。 クリーン系統ごとに、記録上の固有IDを付けます。刃物、根、花粉からウイロイドが戻ることがあるため、クリーンなマザー系統も定期的に再検査してください。

訳者注:36 °Cはタイの暑季の気温に近いですが、暑い部屋に置くことは高温処理にはなりません。総説は36 °Cで14日間保持したと報告していますが、光や湿度の条件は書かれていません。また、圃場に出して6か月後には力価が戻ったとも記しています [1]。温室の温度は毎日上下するため、管理された一定の温度は再現できません。総説の低温処理は、暗所で2〜4 °C、8〜21か月でした [1]。ここで引用した研究に、家庭用冷蔵庫でこの処理を試したものはありません。HLVd検査で確認できていないメリステム培養系統には、「クリーン」ではなく「未検査」と表示してください。

やること: 最初の作業には、価値の高い品種を1つ選んでください。最初の先端を切る前に、検査機関を見つけておきましょう。

6. 自宅に小さな組織培養ラボをつくる

大学の研究室は必要ありません。そろえる機材は多くありません。

品目 用途
ラミナーフローフード(クリーンベンチ)またはスティルエアボックス 汚染させずに容器を開けるための清潔な作業空間
15 PSI対応の圧力鍋 加圧した蒸気で培地を滅菌する
ガラス製またはポリカーボネート製の容器 培養物を入れる
0.01 g単位で量れるはかり 塩類、砂糖、寒天を量る
pHメーター 培地をpH 5.7〜5.8に合わせる
メスとピンセット 組織を切る・移す
MSプレミックス、寒天、ショ糖 培地そのもの
ホルモン:TDZまたはBAP、IBA(BAPのレシピではNAAも) 組織を芽や根の方向へ育てる
70%エタノールと漂白剤 作業面と外植体の洗浄
低光量のLEDライト 培養棚の照明

PSIは「ポンド毎平方インチ」の略で、15 PSIは通常の気圧より約1 bar高い圧力です。価格は国や輸入関税によって大きく違うため、ここでは記載しません。予算を立てる前に、この一覧の価格を地元で調べてください。

訳者注:タイでは、MSプレミックス、寒天、植物ホルモンは実験用の試薬として販売されています。タイ国内の実験用品・植物組織培養用品の正規代理店に問い合わせるか、フォーラムの「組織培養」セクションでメンバーに購入先を聞いてください。製品ごとのデータシートも販売元に求めましょう。データシートには、溶かし方と保存方法が書かれています。

清潔に作業する:スティルエアボックスかラミナーフローフードか

容器を開けるたびに、空気中の胞子や細菌が培地に落ちる可能性があります。培地の糖分がそれらの栄養になり、植物組織より速く増えてしまいます。無菌操作は、それらを入れないための技術です。

ラミナーフローフードは、ろ過した空気を作業面に一定の流れで送る装置です。この空気の流れが、開いた容器から胞子を遠ざけます。

スティルエアボックスは低予算の選択肢です。大きな透明プラスチックの収納ケースを横に倒し、腕を入れる穴を2つ開けてつくります。使うたびに、内側に70%エタノールを吹き付けます。フードより汚染が多くなるため、残したい培養1つにつき、外植体を多めに始めてください。

訳者注:次の基本的な習慣は、どちらの設備でも汚染を減らします。

  • ボックス、器具、すべての容器の外側を、中に入れる前に70%エタノールで拭く。
  • 手と前腕を洗い、手袋をはめて、エタノールを吹き付ける。
  • スティルエアボックスの中ではゆっくり動く。速く動くと空気がかき乱される。
  • 容器はボックスやフードの中でだけ開け、開いた容器の上を手が通らないようにする。
  • 外植体を1つ切るごとにメスを滅菌する。
  • エタノールは燃えやすいため、火やホットプレートから離しておく。

やること: 大麻を切る前に、何も加えない基本培地の容器を10個つくります。本番と同じように、ボックスの中で開け閉めしてみてください。1週間後、濁った容器を数えます。その割合が、あなたの出発点となる汚染率です。

培地のつくり方

  1. MSプレミックスをメーカーの指示どおりに量ります。通常は、全濃度で4.4 g/L、半濃度で2.2 g/Lです。ショ糖を30 g/L加え、蒸留水に溶かします。
  2. ホルモンをストック溶液(1 mg/mL、冷凍保存)から加えます。
  3. pHを5.7〜5.8に合わせます。上げるときは1 Mの水酸化ナトリウム(NaOH)、下げるときは1 Mの塩酸(HCl)を使います。「1 M」は、これらの試薬が一般に販売されている標準的な濃度です。
  4. 寒天を7 g/L加え、溶けるまで加熱しながらかき混ぜます。容器1つに25〜30 mLずつ注ぎます。
  5. オートクレーブか15 PSIの圧力鍋で、121 °C / 15 PSIで15〜20分間滅菌します。
  6. フードかスティルエアボックスの中で冷まし、固めます。

ホルモンのストック溶液。 1 mg/mLのストックは、1 mLあたり1 mgのホルモンを含みます。たとえば、100 mgを溶かして全量を100 mLにしたものです。それぞれのホルモンは、データシートの指示どおりに溶かしてください。このストックを培地1 Lあたり1 mL加えると、濃度は1 mg/Lになります。

培地 ホルモン 1 Lあたりのストック量(1 mg/mLストック)
初代培養 0.5 mg/L BAP + 0.1 mg/L NAA BAP 0.5 mL + NAA 0.1 mL
増殖(BAP) 1.0〜2.0 mg/L BAP + 0.1 mg/L NAA BAP 1〜2 mL + NAA 0.1 mL
増殖(TDZ) 0.5 µM TDZ(約0.11 mg/L) 0.11 mL、または0.1 mg/mLストックなら1.1 mL
発根(半濃度MS、活性炭500 mg/L、サイトカイニンなし) 2.5 µM IBA(約0.5 mg/L) IBA 0.5 mL

保存期間。 容器に注いだ培地は、室温で数週間もちます。密封して冷蔵すれば、さらに長くもちます。使う前に濁った容器は、すべて捨ててください。

訳者注:家庭用の圧力鍋の多くは15 PSIに達しないため、メーカーの定格を確認してください。15 PSI未満では蒸気が121 °Cに届かず、培地が無菌にならないおそれがあります。タイの部屋は温帯の研究室より暖かいため、保存している培地はこまめに確認しましょう。

やること: 培地の容器すべてに、日付、レシピ、バッチ番号を書いておきましょう。培養が失敗したとき、どのバッチだったかをたどれます。

7. 大麻特有の問題

褐変

大麻の組織を切ると、フェノール化合物が出ます。これは植物が持つ天然の化学物質で、空気と反応すると茶色くなります。褐変すると生育が遅れ、外植体が枯れることもあります。褐変を減らす方法は4つあります。

  • 初代培養の培地に活性炭(1〜2 g/L)を加える。活性炭は一部のホルモンも吸着するため、ホルモン量の調整が必要になる場合があります。
  • 最初の24〜48時間以内に、外植体を新しい培地へ移す。
  • アスコルビン酸(ビタミンC)やクエン酸などの抗酸化剤を使う。本記事のもとになった研究には用量が書かれていません。公表されている組織培養のレシピから始め、少数の外植体で試してください。
  • 傷口が空気に触れる時間をできるだけ短くするため、素早く切る。

やること: 褐変する外植体が多い場合は、次のバッチで2つの点を変えてください。活性炭を加えることと、24〜48時間以内に移すことです。そのうえで、前のバッチと結果を比べましょう。

ガラス化した芽(水浸状化、hyperhydricity)

芽の先端が透き通り、膨らんで、ガラスのようになる現象です。ガラス化(vitrification)とも呼ばれます。大麻では、培養が衰える現象の一つとして記録されています。Monthonyらによる2021年の総説では、0.5 µM TDZを加えたMS培地で特にこの現象が見られたと書かれています [4]。この用量は、増殖がよく進む用量と同じです。そのため、TDZを使うときは注意して観察してください。

原因:サイトカイニン(芽の形成を促すホルモン)の過剰、密閉容器にこもった湿気、塩類濃度の高さ。

対策:

  • サイトカイニンの用量を下げる。
  • 通気性のあるふたや、小さな通気口が付いた容器に替える。
  • 寒天を8〜9 g/Lに増やし、培地の表面を乾き気味にする。
  • 1サイクルだけ、TDZをBAPに替える。

訳者注:湿度の高い熱帯の部屋では、すき間が開いたままの通気口ではなく、フィルター膜で覆われた通気口を選んでください。胞子が入るのを防げます。

やること: 一度に変える条件は1つだけにしましょう。どの変更で問題が解決したかがわかります。

遺伝的な安定性:カルスを避ける理由

新しい芽は、すでにある芽から直接伸ばすことができます。これを「芽から芽へ」の増殖、または直接器官形成と呼びます。この方法では通常、突然変異が少なく、マザーと同じ性質の株が得られます [4]。カルス(まとまりのない細胞の塊)を経由する方法はこれとは違い、大麻では成功も安定しません。総説で取り上げた研究では、カルスからの再生率は低いもので1.35%、最もよい処理でも14%でした [4]。

つまり、カルスには遺伝的なリスクがあり、成功する見込みも非常に低いのです。どちらの理由からも、同じルールが導かれます。

  • カルスを経由した再生ではなく、直接器官形成を使う。
  • サイトカイニンは、効果が出る最低の用量にとどめる。
  • 目に見える形質(表現型)を比べるか、DNAマーカーを使って、定期的に品種が同じかどうかを確認する。

Lataらは、カプセル化して保存した材料から再生した株が元の株と一致することを、DNA分析で示しました [8]。つまり、この確認は文献に記録された手法であり、用心しすぎではありません。

訳者注:大麻の品種が同じかどうかをDNAマーカーで調べる検査を公に提供しているタイの検査機関は、私たちが調べた範囲では見つかりませんでした。見つかるまでは、形質で比べてください。培養系統の株1本と元のマザーの株1本を、同じ条件で並べて育てます。草丈、開花までの期間、香りを記録し、写真も撮ります。両方の株の分析証明書(COA)があれば、成分の比較もできます。

やること: 数サイクルごとに、各培養系統から1株を選び、比較用の基準株と並べて育ててください。

8. カプセル化種子と低成長保存

組織培養の特に役立つ使い道の一つが、生きたマザープラントなしで品種を維持することです。

カプセル化種子(「人工種子」)

茎の切片や芽の先端を、アルギン酸ナトリウムのビーズに封じ込めます。アルギン酸ナトリウムは、栄養分を加えた海藻由来のゲルです。米国ミシシッピ大学の研究チームであるLataらが、2012年にこの方法を試しました [7]。カプセル化した大麻の茎切片を15 °Cで最長24週間保存したところ、再生率・生存率は最大で60%でした。

再生した株は、順化の期間の生存率が90%で、カンナビノイドの組成も元の株と一致しました [7]。2011年の別の研究では、保存したカプセル化種子から育った株が遺伝的に元の株と同じであることを、DNA分析で確認しています [8]。

数字はそのとおりに受け止めてください。保存期間は年単位ではなく24週間で、生存率は60%です。カプセル化は、マザー室なしで品種を1シーズン維持するための実用的な方法です。植物の遺伝資源を長期保存する施設であるジーンバンクの代わりにはなりません。

低成長保存

ビーズを使わずに培養物を保存することもできます。温度を低めにして成長を遅らせ、継代培養の回数を減らす方法です。同じ研究では、カプセル化していない培養物の一部に浸透圧調整剤(マンニトールまたはソルビトール)を加えました [7]。浸透圧調整剤とは、培地に加えて水の吸収を抑え、成長を遅らせる物質です。その中では、試した最も低い濃度である2%で、再生率と生存率が最も高くなりました [7]。

やること: 研究室の条件でも、保存したビーズの約40%は枯れました。そのため、品種ごとに必要な数の数倍のビーズや容器を保存してください。かけがえのない品種は、生きた株も予備として残しましょう。15 °Cを保つための機材は、セクション10で説明します。

9. 認証を受けた医療グレード生産での組織培養

医薬品市場を目指す農場もあります。たとえば、EU-GMP基準を求める買い手向けの生産や、タイFDA(タイ食品医薬品局)を通じた輸出です。そうした農場にとって、組織培養は挿し木では得にくい記録を残せる方法です。この記録が、GACP(適正農業・採取規範)やGMPの監査の裏づけになります。

  • 出発材料がはっきりしている: すべてのバッチを、病原体検査済みの特定のマザー培養までたどれる。
  • 均一なバッチ:品質管理が簡単になる。
  • 病原体を除去した記録: メリステム培養と、その後の確認用RT-qPCR検査。
  • 監査用の記録: すべての継代培養を、日付、培地の組成、作業者とともに記録する。

訳者注:タイでは、大麻の花穂は保健省告示「規制ハーブ(大麻)」仏暦2568年に基づく規制ハーブです。この告示は2025年6月26日から施行されています。2026年4月30日からは、規制ハーブに関する省令(第2号)仏暦2569年によって、花穂の許可基準が厳しくなりました。大麻管理法案(Cannabis Control Act)は、まだ法律ではありません。2026年9月22日に閣議で承認され、下院に送られた段階です。大麻の小植物を生産・譲渡するのに別の許可が必要かどうかは、本記事では扱いません。小植物を他の農場に販売・譲渡する前に、あなたの許可証を発行した当局に書面で問い合わせてください。

やること: 小さなラボでも、今のうちに記録簿をつくりましょう。列は、日付、品種、マザーID、培地バッチ、ホルモン用量、作業者、入れた芽と取り出した芽の数、汚染、検査結果です。

10. 熱帯気候で培養室を運用する

公表されている方法の多くは、より涼しい気候の研究室で生まれたものです。タイや東南アジア全域では、次の3つの調整が重要です。

  • まず室温を管理する。 培養物は24〜26 °Cで管理しますが、屋外の気温はふだんからそれより高くなります。そのため、培養室には常時運転する専用のエアコンと、停電時の対策が必要です。25 °Cなら24時間もつ培養物でも、34 °Cでは24時間もたないことがあります。停電するとエアコンが止まり、室温が屋外の気温に近づいて、培養物が高温になりすぎます。
  • 空気中のカビの胞子が多いと考える。 乾燥した涼しい部屋では問題なく使えるスティルエアボックスも、湿度の高い部屋では汚染が増えます。いちばん清潔で、人の出入りが少ない部屋で作業してください。作業の合間はボックスを閉じておき、外国のレシピが示すより多くの外植体を始めましょう。
  • 15 °Cでの保存には専用の機材が必要。 家庭用冷蔵庫の温度は4 °C前後です。15 °Cを安定して保つには、ワインセラーか温度管理のできるキャビネットが必要です。24週間の保存を計画に入れる前に、その費用を予算に入れてください。

訳者注:作業する地域で停電が多い場合は、エアコンを動かせる発電機かバッテリーの予備電源を検討してください。最高温度を記録できる温度計があれば、停電中に室温がどこまで上がったかがわかります。湿度は雨季に最も高くなるため、その時期は外植体を多めに始めましょう。

やること: 培養を始める前の2週間、培養室の温度を1日2回記録してください。冷房で24〜26 °Cを保てるかどうかがわかります。

11. 組織培養をする価値がない場合

  • 家庭での小規模栽培(1サイクル1〜10株): 挿し木のほうが速く、安く、機材も要りません。組織培養の利点は、規模が大きいほど大きくなります。
  • オートフラワー: マザーとして維持できません。培養すること自体はできますが、日常的に増やす方法としては実用的ではありません。
  • 種子からの1回限りの栽培: 遺伝資源を残さないなら、組織培養は手間が増えるだけで利点はありません。
  • 予算が限られている場合: 機材費と習得にかかる時間が見合うのは、1サイクルに多くのクローンが必要な場合か、病原体のない材料が本当に必要な場合だけです。

訳者注:タイの家庭栽培者の多くは、もっと安い方法でほぼ同じリスクに対処できます。事前に確認した販売業者から種子を買いましょう。種子もHLVdを持っていることがあるため、できれば検査してください。検査済みのマザーを1株維持し、刃物は株ごとに消毒し、購入した挿し木は隔離します。

やること: 1サイクルに取るクローンの数と、ウイロイドなどの病気が疑われて失った株の数を数えてください。どちらも少なければ、挿し木を続けましょう。

12. 始め方:実践プラン

1〜2か月目。 ポトスやセントポーリア(アフリカスミレ)など、安くて失敗に強い植物で無菌操作を練習します。スティルエアボックスを自作するか購入します。MS培地をつくり、滅菌の練習をします。大麻の組織を使う前に、汚染の防ぎ方を身につけることが目的です。

2〜3か月目。 健康で検査済みのマザーの茎切片から、最初の大麻の培養を始めます。必要な数よりずっと多く始め、多くを失うことを覚悟しておきます。正常な生育と汚染を見分けられるようになりましょう。

3〜6か月目。 生き残ったものを継代培養します。あなたの品種に合わせて、サイトカイニンの用量を調整します。これは、公表されたレシピでは代わりにできない作業です。発根と順化の試験を始めます。

6か月目以降。 メリステム先端培養でウイロイドを除去し、各系統をRT-qPCRで確認します。品種ごとに、数サイクルにわたって増殖率と衰退率を記録します。そのうえで、自分の数字をもとに標準作業手順書(手順を一つずつ書き出した作業マニュアル)をつくります。

訳者注:ポトスはタイや東南アジアでよく見かける観葉植物なので、練習用の材料は簡単に手に入ります。

組織培養は、挿し木より習得に時間がかかります。その代わり、規模の大きい栽培者は、ウイロイドのない系統、大量増殖、マザー室なしでの数か月間の保存という成果を得られます。

やること: 1〜2か月目の作業を今すぐカレンダーに入れ、その段階に必要な機材だけを購入してください。


大麻の組織培養を試したことがある方は、このトピックの下に投稿してください。いちばん困った問題(汚染、順化、そのほか)とあわせて、品種、培地のレシピ、数を書いてください。質問も歓迎します。

参考文献

  1. Adkar-Purushothama, C.R., Sano, T., & Perreault, J.-P. (2023). Hop latent viroid: A hidden threat to the cannabis industry. Viruses, 15(3), 681.
  2. Punja, Z.K., Scott, C., Tso, H.H., Munz, J., & Buirs, L. (2025). Transmission, spread, longevity and management of hop latent viroid, a widespread and destructive pathogen affecting cannabis (Cannabis sativa L.) plants in North America. Plants, 14(5), 830.
  3. Bektaş, A., Hardwick, K.M., Waterman, K., & Kristof, J. (2019). Occurrence of hop latent viroid in Cannabis sativa with symptoms of cannabis stunting disease in California. Plant Disease, 103(10), 2699.
  4. Monthony, A.S., Page, S.R., Hesami, M., & Jones, A.M.P. (2021). The past, present and future of Cannabis sativa tissue culture. Plants, 10(1), 185.
  5. Murashige, T., & Skoog, F. (1962). A revised medium for rapid growth and bio assays with tobacco tissue cultures. Physiologia Plantarum, 15(3), 473–497.
  6. Lata, H., Chandra, S., Khan, I.A., & ElSohly, M.A. (2009). Thidiazuron-induced high-frequency direct shoot organogenesis of Cannabis sativa L. In Vitro Cellular & Developmental Biology – Plant, 45(1), 12–19.
  7. Lata, H., Chandra, S., Mehmedic, Z., Khan, I.A., & ElSohly, M.A. (2012). In vitro germplasm conservation of high Δ9-tetrahydrocannabinol yielding elite clones of Cannabis sativa L. under slow growth conditions. Acta Physiologiae Plantarum, 34(2), 743–750. https://doi.org/10.1007/s11738-011-0874-x
  8. Lata, H., Chandra, S., Techen, N., Khan, I.A., & ElSohly, M.A. (2011). Molecular analysis of genetic fidelity in Cannabis sativa L. plants grown from synthetic (encapsulated) seeds following in vitro storage. Biotechnology Letters, 33(12), 2503–2508.

本記事は、Asiannabis Communityの教育シリーズの一部です。大麻の栽培が認められている地域で、合法的な教育目的にのみご利用ください。