大麻の分析証明書 (COA) の読み方:汚染物質の検査、細かな記載、警告サイン、タイの状況(後編)

分析証明書 (COA) は、ある1日に検査した1つのサンプルについて、検査機関がまとめた報告書です。一見問題がなさそうな証明書でも、問題が隠れていることがあります。たとえば検査項目が少ない、日付が古い、結果が基準値ぎりぎりといった問題です。後編では、まずフルパネル(全項目検査)に含まれる汚染物質の検査を説明します。続いて、証明書を1行ずつ読む方法と警告サインを取り上げ、最後にタイの生産者にとっての意味をまとめます。

本記事は後編です。前編:https://asiannabis.com/t/1318

1. テルペンプロファイル分析

テルペンは植物の香り成分です(詳しくは大麻のテルペンをご覧ください)。カンナビノイド酸と違って、テルペンはガスクロマトグラフの高温の注入口を通っても分解しません。そのため、ガスクロマトグラフィー (GC) での分析に向いています。水素炎イオン化検出器を使うGC-FIDは、各テルペンの量を測ります。質量分析計を使うGC-MSは、既知のスペクトルのライブラリと照合して、各テルペンが何かを特定します。

テルペンの数値は、おおよその値(「半定量」)として読んでください。これはここで引用している研究の知見ではなく、検査機関で一般的な考え方です。正確な数値を出すには、成分ごとに認証標準物質が必要になるからです。また、テルペンは揮発しやすいため、乾燥、キュアリング、保管の間に一部が失われます。

検査機関によって結果が違う理由

調べるテルペンの数(リストの長さ)は、検査機関ごとに違います。ある報告書に載っていない成分は、単にそもそも調べていなかっただけかもしれません。サンプルの前処理、標準物質、検体の古さも検査機関ごとに異なります。

「総テルペン」の数値は、その検査機関が調べた成分だけを足し合わせたものです。そのため、2つの検査機関の総テルペン値は、それぞれ別の問いに答えていることになります。

やること: テルペンの結果を比べるときは、同じ検査機関で、同じくらいの古さの検体について、同じ成分どうしを比べてください。目的は、検査リストの違いではなく、バッチ間の本当の違いを見ることです。

2. 重金属

検査機関は通常、鉛、カドミウム、ヒ素、水銀を検査します。管轄地域によっては、クロムやニッケルが加わります。この基本リストは一般的な慣行で、実際のリストと基準値は各管轄地域が独自に定めています。Montoyaらの論文(2020年)によると、コロラド州とカリフォルニア州は重金属検査を義務づけています。ただし、どこでも義務というわけではありません。

同じ著者らは、大麻は金属を高濃度でため込む「超集積植物」だと述べています。土壌から金属を吸い上げて、植物全体の組織に蓄えるという意味です。そのため大麻は、汚染された土壌を浄化する手段としても研究されてきました。著者らは、ハワイの火山性土壌で育った大麻から、乾燥重量1グラムあたり最大440ナノグラムの水銀が検出されたと報告しています。一般的な検査法は誘導結合プラズマ質量分析法 (ICP-MS) で、個々の元素をごく低い濃度まで測定できます。

やること: 畑の土で栽培する場合や、以前の使われ方がわからない土地を使う場合は、土壌と最初の収穫物の重金属を検査してください。植物は土に含まれるものをそのまま取り込みます。目的は、バイヤーに見つかる前に自分で把握することです。

3. 残留農薬

農薬検査は、対象を絞ったリスト方式です。装置はリストにある成分だけを探すので、それ以外は見えません。「問題なし」という結果は、リストにある成分がどれも検査機関の報告下限値を超えなかった、という意味でしかありません。

リストを作るときの出発点はさまざまです。現地で登録されている農薬、過去の適合検査で不合格になった成分、食用作物のリストの流用などがあります。Montoyaらは、米国には大麻への農薬使用について、連邦の環境当局のガイドラインがないと指摘しています。そのため米国の検査機関は、出発点となる公式の残留農薬リストを持っていないことが多いのです。

汚染実態調査でわかったこと

結果 地域 報告者
サンプルの84%から、殺虫剤、殺菌剤、成長調整剤を含む最大24種類の薬剤を検出 米国ワシントン州、26サンプル Montoyaら、2020年
49%から、観賞用植物専用の農薬を検出。アバメクチン(abamectin)やビフェナゼート(bifenazate)など カリフォルニア州の販売店(ディスペンサリー) Montoyaら、2020年
繰り返し検出された成分:ミクロブタニル(myclobutanil)、イマザリル(imazalil)、ダミノジッド(daminozide)、パクロブトラゾール(paclobutrazol) 複数の地域 Montoyaら、2020年

やること: 検査機関に農薬リストの全体を出してもらい、農場で散布した製品がすべて載っているか確認してください。目的は、「問題なし」が「実際に使ったものを調べた結果」であって、「別のものを調べた結果」ではないと確かめることです。

訳者注:タイでは、農業局(กรมวิชาการเกษตร)に登録された農薬だけを、ラベルの記載どおりに使ってください。散布記録には、製品名、日付、使用量を残しましょう。この記録があれば、何を調べるべきかを検査機関に伝えられます。審査員からも提出を求められます。詳しくは大麻の残留農薬とタイのGACPで大麻に合法的に散布できるものをご覧ください。

4. 微生物検査

微生物検査の結果には2種類あります。1つは菌数で、1グラムあたりの生きた微生物の数を推定します。単位は1グラムあたりのコロニー形成単位 (CFU/g) です。1つの「コロニー」は、検査用の培地の上で、ほぼ1個の生きた細胞から増えたものです。もう1つは特定対象菌で、数にかかわらず検出されてはならない微生物です。慣例では、大腸菌群(衛生管理が悪いことを示す指標)、大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ属菌(Salmonella)がこれにあたります。

この分け方は一般的な慣行で、実際のリストと基準値は各管轄地域が独自に定めています。Gwinnら(Frontiers in Microbiology、2023年)は、分子的手法のほうが培地で微生物を育てる方法より感度も特異性も高いと指摘しています。分子的手法の例が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR、DNAを調べる検査)です。ただしPCRは、対象リストにないAspergillus属の種にも反応することがあります。死んだ菌体を検出してしまうこともあります。

「総酵母・カビ数」が議論になる理由

Gwinnらは、害を起こした例があるかどうかに関係なく酵母とカビをすべて数えても、健康リスクはわからないと主張しています。1つの数値の中に、無害な真菌と問題になる真菌が混ざってしまうからです。

著者らによると、米国のアクションリミット(不合格になる基準値)は10,000〜100,000 CFU/gで、10倍の開きがあります。また、大麻を喫煙する人に起きたアスペルギルス症の症例報告7件をまとめたレビューも引用しています。

やること: 証明書の総酵母・カビ数が高い場合は、特定のAspergillus属の種も検査したかどうかを検査機関に確認してください。目的は、無害な高い数値と本当の健康リスクを区別することです。

5. カビ毒(マイコトキシン)

カビ毒(マイコトキシン)は、カビがつくる毒素です。カビが死んだ後も、毒素は材料に残ります。微生物検査だけでは不十分なのはこのためです。

アフラトキシンは主にAspergillus flavusとAspergillus parasiticusがつくる毒素で、B1、B2、G1、G2の4種類があります。知られている物質の中でも特に発がん性が高く、肝臓がんなどの原因になります。米国食品医薬品局のアクションレベルは、品目によって20〜300 ppb(10億分の1)とされています。検査機関は、高速液体クロマトグラフィー (HPLC) や、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法 (LC-MS/MS) で検出します。Gwinnらは、別のカビ毒であるオクラトキシンAにさらされると、腎臓に障害が出ることがあるとも指摘しています。

調査でわかったこと

Gwinnらの報告では、カリフォルニア州で花穂5,654サンプルを適合検査した結果、アフラトキシンが基準値を超えたのは1サンプルでした。2020年と2021年に検査されたカリフォルニア州の合法サンプル9,000件以上では、オクラトキシンAは検出されませんでした。

違法市場では状況が違いました。ルクセンブルクの違法サンプル142件では、樹脂サンプルの39%、乾燥植物(ハーブ)サンプルの27%からオクラトキシンAが見つかりました。規制もまちまちです。米国には、一切認めない(ゼロトレランス)州もあれば、基準値をまったく設けていない州もあります。カナダと欧州連合は、欧州薬局方のガイドラインを基準にしています。

患者にとって特に重要な理由

アフラトキシンB1は、免疫系を弱めることがあります。HIVとともに生きる人では、曝露がウイルス量の増加と関連しています。健康な大人なら体内で処理できる量でも、すでに免疫が弱っている人には深刻なリスクになりえます。そのため、カビ毒の検査は医療用のサプライチェーンで特に重要です。

やること: 医療用の材料を供給する場合は、すべてのバッチの証明書に、微生物数だけでなくアフラトキシンとオクラトキシンAの結果が入っているか確認してください。目的は、最もリスクの高い患者を守り、医療分野のバイヤーが求める条件を満たすことです。

6. 残留溶剤

これは抽出物向けの検査で、花穂向けではありません。溶剤に一度も触れていない花穂に、溶剤が含まれることはないからです。通常はヘッドスペース・ガスクロマトグラフィーで検査します。密閉したバイアル(小瓶)の中でサンプルを温め、上の空間(「ヘッドスペース」)にたまった蒸気を装置が採って分析する方法です。

「問題なし」の結果は、その検査機関のリストにある溶剤が、報告下限値を超える濃度では検出されなかったという意味でしかありません。溶剤が使われなかったことの証明にはなりません。リストにない溶剤については、何もわかりません。

やること: 抽出物をつくる場合や買う場合は、製造で使った溶剤がすべて証明書のリストに載っているか確認してください。目的は、実際の製造工程を検査がカバーしていたかを確かめることです。

7. 水分活性と水分含有率

水分含有率は、材料に含まれる水の総重量です。水分活性 (aw) は、その水を微生物がどれだけ使いやすいかを0〜1の尺度で表したものです。Gwinnらによると、ほとんどの真菌は水分活性0.83〜0.99で最もよく増え、0.7未満では増殖できません。ただし、AspergillusとPenicilliumは0.62〜0.7の範囲でも生き残ることがあります。

証明書の中で、これから先のことを予測できる数値は水分活性だけです。ほかの結果は、すべて過去の状態を示しています。水分活性からは、保管中に微生物が増えられるかどうかを予測できます。

やること: 梱包するときと販売する前に、水分活性を測ってください。目的は、今の保管方法でカビの増殖が止まったままになっているかを知ることです。詳しくは収穫を台無しにしない大麻の乾燥をご覧ください。

訳者注:タイの多くの地域では、雨季の室内は暑く(30〜35 °C)、湿度がとても高くなります。ふたを開けた容器や密閉の甘い容器に入れた乾燥花穂は、空気中の水分を吸います。そのため、検査した後に水分活性が上がります。梱包時に安全な数値だった証明書があっても、数か月後も同じ数値だという保証にはなりません。密閉容器に入れて涼しい場所で保管し、雨季をまたいで保管したバッチは測り直してください。

8. 異物と外観検査

目で見たり低倍率で拡大したりして、入っていてはならないものがないかを調べる検査です。たとえば、虫の体の一部や糞、目に見えるカビ、毛髪、土、砂、プラスチック、金属、余分な茎などです。欧州医薬品庁のGACPガイドラインは、植物材料を検査し、必要ならふるいにかけることを求めています。ここで不合格になる場合は、たいてい取り扱いか保管に問題があります。

やること: サンプルを採る前に各バッチをルーペで確認し、取り除いたものを記録してください。目的は、検査で不合格になる前に、農場での取り扱いの問題を直すことです。

9. 証明書そのものの読み方

識別情報、日付、対象範囲

  • 証明書のバッチ番号が、包装の番号と完全に一致しているか確認します。
  • バッチ番号とは別に、サンプル番号があるか確認します。
  • 誰がいつサンプルを採ったかが、証明書に書かれているか確認します。
  • サンプリング日、検査機関の受領日、発行日を確認します。間が長く空いていると、揮発するテルペンや、時間とともに変わる微生物数に影響します。

証明書が何を対象にしているかも確認してください。カンナビノイド含有量(ポテンシー)だけを測った証明書は、汚染については何も示していません。花穂の証明書は、その花穂からつくった抽出物には当てはまりません。

検出限界と定量限界

検出限界 (LOD) は、その方法で「物質がある」と確実に言える最も低い濃度です。定量限界 (LOQ) はそれより高い濃度で、「どれだけあるか」まで言える水準です。「不検出」と「LOQ未満」は意味が違い、どちらもゼロという意味ではありません。

「合格」の表示ではわからないこと

アクションリミット(不合格になる水準)を決めるのは、検査機関ではなく規制当局です。管轄地域によって値も異なります。どこの基準値を当てはめたのかは、証明書に書かれているべきです。合格マークの横に数値があるときは、その数値を読んでください。基準値の95%の結果も、2%の結果も、同じように「合格」と表示されます。

証明書の警告サイン

警告サイン どう見えるか なぜ問題か
認定情報がない 認定機関、認定番号、認定範囲の記載がない 検査機関に能力があることを示すものが何もない
ロット違い バッチ番号が包装と一致しない 別の材料についての証明書である
古い証明書 材料を受け取るずっと前に発行されている 微生物数や水分活性は時間とともに変わる
1つのバッチだけを選んで検査 1枚の証明書を複数のロットで使い回している 検査されていない材料まで保証してしまう
検査機関の使い分け(ラボショッピング) カンナビノイド含有量はある検査機関、汚染物質は別の検査機関 結果をそのまま報告せず、都合のよいものを選んでいる
合格マークだけ 数値も基準値もなく「合格」とだけある 結果が基準値にどれだけ近かったかがわからない

やること: 購入契約や販売契約に署名する前に、すべての証明書をこの表でチェックしてください。目的は、目の前の材料についての証明書になっていないものを見抜くことです。

10. タイの状況

元記事では、次のような経緯が説明されています。タイは2018年に、アジアで初めて医療用大麻を合法化しました。2022年6月には、大麻の花穂が麻薬のリストから外れました。一方、テトラヒドロカンナビノール (THC) を重量比で0.2%を超えて含む抽出物は、引き続き麻薬法の規制を受け、許可が必要でした。

現在のルールは次のとおりです。大麻の花穂(ช่อดอกกัญชา)は、保健省告示「規制ハーブ(大麻)」仏暦2568年によって規制ハーブとされています。この告示はタイ伝統医療知識保護法 仏暦2542年(1999年)に基づくもので、2025年6月26日から施行されています。花穂を販売できるのはPT 33(ภ.ท.33)処方箋がある場合だけで、最長30日分までです。花穂の広告とオンライン販売は禁止されています。2026年4月30日に施行された規制ハーブに関する省令(第2号)仏暦2569年では、大麻の花穂の許可基準が厳しくなりました。

法律事務所Tilleke & Gibbinsの報告によると、販売や輸出をする大麻の花穂は、適正農業・採取規範 (GACP) の認証を受けた施設のものでなければなりません。審査では、土壌、水、農薬の使い方、作業者の衛生、収穫後の取り扱いが確認されます。認証の有効期間は1〜3年で、毎年サーベイランス審査があります。求められる記録には、種子の由来、投入資材の記録、品質管理検査の結果が含まれます。

大事なのは、この最後の項目です。タイでは、検査は栽培認証の一部に組み込まれています。消費者のために別に設けられた要件ではありません。

やること: すべての証明書を、そのバッチの農場記録(種子の由来、投入資材、散布、収穫日と乾燥日)と一緒に保管してください。目的は、植物から検査結果までの記録を、途切れずに審査員に示せるようにすることです。

輸出に必要なこと

海外に販売する生産者は、タイの検査項目ではなく、輸出先市場の検査項目を満たさなければなりません。具体的には次のとおりです。

  1. ISO/IEC 17025の認定を受けた検査機関。輸出先が求める物質が、その認定範囲に含まれている必要があります。
  2. 輸出先市場の農薬リスト。現地のリストよりはるかに長いことがあります。
  3. 汚染物質の結果を、その市場のアクションリミットと比較すること。その基準値も証明書に記載されている必要があります。
  4. 第三者によるサンプリングの記録。輸入国の規制当局から、誰がサンプルを採ったのか問われるからです。
  5. 保存サンプルと、書面にした再検査の方針。

詳しくは輸出前の大麻の花穂の検査をご覧ください。

訳者注:輸出契約に署名する前に、必要な検査、基準値、検査機関の認定をバイヤーに書面で確認してください。次に、それらがすべて認定範囲に入っているかを、タイの検査機関に問い合わせてください。入っていない場合は、2つ目の検査機関が必要になります。その費用と時間は、収穫後ではなく収穫前に計画しておきましょう。

わかりにくい証明書を共有しましょう

このトピックの下に証明書を投稿してください。投稿する前に、生産者名と検査機関名を黒く塗りつぶしてください。そのうえで、どこがわからないのかを書いてください。たとえば、合計が合っているか、同じバッチなのに2つの検査機関で結果が違うのはなぜか、販売先の市場にしては検査リストが短すぎないか、といった点です。実際の書類を一緒に読むのが、意味のある証明書と、それらしく見えるだけの証明書を見分ける一番の近道です。

参考文献

  • California Department of Cannabis Control(カリフォルニア州大麻管理局):検査機関の許可、ISO/IEC 17025の要件、必須の検査区分、流通業者向けの代表サンプリングのチェックリスト。
  • European Medicines Agency(欧州医薬品庁). Guideline on Good Agricultural and Collection Practice (GACP) for starting materials of herbal origin, EMA/HMPC/246816/2005 Rev. 1.
  • Giordanoら. Scientific Reports, 2025(HPLCによる、コロラド州の大麻製品277点の表示の正確さ)。
  • Montoyaら. Frontiers in Pharmacology, 2020(CBD表示の正確さ、重金属、農薬汚染)。
  • Gwinnら. Frontiers in Microbiology, 2023(微生物検査、総酵母・カビ数、カビ毒、水分活性)。
  • Tilleke & Gibbins. タイの保健省告示「規制ハーブ(大麻)」仏暦2568年およびGACP要件の概要。

本記事は、栽培基準・検査・輸出に関するAsiannabis Communityの教育シリーズの一部です。一般的な情報であり、法律上・規制上の助言ではありません。内容は、大麻が法的に認められている地域での教育を目的としています。