タイにおける営業許可の停止と取消:不服申立て、違反の繰り返し、事業を続けるための備え(後編)

この記事では、タイで許可を受けた大麻事業者に査察官が違反を見つけた後、何が起きるかを解説します。命令が出るまでの流れ、不服申立て、違反の繰り返し、在庫と患者の扱い、許可停止にかかる費用を取り上げます。予防策、刑事手続、許可取消後の対応についても説明します。

前編では、罰則の段階を説明しました。根拠は、タイ伝統・代替医療局(DTAM)が2026年6月22日に出したガイドラインです。DTAMは規制ハーブの許可を担当する部局です。違反の種類によって、30日間の許可停止、90日間の許可停止、即時の許可取消のどれかになります。この記事の最後に、優先して対処すべきことを短いリストにまとめています。

本記事は後編です。前編:https://asiannabis.com/t/1295

違反の指摘から最終命令まで

「タイ伝統医療知識の保護・振興法」仏暦2542年(1999年)には、違反の指摘から命令までの期限は決められていません。仏暦2569年省令第2号にも決まりはありません。省令第2号(官報、2026年4月30日)が変えたのは、許可の基準と更新のルールだけです。

一般的な原則は、行政手続法 仏暦2539年 第30条にあります。あなたの権利に影響する命令を出す前に、当局はあなたに事実を知る公正な機会を与えなければなりません。証拠を示して反論する機会も与える必要があります。ただし、緊急の場合など、限られた例外があります。

通常の流れは次のとおりです。

  1. 査察官が違反の内容を記録します。 このとき説明を求められることがあります。
  2. あなたが回答します。 すぐに書面で回答してください。指摘に関係するPT 27(在庫記録)、PT 28(定期報告)、PT 33(処方)の記録の写しを付けます。
  3. 罰則が決まります。 期間は、2026年6月のガイドラインで違反の種類ごとに決められた30日または90日です。1999年法第52条により、1回の命令の上限は90日です。公表されている条文には、許可停止の代わりに書面で誓約すれば済むという規定はありません。
  4. 命令は書面で届きます。 あなたが見つからない場合や受け取りを拒んだ場合は、許可を受けた施設に命令が貼り出されます。貼り出された日に受け取ったものとみなされます(第55条)。
  5. 不服申立て(อุทธรณ์)ができます。 申立て先は、1999年法に基づいて設置された「タイ伝統医療知識保護・振興委員会」(คณะกรรมการคุ้มครองและส่งเสริมภูมิปัญญาการแพทย์แผนไทย)です。期限は通知を受けてから30日以内です(第70条)。不服申立てをしても、許可停止や取消の効力は止まりません。行政段階では、委員会の決定が最終となります(第71条)。
  6. 最後の手段は行政裁判所です。 訴訟は通常90日以内に起こします(「行政裁判所設置及び行政裁判手続法」仏暦2542年 第49条)。

訳者注:施設に貼り出された命令は、店が閉まっていてもその日に受け取ったものとみなされます。案件が終わるまでは、毎日だれかに施設を確認してもらいましょう。命令はタイ語で書かれています。管理者がタイ語を読めない場合は、書類が届いたその日のうちに、弁護士か信頼できるタイ語のわかるスタッフに読んでもらってください。

やること:公的な書類が届いたら、届いた日付を書き留めます。その日のうちに、30日の不服申立て期限と90日の提訴期限を計算しておきます。

不服申立て:通りやすい主張と通りにくい主張

許可停止や取消に対する不服申立てでは、「罰則が重すぎる」と主張するだけでなく、手続上の問題を理由にすることもできます。手続上の問題とは、権限のない査察官による査察、通知の不備、決められた手続が守られていないことなどです。

手続上の問題の例:

  • 正式な身分証明や任命が必要な場面で、それがないまま査察が行われた。
  • 指摘の根拠になった書類が、後に第三者による偽造だとわかった。
  • 命令が出る前に、法律で決められた反論の機会が与えられなかった。

一方、「そのルールを知らなかった」「違反は軽かった」「もう直した」という主張は、ほとんど通りません。こうした主張は、刑事事件では罰を軽くする材料になることがあります。しかし、正しく出された行政命令を取り消させることはできません。

不服申立てをしても命令は止まらないので、時間稼ぎにはなりません。30日間を使って法令順守の不備を解消し、直した内容を一つずつ記録してください。そうすれば、不服申立ての書類で「問題はすでに解決している」と示せます。

やること:査察のたびに、査察官の名前、身分証明の内容、提示を求められた書類をすべて記録します。手続上の不服申立ては、この記録をもとに組み立てます。

違反の繰り返し

ガイドラインについての報道によると、すでに許可停止を受けた事業者が同じ違反を繰り返した場合は、即時の許可取消が検討されます。許可停止の後に別の違反をした場合は、前回より重い罰則になります。

更新に関するルールもあります。DTAMの手引きの説明では、仏暦2569年省令第2号のもとで、規制ハーブ(大麻)に関する保健省告示に違反して停止を受けた許可は、許可当局が更新を拒否できます。

つまり、すでに停止を受けた違反を繰り返すと、許可が取り消されるおそれがあります。また、大麻の告示に違反して停止を受けると、違反の種類にかかわらず更新時にリスクが生じます。許可期間が終わるときに、当局が更新を拒否できるからです。

査察記録、警告書、あなたが提出した説明書は、すべて保管してください。非公式の警告がどう考慮されるかは、公表された文書には書かれていません。後で命令に異議を申し立てるときは、何を指摘され、どう直したかを書いた記録がいちばんの証拠になります。

やること:査察1回ごとにフォルダを1つ作り、紙とスキャンの両方で保管します。中には査察官のメモ、あなたの回答、改善を示す証拠を入れます。

停止期間中の在庫と患者

第52条第2項により、許可停止を受けた事業者は、停止期間中、その許可に基づく活動をすべて止めなければなりません。この期間中は、同じ法律に基づく他の許可も取れません。停止中に規制ハーブを販売・加工すると第78条違反になります。罰則は1年以下の懲役、20,000バーツ以下の罰金、またはその両方です。

今回確認した公表文書には、停止期間中に施設にある在庫をどう扱うべきかは書かれていません。DTAMから書面で回答が来るまでは、在庫を売ったり、移したり、廃棄したりしないでください。その間も、PT 27の在庫記録は常に最新の状態にしておきます。

訳者注:タイの保管室は30〜35 °Cになることが多く、雨季には湿度も高くなります。90日間の停止中に節約のためにエアコンを止めると、花穂(フラワー)にカビが生えるおそれがあります。そうなると、廃棄も許されない傷んだ在庫を抱えることになりかねません。保管室の温度と湿度の管理は止めずに続け、毎日記録してください。保管の基本は「保存のしかた:湿度、光、酸素、そして賞味期限・保存期限について」にまとめています。

あなたのディスペンサリー(大麻販売店)からPT 33に基づいて大麻を受け取っている患者は、停止期間中、別の許可施設を利用しなければなりません。いまの患者には、直接、個別に知らせてください。

訳者注:患者への連絡は、公開の投稿ではなく、電話か個別メッセージで行いましょう。花穂の供給についての公開投稿は広告とみなされるおそれがあります。広告は、それだけで30日停止になる別の違反です。

やること:いまの患者の短いリストと、送るメッセージの文面を用意します。査察が来る前に準備しておきましょう。

許可停止にかかる費用への備え

許可停止による損失は、30日分または90日分の売上だけではありません。

家賃はかかり続けます。 30日前の通知で賃貸契約を解約できない場合、収入がない間も家賃は固定費として出ていきます。新しい施設で長期の賃貸契約を結ぶなら、契約するときに許可停止の場合の条項を入れるよう交渉してください。あまり一般的ではありませんが、規制のある業種の事業者には、実際にそうしているところもあります。

人件費は計画が難しくなります。 研修を受けたスタッフは雇い続けるべきです。研修修了スタッフを置く要件は営業中ずっと適用されるので、彼らがいないとこの要件を満たせません。それ以外のスタッフについては、考え方が変わります。ディスペンサリー1店舗の収入で支えられる以上の人数を雇っていると、90日の停止でチームがばらばらになり、元に戻らないこともあります。

銀行が口座を見直すことがあります。 許可停止命令をきっかけに、銀行が独自に口座の審査を始めることがあります。どのくらいの頻度で起きるかを示す公表資料はありません。許可に関する処分をどう扱うのか、取引銀行に確認してください。

やること:毎月の固定費(家賃、雇い続ける必要のある研修修了スタッフの人件費、ローンの返済)を合計し、3倍にします。それが90日間の停止を乗り切るために必要な現金です。

査察で問題が見つかる前にリスクを減らす

いちばん効果があるのは、査察官が来る前の対策です。査察は予告なしに行われ、決まった周期もありません。市民からの苦情、更新書類の内容、地域の定期的な一斉点検などがきっかけになります。そのため、法令順守は査察がありそうなときだけでなく、毎日続ける必要があります。

やっておく価値がある自己点検は、次の3つです。

研修修了スタッフ。 DTAMの手引きによると、2026年4月の規則のもとでは、花穂の許可を持つ事業者は、承認された医療用大麻の研修課程を修了したスタッフを最低1人、営業中は常に施設に置かなければなりません。毎月、その人の研修修了証が有効かどうかを確認してください。勤務表がすべての営業時間をカバーしているかも確認します。かかる時間は約20分です。ここに抜けがあると許可基準を満たしていないことになり、同じ基準は更新時にも確認されます。

施設の安全管理。 DTAMの手引きは、許可を受けた施設に防犯計画と盗難・紛失を防ぐ管理体制を求めています。安全管理は、たいてい少しずつ崩れていきます。たとえば、配送のためにドアを開けたままにする、風を通すために裏の窓の鍵を開けておく、在庫室を見せろと言い張る客がいる、といったことです。毎週施設を見て回り、日時入りの写真を撮って保存してください。後で査察官が「この日は施設が管理されていなかった」と指摘しても、写真の記録で日頃から順守していたことを示せます。

訳者注:30〜35 °Cになると、スタッフは風を入れるためにドアや窓を開けがちです。停電でエアコンが止まったときは特にそうです。部屋を閉めたままでも過ごせるよう、換気を計画してください。たとえば、窓に固定式の格子や網を付ければ、空気は入っても、出入り口としては使えません。停電があったことも、同じ毎週の記録に書いておきましょう。

書類をそろえる。 許可証、医療従事者の資格証明、在庫記録、PT 33の処方記録は、すべて施設に置き、最新の状態にして、すぐに見せられるようにしておく必要があります。書類を見せられないと、査察官はその書類が存在しないと暫定的に記録することがあります。見ていないものは確認できないからです。査察官に在庫記録を求められたときに「本社にあります」と答えても、認められません。

やること:このリストの書類をすべて1冊のバインダーにまとめて施設に置き、スキャンした写しも保管します。週に1回、リストと照らし合わせて確認します。

行政手続と刑事手続は別々に進む

許可停止命令が出れば問題は片づき、刑事上のリスクもなくなると考える事業者がいます。それは誤りです。

省令に基づく行政手続と、麻薬法典や1999年法に基づく刑事手続は、並行して進みます。行政上の処分を受けても、起訴されないわけではありません。逆に、刑事事件で有罪と推定されるわけでもありません。二つの手続は互いに独立しています。

同じ行為が犯罪にも当たる場合は、警察に通報されることがあります。たとえば、許可なしにTHCの上限を超える抽出物を販売した場合です。こうした通報がどのくらい行われるかについて、DTAMや麻薬取締委員会事務局(ONCB、タイの麻薬取締機関)が公表した手順はありません。

行政手続が終わっても、刑事上のリスクは終わりません。刑法第95条により、公訴時効の期間は法定刑の上限となる懲役期間で決まります。第78条違反のように1年以下の懲役が科される罪の場合、時効は犯罪の日から5年です。

やること:許可停止期間が続いているうちに、違反の原因となった行為に刑事上のリスクもあるかどうか、タイの弁護士に相談してください。行政手続が終わる前に行いましょう。

許可取消の後:失うもの、残るもの

仏暦2569年省令第2号は、許可の取消や再申請を扱っていません。この省令が定めているのは、規制ハーブの告示に違反して停止を受けた事業者について、許可当局が更新を拒否できることだけです。

再申請までの待機期間は、1999年法第54条で決められています。許可が取り消されると、2年間は同法に基づく新しい許可は出ません。2年が過ぎた後も、新しい許可を出すかどうかは許可権者の判断です。法人の場合は、規制ハーブの許可に関する2016年の省令第8条(1)(e)により、同じ2年間の禁止が法人だけでなく、その取締役、管理者、その他の責任者にも適用されます。そのため、同じ人たちで新会社を作っても、経営陣を入れ替えても、禁止を避けられない可能性があります。自分のケースについては、DTAMかタイの弁護士に確認してください。

スタッフ個人の資格は失われません。許可の取消は事業の許可に対する命令で、医療従事者個人の専門資格に対する命令ではないからです。スタッフが別のディスペンサリーで働き始める前に、研修修了証がそこで認められるかをDTAMに確認してください。許可は失っても、チームの技能は残ります。

やること:スタッフ全員の修了証の写しを保管し、原本はそれぞれ本人が持っているようにします。

まとめ:どのリスクから先に対処するか

法令順守にかけられる予算が限られているなら、差し迫ったリスクが高いものから順に、次の順番で対処してください。

即時の許可取消:

  • PT 27またはPT 28の虚偽報告
  • PT 33なしで、20歳未満の人、学生、妊娠中または授乳中の女性に販売すること
  • 施設内での喫煙を許すこと
  • 自動販売機
  • オンライン販売
  • 寺院、寮、公園での販売
  • すでに許可停止を受けた違反を繰り返すこと

90日間の許可停止:

  • 輸出の詳細を許可権者に届け出ないこと
  • PT 33なしで大麻を販売すること

拠点が1か所だけの事業者は、観光のハイシーズンに90日間の停止を受けるだけで、廃業に追い込まれることもあります。

30日間の許可停止:

  • PT 27またはPT 28を作成していない、内容が不完全、または提出していない
  • GACPまたは同等の認証なしでハーブを販売・輸出すること
  • 許可証を掲示していない
  • あらゆる商業広告

これらのほとんどは、日々の書類作業をきちんと行い、価格やキャンペーンを一切投稿しないことで防げます。

小さな問題。 たとえば、ちょっとした書類の不備、スタッフが客への説明で一度だけしたミス、うっかり広告の範囲に入ってしまった投稿1件などです。報道されたガイドラインには、独立した「警告」の段階はありません。広告の投稿は1件でも、法的には30日停止の段階に入ります(前編を参照)。小さな問題なら査察官が警告だけで済ませることもあるのかどうかは、公表された報道には書かれていません。小さな問題もすべて記録に残るものと考え、その日のうちに直してください。

やること:ハイシーズンが始まる前に、施設全体の自己点検の日を決めます。前編で紹介した手順と、上の3つの自己点検を使ってください。

この記事は一般的な情報であり、法的助言ではありません。 行動する前に、タイの資格を持つ弁護士に自分の状況を確認してください。査察、不服申立て、許可停止を経験したことがある方は、他の許可保有者の参考になるよう、このトピックの下で経験を共有してください。

参考文献

  • 「タイ伝統医療知識の保護・振興法」仏暦2542年(1999年)第5条、第52条、第54条、第55条、第70条、第71条、第78条
  • 刑法 第95条
  • 行政手続法 仏暦2539年(1996年)第30条
  • 「行政裁判所設置及び行政裁判手続法」仏暦2542年(1999年)(改正後)第49条
  • 保健省告示「規制ハーブ(大麻)」仏暦2568年 — 官報、2025年6月25日
  • 第5類麻薬(大麻およびヘンプの抽出物)に関する省令 仏暦2569年 — 2026年4月26日施行
  • 規制ハーブの許可に関する仏暦2569年省令第2号 — 2026年4月30日
  • 規制ハーブの研究・輸出・販売・加工の許可に関する省令 仏暦2559年(2016年) — 官報 第133巻 第103ก号、2016年12月9日、第8条(1)(e)(DTAM掲載版)
  • タイ伝統・代替医療局(2026年6月22日). แนวทางการออกคำสั่งทางปกครองในการเพิ่มโทษพักใช้และเพิกถอนใบอนุญาต[許可停止・取消の罰則を重くする行政命令の発出に関するガイドライン].
  • 麻薬法典(「麻薬法典公布法」仏暦2564年(2021年)により公布)、2021年12月9日施行