大麻のpHとEC:メーター、校正、pH調整、排液テスト、養分ロックアウトの診断(後編)

pHとECの目標値を知っていても、測定値そのものが正しく、安全に調整できなければ役に立ちません。後編では、pHメーターとECメーター、その校正方法、pHを上げる・下げる資材を取り上げます。鉢底から流れ出る水の測り方と、よくある失敗10項目も紹介します。最後に、肥料を追加する前に確認する6つのステップをまとめます。

後編だけでも読めるように、前編の要点を簡単におさらいします。pHは溶液の酸性・アルカリ性の強さを0〜14の数値で表します。EC(電気伝導度、単位はmS/cm)は、溶けている肥料の塩類の量を表します。pHの目標値は、土で6.0〜7.0、ココヤシ繊維で5.8〜6.3、水耕栽培で5.5〜6.5です。pHが合っていないと養分ロックアウトが起こります。養分は鉢の中にあるのに、根が吸収できなくなる状態です。

本記事は後編です。前編:https://asiannabis.com/t/392

pHメーターとECメーター

以下の機種は参考にした元記事に出てくるものです。おすすめとして挙げているわけではなく、フォーラムとして特定のブランドを推すこともありません。

一部の機種には自動温度補償(ATC)が付いています。ATCとは、水温による測定値のずれをメーターが自動で補正する機能です。ATCがない場合は、自分で補正する必要があります。

pHペン:

  • Apera PH20: ATC付き。
  • Bluelab pH Pen: 丈夫とされています。電極(プローブ)を交換できます。
  • Hanna HI98107: シンプルなポケット型テスター。校正をこまめに行う必要があります。

EC・TDSメーター:

  • Bluelab Truncheon: EC、500スケールのppm、700スケールのppmを表示します。丈夫で防水とされています。どのECメーターでも同じですが、ときどき1.413 mS/cmの標準液で確認してください。
  • Hanna HI98312: ATC付きのEC/TDSメーター。
  • TDS-3: さまざまなブランド名で売られている簡易テスター。使う前に、500スケールか700スケールかを確認してください。

訳者注: pHとECの測定値は、どちらも水温によって変わります。タイの栽培室では養液が30 °C以上になることが多いため、ATCがあれば補正の手間を省けます。購入前に、校正液と電極保存液が国内で手に入るかを、タイの正規代理店に確認してください。校正できないメーターは、すぐに正しい値を示さなくなります。特定のメーターの使用感を知りたい場合は、フォーラムの「肥料全般Q&A」セクションで質問してください。

メーターの校正

校正とは、値が正確に分かっている液体にメーターを入れて確認し、ずれを直す作業です。この液体を標準液(緩衝液、バッファー液)と呼びます。

  • pHメーター: pH 4.0とpH 7.0の標準液で校正します。pH 10.0の追加は任意です。毎週行ってください。
  • ECメーター: 1.413 mS/cmの標準液で校正します。ほとんどのECペンは月1回で十分です。
  • pH電極の保管: 電極は必ず塩化カリウム(KCl)の保存液で湿らせた状態で保管してください。乾燥させると、元に戻らない損傷を受けます。蒸留水で保管してはいけません。

訳者注: 液のボトルはしっかり閉め、直射日光を避けて保管してください。校正のたびに、清潔なカップへ少量を注ぎ、使い終わったら捨てます。ボトルに直接電極を入れると、残りの液が汚れてしまうので避けてください。購入時には使用期限も確認しましょう。

やること: スマートフォンでリマインダーを設定します。pHの校正は毎週、ECは月1回です。校正の前に、標準液でメーターがどの値を示すかを記録しておきます。こうすると、メーターがどれだけずれているかが分かります。ずれが週ごとに大きくなるなら、電極が劣化してきたサインです。

pHを安全に調整する

pHを下げる資材(pH Down)

資材 有効成分 長所 短所
General Hydroponics pH Down、Advanced Nutrients pH Down リン酸(H₃PO₄) 業界標準。pHが安定しやすい。開花期に役立つPを補える。 Pが多すぎるとZnとFeのロックアウトを起こすことがある。腐食性がある。
クエン酸 クエン酸(C₆H₈O₇) 安全で安価、食品グレード。有機の土に向く。 pHが安定しない:微生物がクエン酸塩を分解し、pHが元に戻る。水耕栽培には不向き。
硝酸 HNO₃ 栄養成長期に役立つ硝酸態窒素(NO₃⁻)を補える。プロが使用する。 非常に危険。商業栽培専用。
硫酸 H₂SO₄ 最も安価。硫酸イオンは植物に害がない。 最も危険。食品グレードのみを使用すること。趣味の栽培者には勧められない。
酢またはレモン 酢酸またはクエン酸 天然で安全、入手しやすい。 効果が短い:数時間でpHが戻る。有機の土専用。

pHを上げる資材(pH Up)

資材 有効成分 長所 短所
General Hydroponics pH Up、Advanced Nutrients pH Up 水酸化カリウム(KOH) 速く、強く、正確。業界標準。 腐食性がある。上げすぎやすい。手袋と保護メガネを着用すること。
ケイ酸カリウム K₂SiO₃ pHを上げるとともにケイ素を補える。茎を強くし、病害虫への抵抗力を高めるとされる。 濃い溶液ではカルシウムと一緒に沈殿することがある。先に薄めてから使うこと。
苦土石灰(ドロマイト) CaMg(CO₃)₂ pHを7.0付近に保つ天然の緩衝材。CaとMgを補える。用量:土1ガロンあたり大さじ1杯(約4リットルあたり大さじ1杯)。 遅い:効くまで数日かかる。あらかじめ土に混ぜ込む用途に限る。
カキ殻 CaCO₃ ゆっくり溶け、長期間安定する。リビングソイルに非常に向く。 水耕栽培には遅すぎる。土または有機培地でのみ効く。
草木灰 K₂CO₃、CaCO₃ アルカリ性が非常に強い。K、Ca、微量元素を補える。 入れすぎやすい。量の調整が不正確。ごく少量だけ使うこと。

ケイ素の効果とされる主張のうち、どれが根拠に支えられているかは、フォーラムのケイ素のトピックで検証しています。

訳者注: タイの家庭栽培者には、正規代理店の既製品のpH UpとpH Downが現実的な選択です。硝酸と硫酸は家庭で扱うには危険すぎます。酸やアルカリは必ず水に加えてください。逆に、酸やアルカリに水を加えてはいけません。手袋と保護メガネを着用してください。製品のタイでの登録を確認するには、タイで肥料が合法であることを確認する方法を参照してください。

手順

  1. 先に肥料を混ぜます。肥料を入れると水のpHが変わるためです。
  2. 混ぜた溶液のpHを測ります。
  3. pH UpまたはpH Downを加えます。最初は米ガロン(3.8 L)あたり1〜2 mL、つまり1リットルあたり約0.25〜0.5 mLから始めます。
  4. よくかき混ぜ、10分待ってから測り直します。
  5. 目標のpHになるまで繰り返します。
  6. 1回の調整で動かすpHは0.3以内にします。少しずつ動かせば、行きすぎて逆方向に戻す必要がなくなります。この行き来が根のストレスになるのです。

やること: いつも使うタンク容量に、pH DownやpH Upが何mL必要だったかを記録します。次回は勘に頼らず、その量から始めましょう。

排液テスト:根域の状態を読む

排液(ランオフ)とは、水やりの後に鉢底から流れ出る水のことです。排液は培地から塩類を運び出します。排液のpHとECを測ることが、根域で実際に何が起きているかを知る唯一の方法です。根域(根圏)とは、根を取り巻く薄い培地の層のことです。

かけ流し式灌漑とPourThru法

かけ流し式灌漑(ラン・トゥ・ウェイスト)とは、一部が鉢底から流れ出る量の養液を与える水やりの方法です。流れ出た排液は再利用せずに捨てます。ココヤシ繊維で育てる栽培者によく使われています。水やりのたびに古い養液の一部が洗い流されるので、排液を見れば培地に何が残っていたかが分かります。

PourThru(ポアスルー)法は、商業的な鉢栽培で使われる、これに近いサンプル採取法です。通常の水やりの後、決まった少量の蒸留水を培地の上から注ぎます。そして、押し出されて排水穴から出てきた液を測定します。フロリダ大学の普及指導資料では、小さな鉢なら約30分、大きなコンテナなら最大2時間待ってから、約50 mLが集まる量の水を注ぐよう勧めています。目安は、1ガロン(3.8 L)の鉢で約150 mL、3ガロン(11 L)の鉢で約350 mLの水です。毎回同じタイミングと水量で行わなければ、測定値を比べることはできません。

排液サンプルの採り方

  1. いつもどおり、pHを調整した養液で水やりをします。
  2. 鉢の下にトレーを置き、排液を受けます。
  3. 最初の数秒間に出る水は前回の水やりの残りなので、流してしまいます。その後の排液を集めます。
  4. すぐに排液のpHとECを測ります。
  5. 推移を追えるよう、結果を記録帳に書きます。

結果の読み方:与えた液と出てきた液を比べる

見られる状態 意味 対処
排液のECが与えた液のECより低い 植物が養分をよく吸収している。正常で理想的な状態。 今の施肥スケジュールを続ける。
排液のECが与えた液のECとほぼ同じ 植物が吸収していない。pHによるロックアウトや根の損傷が考えられる。 排液のpHと根の状態を確認する。ECを下げることも検討する。
排液のECが与えた液より0.5 mS/cm以上高い 根域に塩類がたまっている。根を傷める可能性がある。 排液のECが目標値になるまで、pHを調整した真水でフラッシュする。その後は50%の濃度で施肥する。
排液のpHが与えた液のpHより0.5以上低い 培地が酸性に傾いている。根がストレスを受けている可能性がある。 与える液のpHを0.2〜0.3上げる。軽くフラッシュする。根が紫や茶色になっていないか確認する。

フラッシュとは、たっぷりの真水を与えて培地から塩類を洗い流すことです。

頻度: ココヤシ繊維と水耕栽培では、水やりのたびに排液を測ります。土では、少なくとも2〜3回の水やりごとに測ります。大きな変更をする前に、連続した3〜5回分の測定値の傾向を見てください。

訳者注: 停電すると、ポンプ、エアポンプ、水温を下げるチラーが止まります。水耕栽培には養液の変化を和らげる培地がないため、水温が上がる間にpHとECがずれていくことがあります。停電の後は、次の施肥の前にリザーバーのpH、EC、水温を測ってください。

やること: 日付、与えた液のpH、与えた液のEC、排液のpH、排液のECの5列で記録帳を付けます。この記録の傾向から、葉に症状が出る前に問題を見つけられます。

pHとECのよくある失敗10項目

# 失敗 何が起こるか 対処
1 pHを測らない 気づかないうちにロックアウトが起こる。欠乏症に見えるが、肥料を増やしても改善しない。 pHペンを用意し、水やりのたびに測る。
2 メーターを校正しない 間違った測定値で間違った調整をしてしまい、植物を傷める。 pHペンは毎週4.0と7.0の標準液で校正する。ECペンは毎月校正する。
3 pHを追いかける(調整しすぎる) pH Upで上げすぎ、次にpH Downで下げすぎる。根がストレスを受ける。 1回に1ガロンあたり1〜2 mL(1リットルあたり約0.25〜0.5 mL)ずつ加える。10分待って測り直す。1回の調整で動かすpHは0.3以内にする。
4 排液を気にしない 気づかないうちに塩類がたまり、やがて根を傷める。 排液のpHとECを定期的に測り、与えた液と比べる。
5 培地に合わないpH 土にpH 5.5で水やりするとCaとMgがロックアウトされる。水耕栽培でpH 6.8だとFe、Mn、Znがロックアウトされる。 土6.0〜7.0。ココヤシ繊維5.8〜6.3。水耕栽培5.5〜6.5。
6 肥料を混ぜる前にpHを調整する 肥料でpHが大きく変わる。結局2回調整することになり、資材が無駄になる。 必ず先に肥料を混ぜ、その後でpHを調整する。
7 苗にとってECが高すぎる 若い根が肥料焼けする。苗の生育が遅れ、葉先が黄色くなる。 苗:EC 0.2〜0.8。1週間に0.2ずつ上げる。
8 新しいココヤシ繊維をバッファリングしない 新しいココヤシ繊維はNa⁺とK⁺を保持している。そのため最初の1週間に深刻なCa・Mg欠乏が起こる。 使う前に、EC 1.5〜2.0のCalMag溶液にひと晩浸けておく。
9 pH電極を乾燥させる 乾いた電極は元に戻らず、交換が必要になる。 必ずKCl保存液で保管する。蒸留水で保管しない。
10 ppmのスケールを取り違える 700スケールの表を500スケールのメーターで読むと、1.4倍の肥料を与えることになり、肥料焼けを起こす。逆の場合は同じ割合で肥料不足になる。 自分のメーターのスケールを把握する。できればEC(mS/cm)で管理する。

肥料を追加する前に養分ロックアウトを診断する

葉が黄色くなる、茶色い斑点が出る、生育が遅いなど、欠乏症のような症状が出ることがあります。すぐに肥料を追加してはいけません。次の6つのステップを順番に確認してください。各ステップで原因を1つずつ消していきます。

ステップ1 – メーターを確認する。 校正してありますか。していなければ、まず校正してから測り直します。これで測定値の誤りという可能性を除外できます。

ステップ2 – 排液を測る。 pHを調整した真水で水やりします。排液を集め、pHとECを測ります。

ステップ3 – 排液のpHを読む。 使っている培地の適正範囲に入っていますか。

  • いいえ:pHによるロックアウトです。排液のpHが目標値になるまで、正しく調整した水でフラッシュします。
  • はい:ステップ4へ進みます。

ステップ4 – 排液のECを読む。 与えた液のECより0.5 mS/cm以上高いですか。

  • はい:塩類がたまっています。排液のECが目標値になるまでフラッシュします。その後、いつものECの50%で施肥を再開します。
  • いいえ:ステップ5へ進みます。

ステップ5 – 根を確認する。 白色または薄いクリーム色の根は健康です。茶色でぬめりのある根は根腐れ病です。

  • 茶色い根:参考資料で示されている処置は、3%過酸化水素水(H₂O₂)を1リットルあたり3 mL使うことです。もう一つの選択肢は、根域用の市販製品Hydroguardです。あわせて水温も確認してください。水温は22 °C未満に保つべきとされています。
  • 白い根:ステップ6へ進みます。

ステップ6 – 本当の欠乏症かを確かめる。 ここで初めて、不足している特定の養分を追加することを検討します。葉の症状を欠乏症の早見表と照らし合わせてください。

栽培者のコミュニティでは、「欠乏症」に見えるケースの多くは実際にはpHによるロックアウトか塩類の蓄積で、本当の不足はごく一部だとよく言われます。ただし、その割合を信頼できる形で示した論文はなく、参考文献に挙げた研究にもそれを裏付けるものはありません。とはいえ、この通説から導かれる実践的な結論は6つのステップと同じです。まずpHと塩類を疑って除外することです。

訳者注: 室温が30〜35 °Cになることが多いタイでは、養液を22 °C未満に保つのは困難です。チラーがなければ、リザーバーの水温はたいていそれよりかなり高いままです。リザーバー温度31 °Cでの水耕栽培のトピックでは、チラー、有用微生物、システム変更の3つの選択肢を比べています。根の処置には、タイ農業局(กรมวิชาการเกษตร)に登録された製品だけを使い、ラベルの指示を厳守してください。タイのGACPで合法的に散布できるものも参照してください。

やること: 6つのステップを印刷し、養液タンクのそばに置いておきます。そうすれば、肥料にお金をかける前に、pHと塩類の問題を除外できます。

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  15. GrowDiaries (2024). EC and PPM in Cannabis + Common Nutrient Deficiencies from Incorrect pH.

法的な注意: 本記事は教育を目的としています。タイでは、大麻の花穂は規制ハーブです。これは、2025年6月26日に施行された保健省告示「規制ハーブ(大麻)」仏暦2568年で定められています。花穂の販売は、最長30日分までのPT 33(ภ.ท.33)処方箋がある場合に限られます。花穂の広告とオンライン販売は禁止されています。その後、仏暦2569年の省令が2つ出されました。大麻・ヘンプ抽出物に関する省令は2026年4月26日に施行されました。花穂のライセンス基準を厳しくした規制ハーブ(第2号)は、2026年4月30日に施行されました。大麻を栽培してよいか、ライセンスが必要かは、お住まいの地域の法律によって異なります。当フォーラムは嗜好目的での使用を推奨しません。

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