本記事は後編です。前編:Raw CBD Flower Versus Extract: Legal Layers, THC Testing and the European Markets (Part 1 of 2)
最終確認日:2026年10月14日
概要
多くの国では、CBD抽出物は合法でも、その原料となる未加工のヘンプの花穂は違法です。こうした国の法律は、製品の化学成分ではなく、製品の物理的な形態で判断します。適用される法律は、麻薬法・食品法・たばこ法の3種類です。どれか1つに引っかかっただけで、貨物は止められます。
輸出先では総THCで検査されると考えてください。総THCとは、活性型のΔ9-THCに、その未加熱の酸型であるTHCAを足した量です。詳しい説明と欧州市場の状況は前編にあります。
後編では、英国、米国、アジア太平洋、タイ側の状況、そして関税コードを扱います。
| 市場 | 未加工の花穂を輸入できるか | THC上限 | THCの測定方法 |
|---|---|---|---|
| 英国 | 不可 | THCの量は問わない(花穂という植物の部位そのものが規制対象) | — |
| 米国 | 実務上は不可 | 0.3% | THCAを含む総THC |
| オーストラリア、ニュージーランド、日本、香港、シンガポール | 不可 | — | — |
| 韓国、中国 | 不可 | — | — |
1. 英国:不可。理由はTHC濃度ではありません
英国の主要な薬物法は、1971年薬物乱用法(Misuse of Drugs Act 1971)です。この法律は、大麻の定義から3つの部位だけを除外しています。成熟した茎、成熟した茎から取った繊維、そして種子です。
そのため、花穂と葉は、THC濃度に関係なくクラスBの規制対象になります。クラスBは、英国の規制薬物のうち中間の区分です。このことは、英国の内務省(Home Office)が出している薬物ライセンスのファクトシートに書かれています。クラスBの薬物を供給すると、最長14年の拘禁刑が科されます。
英国には「適用除外製品(exempt product)」という制度もありますが、花穂には使えません。適用除外になるのは、次の3つの条件をすべて満たす製品だけです。
- 人が摂取するように作られていないこと
- 簡単で手に入りやすい方法では、規制薬物を取り出せないこと
- 製品のどの部分にも、規制薬物が1 mgを超えて含まれていないこと
未加工の花穂は、3つの条件すべてを満たしません。花穂は植物の部位そのものであり、何も加工せずに使えるからです。THCの低い花穂でも、1 mgはすぐに超えます。たとえば、THC 0.2%の花穂なら、1 gだけで2 mgのTHCを含みます。
やるべきこと: 英国のバイヤーから花穂を求められたら、花穂の取引は断ってください。それでも取引を続けたいバイヤーとは、抽出物での取引について、相手とその英国の法律顧問を交えて相談してください。そうすれば、クラスB薬物の供給事件に巻き込まれずに済みます。
2. 米国:実務上は不可
米国へのヘンプの花穂の輸入は、総THCによる定義ができる前から成り立っていませんでした。この定義は、つなぎ予算法によって11月12日から延期され、現在は2026年12月11日に施行される予定です。議会が再び日付を変える可能性もあります。
米国農務省(USDA)の輸入規則が対象にしているのは、ヘンプの種子と繁殖用の材料だけです。大量の花穂については何も定めていません。花穂用の正式な輸入許可はなく、専用の関税コードもありません。
米国の税関職員が使う簡易検査は、THCが含まれているかどうかしか分かりません。0.3%という上限を測ることはできません。そのため実務上は「THCゼロでなければ不可」となり、結果は港によってばらつきます。
花穂を「一般的な植物抽出物」として申告すればよい、と勧める通関業者もいます。これは虚偽申告です。荷送人は貨物の押収や刑事訴追を受けるおそれがあり、貨物が合法になるわけでもありません。
やるべきこと: 輸出書類で花穂を別の品目として記載する提案は、すべて断ってください。法的なリスクを負うのはバイヤーだけではなく、荷送人であるあなた自身です。
3. アジア太平洋:ほぼすべての国で閉ざされています
オーストラリア: 食品として販売できるのは、THCの低いヘンプの種子だけです。オーストラリア政府の薬物規制機関である薬物管理局(Office of Drug Control)によると、種子以外の部位から作った抽出物は医薬品として扱われます。花穂は、食品としても農産物としても輸入できません。
ニュージーランド: 2006年薬物乱用(産業用ヘンプ)規則(Misuse of Drugs (Industrial Hemp) Regulations 2006)は、2026年5月28日付で廃止されました。THCの低いヘンプ(乾燥重量でTHC 1%以下)は、現在は1977年薬物乱用規則(Misuse of Drugs Regulations 1977)の対象です。栽培者は栽培ライセンスを取る必要がなくなりました。その代わり、植え付けの前に警察と第一次産業省(Ministry for Primary Industries)へ届け出なければなりません。ただしニュージーランド警察によると、葉や花を含むヘンプの植物材料を輸入・輸出するには、引き続きライセンスが必要です。
日本: 改正大麻取締法が2024年12月12日に施行されました。以前の日本は、製品が植物のどの部位から作られたかで合法かどうかを判断していました。現在は、製品に含まれてよいTHCの量に上限を設けています。この改正で、大麻の使用も犯罪になりました。
日本のTHC残留限度値は、油脂と粉末が10 ppm、固形物が1 ppm、水溶液が0.1 ppmです。1 ppm(100万分の1)は0.0001%にあたります。THC 0.3%という花穂の規格は3,000 ppmにあたり、日本の固形物の限度値の約3,000倍です。
香港: 2023年2月1日から、CBDは危険薬物に指定されています。香港政府の保安局禁毒処(Narcotics Division)によると、CBDの輸入・輸出・密売には最高で終身刑と500万香港ドルの罰金が科されます。適用除外となる用途はありません。
シンガポール: シンガポール中央麻薬局(Central Narcotics Bureau)は、ヘンプをCannabis sativaとして扱い、ヘンプから作られたすべての製品を規制しています。CBDは、最も重い区分であるクラスAの薬物です。シンガポール国民と永住者は、海外での薬物使用でも罪に問われることがあります。
確認したすべての資料によると、韓国と中国も花穂の輸入を認めていません。その他のアジア諸国については、フォーラムの概要記事アジア各国と世界の主要市場の大麻法を参照してください。
訳者注: タイのルールが国境を越えて近隣諸国でも通用するとは考えないでください。サンプルを送ることも輸入にあたります。サンプル1つでも、送る前に輸出先ごとの法律を確認してください。
やるべきこと: これらの市場は、花穂の計画からすべて外してください。これらの国のバイヤーから花穂を求められたら、発送できないと伝えてください。そのうえで、その国が認めている製品のライセンスを持っているかどうかを尋ねてください。
4. タイ側の状況と、輸出業者に残された道
タイでは花穂は規制ハーブです
タイでは、大麻の花穂(ช่อดอกกัญชา)は規制ハーブです。これは、保健省告示「規制ハーブ(大麻)」仏暦2568年によるものです。この告示は、タイ伝統医療保護法(Thai Traditional Medicine Protection Act)仏暦2542年に基づいて出され、2025年6月26日に施行されました。主な規則は次のとおりです。
- 花穂を調剤・提供できるのは、認可を受けた医療資格者が発行した**PT 33(ภ.ท.33)**の処方がある場合だけです。
- 1回の処方で出せるのは30日分までです。
- 花穂の広告とオンライン販売は禁止されています。
- 嗜好目的での使用は認められていません。
- 花穂の販売・加工・輸出にはライセンスが必要です。タイ伝統・代替医療局(DTAM)は、販売用・輸出用の花穂は、DTAMのGACP基準(適正農業・採取規範)を満たさなければならないとしています。
この告示が対象にしているのは植物の部位そのもので、THCの割合ではありません。そのため、THCの低いヘンプの花穂なら対象外だと考えないでください。個別の製品については、DTAM(กรมการแพทย์แผนไทยและการแพทย์ทางเลือก)に、その製品の扱いを書面で確認してもらってください。
訳者注: タイ伝統医療保護法 仏暦2542年の第78条は、ライセンスなしで規制ハーブを販売・加工・輸出した場合の罰則を定めています。罰則は、1年以下の拘禁刑、2万バーツ以下の罰金、またはその両方です。GACPのルールは、自宅で栽培している人にも直接関係します。ライセンスとGACP認証のない自宅栽培の花穂は、合法的に販売も輸出もできません。このフォーラムでは、たとえ「ヘンプ」であっても、花穂の販売投稿はしないでください。
混同されやすいタイの2つのTHC上限
| 上限 | 対象 | 何を決めるか |
|---|---|---|
| 葉と花穂(花の付いた先端部)で、乾燥重量あたりTHC 1.0% | ヘンプの植物または品種(麻薬法に基づく2019〜2020年のヘンプ規則) | その品種がどの区分に入るかを決める。花穂が規制ハーブかどうかは決めない |
| 重量あたりTHC 0.2% | 抽出物 | 0.2%を超えると、タイの麻薬法上の第5種麻薬になる。0.2%以下なら麻薬リストの対象外だが、製品・化粧品・食品に関するタイ食品医薬品局(Thai FDA、อย.)の規則は引き続き適用される |
合法な植物から、違法な抽出物ができることがあります。 抽出すると、カンナビノイドが濃縮されるからです。そのため、植物の上限である1.0%以内で育てた植物からでも、THCが0.2%を超える抽出物ができることがあります。その抽出物は第5種麻薬です。濃縮の工程で、2つの上限の両方が関わってきます。
やるべきこと: 植物だけでなく、抽出物そのものを検査してください。製品が0.2%のどちら側にあるかは、抽出物の検査結果でしか分かりません。
2026年の省令と法案
2026年には、仏暦2569年の2つの省令によってライセンス制度が厳しくなりました。
- 大麻又はヘンプ抽出物に関する省令 仏暦2569年: 2026年4月26日施行。
- 規制ハーブに関する省令(第2号)仏暦2569年: 2026年4月30日施行。大麻の花穂のライセンス基準を厳しくしています。
訳者注: 抽出物に関する省令では、THC 0.2%を超える抽出物のライセンスを持てるのは、一部の主体に限られています。具体的には、外国人事業法 仏暦2542年で「外国人」にあたらないタイの法人(会社などの法人格を持つ団体)、国の機関、そしてタイ赤十字社です。0.2%を超える可能性がある抽出を計画する前に、自社の出資構成を確認してください。
大麻管理法(Cannabis Control Act)はまだ法案の段階で、法律にはなっていません。内閣は2026年9月22日に法案を承認し、下院に送りました。報道によると、20歳未満への販売禁止が新たに加わる見込みです。法案が成立すると、上で説明した上限が変わる可能性があります。
未加工のタイ産CBD花穂を輸出する場合に残る選択肢
未加工のタイ産CBD花穂の場合、現実的な輸出先はスイスに絞られます。フランスと、ドイツの事業者である買い手も、条件付きで可能です。チェコは、チェコ国内で流通が完結する材料に限って輸出先になり得ます。
これは小さな市場です。しかも花穂は、通常の農産物の輸出としてではなく、規制ハーブのルールのもとでタイから出ていきます。ライセンスなしで規制ハーブを輸出すると、第78条違反になります。出荷を計画する前に、どのライセンスと書類が必要かをDTAMに確認してください。
抽出物で取引する場合と、公平に比べてみてください。重量あたりTHC 0.2%以下の抽出物は、タイの麻薬リストの対象外です。ただし、製品・化粧品・食品に関するタイ食品医薬品局の規則は引き続き適用されます。輸出先では、問題になるのはその国の化粧品法と食品法になります。
タイから合法的に出せるものについては、フォーラムの記事ヘンプとしてタイから実際に輸出できるもので説明しています。
やるべきこと:
- 輸出先がスイスかフランスであること、または買い手がドイツの事業者であることを確認してください。 この記事で取り上げたほかの市場は、すべて花穂を受け入れていません。
- 製品の扱いについて、DTAMの書面での確認を取ってください。 輸入業者や、両国の税関職員に見せられる書類になります。
- 花穂がGACP認証を受けた施設のものであることを確認してください。 DTAMは、輸出する花穂はGACP基準を満たさなければならないとしています。
- 花穂で取引する場合と並べて、抽出物で取引する場合の収支も計算してください。 小さくて手続きの多い花穂の市場が、余分な書類仕事に見合うかどうかが分かります。
5. 関税コードについて簡単に
税関は、国際的な品目分類であるHS(商品の名称及び分類についての統一システム)に基づく関税コードで貨物を分類します。大麻については、カナダの国家統計機関であるカナダ統計局(Statistics Canada)の対応表がいちばん分かりやすいものです。
| 製品 | 関税コード |
|---|---|
| 乾燥した大麻の花穂 | 1211.90 |
| 抽出物 | 1302.19 |
| 大麻を使った医薬品 | 3004.90 |
注意点が2つあります。1つ目に、花穂を油糧種子の項目である1207.99で申告すると、虚偽申告になります。荷送人は貨物の押収や刑事訴追を受けるおそれがあります。
2つ目に、正しいコードを使っても、貨物が合法になるわけではありません。関税コードが何であれ、国境では麻薬規制が適用されます。
やるべきこと: 箱の中身と実際に一致するコードを使ってください。出荷を予約する前に、対応するタイのコードをタイの通関業者に確認してもらってください。そうすれば、税関が箱を開けたときに、申告内容と中身が一致します。
経験を共有してください
このフォーラムで、未加工のヘンプの花穂を実際に通関させた人はいますか。そのとき、どんな書類を使いましたか。制度上は、スイスが当然の答えです。より役に立つのは次のような情報です。スイスの輸入業者はタイ側に何を求めましたか。タイの規制ハーブの書類は問題なく受け入れられましたか。このトピックの下でぜひ教えてください。
関連記事
- 上でリンクしたフォーラムの記事(アジアの大麻法、ヘンプとしてタイから輸出できるもの、2026年のタイの省令)。
- このフォーラムでまだ書かれていないテーマ:総THCとΔ9-THCの違い、EFSAのCBD上限とチェコの矛盾、タイのヘンプ輸出。
後編の参考資料
- 英国:Misuse of Drugs Act 1971、英国内務省(Home Office)の薬物ライセンスのファクトシート。
- 米国:USDAのヘンプ輸入規則、Public Law 119-37, Division B, §781(2025年11月12日成立)、H.R. 6500, Continuing Appropriations and Extensions Act, 2027(2026年9月署名)。
- オーストラリア:薬物管理局(Office of Drug Control)。
- ニュージーランド:保健省(Ministry of Health)、ニュージーランド警察(ヘンプ栽培のガイダンス)、Misuse of Drugs (Industrial Hemp) Regulations 2006、Misuse of Drugs Regulations 1977。
- 日本:改正大麻取締法(2024年12月12日施行)。
- 香港:保安局禁毒処(Narcotics Division)。
- シンガポール:中央麻薬局(Central Narcotics Bureau)。
- タイ:保健省告示「規制ハーブ(大麻)」仏暦2568年、タイ伝統医療保護法 仏暦2542年、大麻又はヘンプ抽出物に関する省令 仏暦2569年、規制ハーブに関する省令(第2号)仏暦2569年。
- 関税:Statistics Canada、大麻の関税コード対応表。
この記事は、それぞれの国・地域で合法的に事業を行う読者のための参考情報です。法律や通関に関する助言ではありません。ここで取り上げた市場のいくつかは、状況が変わりつつあります。米国の新しい定義は現在2026年12月11日に施行される予定ですが、議会が再び日付を変える可能性があります。また、タイの大麻管理法はまだ法案の段階です。出荷の前に、所管官庁と、資格を持つ現地の弁護士に確認してください。