このガイドでは、栽培にすぐ使える次の4つを扱います。
- 大麻の株の中で、各養分が果たす役割
- 各生育段階で、株が各養分をどれだけ吸収するか
- 肥料ラベルの数字を、タンクに入れる量に換算する方法
- 葉の症状から、考えられる原因をたどる方法
数値は複数の公開研究から引用しています。文献は末尾にまとめました。「訳者注」と記した段落では、タイと東南アジアで条件がどう変わるかを説明します。具体的には、硬水、30〜35 °Cの暑さ、雨季の高い湿度です。
このガイドでの数値の表し方
- mg/L は、養液1リットルに溶けている元素のミリグラム数です。水の場合、1 mg/L は 1 ppm(100万分の1)に相当します。計算方法は原料塩から養液を調合する方法で説明しています。
- EC(電気伝導度、単位 mS/cm)は、水に溶けている肥料塩の量を示します。養液の濃さはわかりますが、どの元素が入っているかはわかりません。pHとECの基礎を参照してください。
- 元素記号: N 窒素、P リン、K カリウム、Ca カルシウム、Mg マグネシウム、S 硫黄、Fe 鉄、Mn マンガン、Zn 亜鉛、Cu 銅、B ホウ素、Mo モリブデン、Cl 塩素(株は塩化物イオンの形で吸収します)。
- 栄養成長期(英語では veg)は、株が葉と茎を育てる時期です(詳しくは栄養成長期を参照)。開花期(英語では flower)は、花をつける時期です。
1. 三大栄養素:窒素、リン、カリウム
窒素(N)
窒素は、タンパク質、酵素、アミノ酸の材料になります。光を受け止める緑色の色素であるクロロフィルの材料でもあります。株が最も多くの窒素を必要とするのは栄養成長期です。
- 不足すると: 下葉が全体的に均一に黄色くなります。クロロフィルが失われて黄色くなるこの症状を「クロロシス(黄化)」と呼びます。生育が遅くなり、茎は細いままです。
- 過剰になると: 葉が不自然なほど濃い緑色になります。葉先が鉤爪のように下向きに曲がります。栄養成長期がだらだらと長引き、花の数が減ります。
- 吸収される形: アンモニウム(NH4+)と硝酸(NO3−)です。大麻は硝酸態を好みます。
やること: ラベルによっては、窒素のうち硝酸態とアンモニウム態の内訳が書かれています。製品を比べるときは、この内訳を確認してください。大麻は硝酸態の分をより吸収しやすいからです。
リン(P)
リンは、細胞の中でエネルギーを運ぶ分子であるATPの構成要素です。DNAやRNAの構成要素でもあります。根の成長、開花、種子の形成を支えます。
- 不足すると: 下葉が紫色や赤色になります。根は弱く、花は小さいままです。
- 過剰になると: 亜鉛と鉄の吸収を妨げます。その結果、株にはそれらの不足症状が出ます。
- 大麻が必要とするリンは、多くの栽培者が思っているより少量です。N. Bernsteinとその共同研究者は、大麻の施肥試験の結果を学術誌 Frontiers in Plant Science で発表している研究グループです。同グループによる2021年の開花期の試験(Shiponi and Bernstein)では、P 30 mg/Lで最大収量の約80%が得られました。
やること: ブルームブースターを追加する前に、今の施肥プログラムのP量を表1と比べてください。株が使いきれないリンにお金を払っていないか、亜鉛や鉄のロックアウトを招いていないかがわかります。
カリウム(K)
カリウムは気孔の開閉を調節します。気孔とは葉の表面にある小さな穴で、ここから水蒸気を出し、二酸化炭素を取り込みます。カリウムは株の中で水と養分を運び、光合成を最大の速度に保ち、樹脂の生成を支えます。
- 不足すると: 葉の縁が茶色く、焼けたようになります。このように組織が死んだ状態を壊死と呼びます。株は弱々しく、花穂の締まりが悪くなります。
- 過剰になると: カルシウムとマグネシウムの吸収を妨げます。
- カリウムの必要量が最も多いのは開花後期、つまり花穂が熟していく時期です。
訳者注: 30〜35 °Cでは、葉の縁が焼けたようになる原因は、カリウム不足ではなく暑さや高いECであることがよくあります(表4に両方の原因を載せています)。カリウムを足す前に、キャノピーの高さでの気温と、鉢から流れ出る排水のECを測ってください。暑さが原因なら、カリウムを足すとECがさらに上がり、カルシウムとマグネシウムの吸収を妨げるおそれがあります。
2. 生育段階別のN:P:K比
K. PowellとW. Bauerleは2026年、Frontiers in Plant Science に発表した研究で、大麻が各養分を実際にどれだけ吸収するかを測定しました。この論文は、米国国立医学図書館が運営する研究論文アーカイブ PubMed Central(PMC)でも無料で読めます。手法は「蒸散駆動型マスバランス(transpiration-driven mass balance)」と呼ばれます。株が葉から失う水(蒸散)と、その水が運び込む養分から吸収量を計算する方法です。栄養成長期の株が吸収した量は、N 78〜155 mg/L、P 13〜49 mg/L、K 111〜216 mg/Lでした。それぞれの範囲の上限で見ると、比率はおよそ N:P:K = 3:1:4 になります。論文自体は比率を示していません。これは論文の数値をもとに本記事で計算したものです。
表1:生育段階別の推奨N:P:K比
| 段階 | N | P | K | N (mg/L) | EC (mS/cm) |
|---|---|---|---|---|---|
| 実生苗または発根した挿し穂(クローン) | 1 | 0.5 | 1 | 80〜100 | 0.4〜0.8 |
| 栄養成長期前期 | 3 | 1 | 3 | 120〜140 | 0.8〜1.2 |
| 栄養成長期後期 | 3 | 1 | 3〜4 | 140〜160 | 1.2〜1.8 |
| 移行期(開花1〜2週目) | 2 | 1.5 | 3 | 120〜140 | 1.2〜1.6 |
| 開花前期(3〜4週目) | 1.5 | 2 | 3 | 100〜120 | 1.4〜1.8 |
| 開花中期(5〜6週目) | 1 | 2 | 3 | 80〜100 | 1.6〜2.0 |
| 開花後期(7〜8週目) | 0.5 | 1.5 | 3 | 60〜80 | 1.2〜1.6 |
| 成熟期/フラッシュ | 0 | 0.5 | 1 | 0〜40 | 0.2〜0.6 |
出典:Bevan、Jones、Zheng(2021年、Frontiers in Plant Science)、Powell、Bauerle(2026年、Frontiers in Plant Science)、Allred、Fatzinger、Bugbee(2025年、Journal of Cannabis Research)。
「週」は、照明を開花用のスケジュールに切り替えた日から数えます。EC列の値は養液全体のもので、カルシウム、マグネシウム、微量栄養素も含みます。
表と実測の吸収量は、完全には一致しません。表1では栄養成長期前期を3:1:3としていますが、PowellとBauerleの研究の株は3:1:4に近い比率で吸収していました。この表は、複数の出典をもとにまとめた目安です。3つの研究のどれも、この比率そのものは示していません。実測データは、よりカリウム寄りです。開花期については、表のP比率から計算すると、Pは約59 mg/Lを上回ります。約59 mg/Lは、Bevan、Jones、Zheng(2021年)で花穂の収量が最大になったP濃度です。栄養成長期後期の株にカリウム不足の症状(葉の縁の褐変、表4)が出たら、範囲のうち3:1:4の側に寄せてください。
開花後期に窒素を段階的に減らす
表1では、窒素を次のように段階的に減らしています。
- 栄養成長期後期:140〜160 mg/L
- 開花1〜2週目:120〜140 mg/L
- 3〜4週目:100〜120 mg/L
- 5〜6週目:80〜100 mg/L
- 7〜8週目:60〜80 mg/L
- 最後の成熟期:0〜40 mg/L
3週目以降は、2週間ごとに約20 mg/Lずつ減らす計算です。
この削減は意図的なものです。A. SalonerとN. Bernsteinは、同じ研究グループに属する共著者です。2人は、カンナビノイド濃度は窒素が少ないときに最も高く、窒素が増えるにつれて下がることを示しました。窒素を増やすと株の重量は増えます(第7節)。そのためこの表は、重量を多少あきらめて、カンナビノイド濃度を優先しています。最後の行は「フラッシュ」で、最後の期間を水だけ、またはごく薄い養液で育てることです。フラッシュで品質が上がるかどうかは議論が分かれています。収穫前のフラッシングを参照してください。
訳者注: 表1は、開花期間を約8週間と想定しています。熱帯で育てられる栽培品種(カルティバー)の多く、特にサティバ寄りのものは、開花期間がもっと長くなります。段階の順番はそのまま守ってください。そのうえで、上の暦どおりの週ではなく、ご自分の栽培品種の実際の開花期間に合わせて間隔を広げてください。
やること: 開花期に切り替える前に、栽培品種の開花期間について、週ごとの窒素目標値を書き出してください。いつ減らすかが前もってわかるので、栽培の終盤に迷わずに済みます。
3. 肥料ラベルの読み方:酸化物から元素、そしてmg/Lへ
肥料ラベルには、N–P–Kの順に3つの主要な数字が書かれています。タイのラベルを含むほとんどのラベルでは、Pは五酸化リン(P₂O₅)、Kは酸化カリウム(K₂O)として表示されています。純粋な元素の量ではありません。一方、研究論文と表1は純粋な元素で表しています。比べる前に、ラベルの数字を換算してください。
- P = P₂O₅ × 0.436
- K = K₂O × 0.830
- Nは換算不要です。
パーセントからmg/Lへ: 元素の% × 1リットルあたりの製品のグラム数 × 10 = その元素のmg/L
例(4–6–8と表示された架空の製品を2 g/Lで使う場合):
| ラベルの% | 元素の% | 2 g/Lでのmg/L | |
|---|---|---|---|
| N | 4 | 4 | 80 |
| P | 6(P₂O₅) | 2.6 | 52 |
| K | 8(K₂O) | 6.6 | 133 |
ラベルだけ見ると、リンが多い製品に見えます。しかし元素で比べると、比率は約3:2:5です。Pの52 mg/Lは、栄養成長期の実測吸収量の上限(49 mg/L)をすでに超えています。
液体肥料はmLで計量しますが、パーセント表示は重量比であることが多いです。mLに製品の密度(1 mLあたりのグラム数)を掛けて、グラムに換算してください。密度はラベルや安全データシートに書かれていることが多いです。密度がわからない場合は、計算結果を概算として扱ってください。複数の製品を混ぜる場合は、各製品が供給する量と、もともと水に含まれている量を合計します。
全量と有効成分。 「全量(total)」は、袋に入っているすべての量です。「有効(available)」または「水溶性(water-soluble)」は、根が吸収できる部分です。タイのラベルには一般に、ไนโตรเจนทั้งหมด(全窒素)、ฟอสเฟตที่เป็นประโยชน์(有効P₂O₅)、โพแทชที่ละลายน้ำ(水溶性K₂O)が記載されています。有機質の製品では、窒素の多くが有機物に結びついています。土壌微生物が分解するまで、株はそれを吸収できません。そのため、こうした袋の全窒素の数字は、株が今週使える量より多めに見えます。有機肥料ごとの窒素の放出の違いを参照してください。
訳者注: タイの肥料は、肥料法 仏暦2518年(1975年)の対象です。この法律の改正は、肥料法(第2号)仏暦2550年(2007年)の1回だけです。製品が登録済みかどうかの確認方法とタイ語ラベルの読み方は、別のトピックで解説しています。
やること: 今使っている配合のN、P、Kをmg/Lで計算し、数字を書き留めてください。それを表1と比べます。リンを与えすぎていないか、カリウムが足りていないかがわかります。
4. 二次要素:カルシウム、マグネシウム、硫黄
カルシウム(Ca)
- 働き: 細胞壁をつくり、株の中で信号を伝えます。
- 不足すると: 新しい葉に茶色の斑点が出ます。葉先が変形し、根が短くなります。
- 目標値: 養液中のカルシウム 100〜200 mg/L。
訳者注: カルシウムは、株が吸い上げて葉から放出する水の流れに乗って移動します。雨季は空気が湿っているため、葉から出ていく水が減ります。すると、新しい葉に届くカルシウムも減ります。そのため、養液に十分な量があっても、カルシウム欠乏が出ることがあります。カルシウムを足す前に、風通しを良くして湿度を下げてください。栽培室の環境制御を参照してください。
マグネシウム(Mg)
- 働き: クロロフィル分子の中心にあり、酵素を活性化します。
- 不足すると: 葉脈は緑のまま、葉脈の間が黄色くなります。マグネシウムは移動しやすい養分です(第6節)。そのため黄変は、株の下部から中部の古い葉から始まり、上へ広がります。
- 供給源: エプソムソルト(硫酸マグネシウム、MgSO₄)、CalMag製品、苦土石灰(ドロマイト)。
訳者注: タイでは、エプソムソルトはดีเกลือ、ドロマイトはปูนโดโลไมท์という名前で売られています。どちらも農業資材店で簡単に手に入ります。ดีเกลือのラベルに「硫酸マグネシウム」と書かれていることを確認してください。一般的な七水和物(MgSO₄·7H₂O)は、Mgを約9.9%、Sを約13%含みます。1 g/Lで加えると、マグネシウムが約99 mg/L、硫黄が約130 mg/L増えます。ドロマイトはゆっくり溶けます。土のベッドや屋外の地植えには向きますが、水耕栽培やココ培地の養液タンクには向きません。
硫黄(S)
- 働き: タンパク質と酵素をつくります。元の記事では、硫黄を「テルペン(チオール構造)」とも結びつけています。正確には、硫黄がつくるのはチオールです。チオールは硫黄を含む香り成分で、スカンクのような匂いの一部のもとになります。テルペンそのものには硫黄は含まれていません。
- 不足すると: 上部の新しい葉が均一に黄色くなります。窒素不足に似ていますが、症状が出るのは「上の葉」です。
- 良質な無機肥料を使っていれば、硫黄不足はまれです。
やること: CalMagを買う前に、原水のpHとECを測ってください。何も加えていない水のECがはっきり高ければ、ミネラルが溶けています。多くの場合、それはカルシウムとマグネシウムです。硬水については灌漑用水:硬水とクロラミンで説明しています。正確な数値が必要なら、水質検査機関にCa/Mg分析を依頼してください。水にすでに含まれているカルシウムとマグネシウムを、重ねて加えずに済みます。
5. 微量栄養素:Fe、Mn、Zn、Cu、B、Mo、Cl
表2:微量栄養素の働きと欠乏症状
| 元素 | 主な働き | 欠乏症状 | 吸収を妨げるpH |
|---|---|---|---|
| Fe(鉄) | クロロフィル、呼吸 | 新しい葉の葉脈の間が黄変 | pH > 6.5 |
| Mn(マンガン) | 光合成、酵素 | 葉脈の間に小さな黄色い斑点 | pH > 6.5 |
| Zn(亜鉛) | ホルモン、酵素 | 小さく変形した黄色い葉 | pH > 7.0 またはPの過剰 |
| Cu(銅) | 酵素、リグニン(茎を硬くする物質) | しおれた紫色の葉 | pH > 6.5 |
| B(ホウ素) | 細胞壁、細胞分裂 | 先端が枯れる、茎が空洞になる | pH > 6.5 または根域の乾燥 |
| Mo(モリブデン) | 硝酸を利用できる窒素に変える、酵素 | 葉の縁が上向きに巻く、黄変 | pH < 5.5 |
| Cl(塩素) | 細胞内の水圧 | しおれ、短い根 | 欠乏はまれ |
元の資料では、モリブデンの働きを「窒素固定」としていました。しかし空気中の窒素を固定するのは、豆などマメ科植物の根にいる細菌です。大麻自身は窒素を固定しません。大麻では、硝酸を変換する酵素(硝酸還元酵素)がモリブデンを必要とします。
表2のpHの限界値は、土壌での値です。ココ培地や水耕栽培では、もっと低いpHで吸収の問題が始まります。目安はpH 6.0を超えたあたりです(第8節)。
やること: 微量栄養素の欠乏症状が見えたら、微量栄養素の製品を買う前に、養液と排水のpHを測ってください。この表の不足の多くは、元素がないことではなく、pHが合っていないことが原因です。
6. 移動しやすい養分と移動しにくい養分:症状が出る場所
これは、養分不足を診断するうえで最も重要なルールです。
表3:移動性養分と非移動性養分
| 種類 | 元素 | 症状が出る場所 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 移動性 | N, P, K, Mg, Mo | 古い(下の)葉 | 株がこれらを古い葉から新しい葉へ移すため |
| 非移動性 | Ca, Fe, Mn, Cu, B, S, Zn | 新しい(上の)葉 | 一度組織に入ると、株が移動させられないため |
下から上へ広がる黄変は、移動性養分の不足を示します。多くはN、Mg、Kです。上から下へ広がる黄変は、非移動性養分の不足を示します。多くはFe、Ca、Mnです。
栽培者向けの早見表では、亜鉛が移動性に分類されていることがよくあります。しかし植物栄養学の文献では、亜鉛は比較的移動しにくい養分とされています。亜鉛の欠乏は若い葉から先に現れます(小さく変形した葉、表2)。亜鉛不足は株の上部で探してください。
やること: 葉が黄色くなり始めたら、最初にどの葉に出たかを記録し、2日ごとに写真を撮ってください。その写真を植物の診療所のセクションに投稿してください。症状がどこから始まったかの記録があれば、ほかの栽培者が移動性か非移動性かを見分けられます。
7. 株が実際に吸収する量
Powell and Bauerle(2026年)の研究は、実際の吸収量を次のように測定しました。
- N: 78〜155 mg/L(栽培品種と生育段階によって異なる)
- P: 13〜49 mg/L(多くの施肥表が示す量よりはるかに少ない)
- K: 111〜216 mg/L(最も多く吸収される養分)
SalonerとBernsteinは、栄養成長期には約 160 mg/LのN で最もよく育つことを示しました(2020年の論文)。開花期では、Nが約160 mg/Lを下回ると収量が下がりました(2021年の論文)。表1は、開花期の窒素を意図的に低く設定しています(第2節)。160 mg/Lは株の重量を最大にする値です。一方、表はカンナビノイド濃度を最大にすることを目指しています。
多くのメーカーの施肥表は、開花期のリンを高く設定しすぎています。研究の数値に近い量で施肥すれば、費用を節約でき、ロックアウトも避けられます。
訳者注: 吸収量は、養分濃度に株が使う水の量を掛けたものです。30〜35 °Cでは、株ははるかに多くの水を吸います。水耕栽培では、塩が使われるより速くタンクの水位が下がるため、ECが上がっていきます。詳しくは温帯向けの施肥プロトコルが31 °C・85% RHで破綻する理由のトピックで解説しています。
やること: 暑い週は、毎日タンクのECを測って記録してください。ECが目標値を超えたら、養液ではなく水だけを足してください。少しずつ濃くなる過剰施肥を防ぎ、株を表1の濃さに保てます。
8. ロックアウトと元素どうしの相互作用
養分ロックアウトとは、ある元素が多すぎたり、pHが合っていなかったりするために、株が別の元素を吸収できなくなる状態です。その元素は養液の中にあるのに、株は不足してしまいます。
- Pの過剰は、ZnとFeの吸収を妨げる
- Kの過剰は、CaとMgの吸収を妨げる
- Caの過剰は、MgとKの吸収を妨げる
- pHが高すぎる(土壌で6.5超、水耕栽培で6.0超)と、Fe、Mn、Zn、Cu、Bの吸収が妨げられる
- pHが低すぎる(5.5未満)と、Ca、Mg、P、Moの吸収が妨げられる
まず養分を水に溶かし、そのあとでpHを測って調整してください。 目標範囲は、土壌で6.0〜6.5、ココ培地と水耕栽培で5.5〜6.0です。養分の塩はそれ自体でpHを変えます。そのため、肥料を入れる前に合わせたpHは、肥料を入れると保てません。
訳者注: タイでは、多くの栽培者が井戸水や硬度の高い水道水を使っています。硬水は最初からpHが高く、炭酸塩を含んでいることが多いです。炭酸塩は、調整したあとのpHを再び押し上げます。調整してから数時間後に、混ぜた養液をもう一度測ってください。pHがじわじわ上がっていたら、水に含まれる炭酸塩が原因である可能性が高いです。
やること: 毎回同じ順番で作業してください。水 → 養分を1種類ずつ入れ、そのたびにかき混ぜる → ECを測る → pHを調整する → 数時間後にpHをもう一度測る。順番を固定すると、週ごとの測定値を比べられ、問題に早く気づけます。
9. 葉の症状による簡易診断
表4:葉の症状による簡易診断
| 症状 | 場所 | 考えられる原因 | やること |
|---|---|---|---|
| 下から始まる均一な黄変 | 古い葉 | N欠乏 | Nを増やし、pHを確認 |
| 葉脈は緑で、葉脈の間が黄変 | 中位〜古い葉 | Mg欠乏 | エプソムソルト 1 g/L |
| 葉の縁が茶色く焼けたようになる | 古い葉 | K欠乏、または暑さ/高EC | Kを増やす、ECを下げる |
| 茎と葉柄が紫色 | 株全体 | P欠乏または低温 | 温度とpHを確認 |
| 新しい葉が黄色く、葉脈は緑 | 上部 | Fe欠乏 | pH > 6.5ならpHを下げる |
| 新しい葉に茶色の斑点と変形 | 上部 | Ca欠乏 | CalMag、pHを確認 |
| 葉が濃い緑で、葉先が鉤爪状 | 株全体 | Nの過剰 | フラッシュし、Nを減らす |
| 葉先が焼ける | 株全体 | 肥料焼け(ECが高すぎる) | フラッシュし、ECを下げる |
この表の「フラッシュ」は、鉢に水だけを流して余分な塩を洗い流すことを指します。
訳者注: 紫色の茎の原因として低温が考えられるのは、涼しい季節の山岳地帯だけです。それ以外の地域では、まずpHとリンを確認してください。また、遺伝的に紫色になる栽培品種もあります。よく育っている紫色の株には、対処は必要ありません。
やること: 一度に変えるのは1つだけにし、まず2〜3株で試してください。日付、変更した内容、1週間後の株の様子を記録します。2つを同時に変えると、どちらが問題を解決したのか、どちらが新しい問題を起こしたのかがわからなくなります。
今週から始めること
- 原水のpHとECを測る。 肥料を入れる前の水に、何がもともと含まれているかがわかります。
- 肥料ラベルを元素のmg/Lに換算する(第3節)。 実際のN、P、Kの量がわかります。
- 自分の数値を表1と比べる。 どこで与えすぎ、どこで不足しているかがわかります。特に開花期のリンに注目してください。
- 変更はすべて、少数の株で1サイクル通して試す。 1つの失敗で作物全体を失わずに済みます。
質問や、ご自身の施肥の数値は、このトピックの下か一般的な養分にぜひ投稿してください。ほかの人が比べられるよう、水源、培地、栽培品種、室温も書き添えてください。
参考文献
- Powell K, Bauerle WL (2026). “Predicting vegetative phase nutrient uptake in Cannabis sativa L. via transpiration-driven mass-balance.” Frontiers in Plant Science. PMC12872892.
- Bevan L, Jones M, Zheng Y (2021). “Optimisation of Nitrogen, Phosphorus, and Potassium for Soilless Production of Cannabis sativa in the Flowering Stage Using Response Surface Analysis.” Frontiers in Plant Science.
- Allred J, Fatzinger B, Bugbee B (2025). “Crop steering through osmotic stress…” Journal of Cannabis Research.(クロップステアリング(生育方向制御)とは、灌水とECを意図的に制御して、株を葉の成長の方向、または開花の方向へ導くことです。)
- Saloner A, Bernstein N (2020). “Response of Medical Cannabis (Cannabis sativa L.) to Nitrogen Supply Under Long Photoperiod.” Frontiers in Plant Science.
- Cockson P et al. (2019). “Characterization of Nutrient Disorders of Cannabis sativa.” Applied Sciences (MDPI).
- Kalinowski J et al. (2020). “Augmenting Nutrient Acquisition Ranges of Greenhouse Grown CBD (Cannabidiol) Hemp (Cannabis sativa) Cultivars.” Horticulturae.
- Shiponi S, Bernstein N (2021). “The Highs and Lows of P Supply in Medical Cannabis: Effects on Cannabinoids, the Ionome, and Morpho-Physiology.” Frontiers in Plant Science.
- Saloner A, Bernstein N (2021). “Nitrogen supply affects cannabinoid and terpenoid profile in medical cannabis (Cannabis sativa L.).” Industrial Crops and Products.
法的注意事項
本記事は、教育と参考のみを目的としています。大麻の栽培は、お住まいの地域で施行されている法律に従って行ってください。
タイでは、大麻の花穂は保健省告示「規制ハーブ(大麻)」仏暦2568年に基づく規制ハーブです。この告示は、タイ伝統医療保護法 仏暦2542年に基づいて出され、2025年6月26日から施行されています。花穂は、PT 33(ภ.ท.33)処方箋がある場合に限り、最大30日分まで販売できます。花穂の広告とオンライン販売は禁止されています。
仏暦2569年の2つの省令も適用されます。
- 大麻またはヘンプの抽出物に関する省令(2026年4月26日施行)は、THC 0.2%を超える抽出物のライセンスを次の者にだけ認めています。外国人事業法 仏暦2542年でいう「外国人」に当たらないタイの法人、国の機関、タイ赤十字社です。
- 規制ハーブ(第2号)省令(2026年4月30日施行)は、大麻の花穂のライセンス基準を厳しくしています。
大麻管理法案(Cannabis Control Act)は、まだ法律になっていません。内閣は2026年9月22日に法案を承認し、下院に送付しました。
本フォーラムでは、直接販売、嗜好目的での使用の推奨、大麻が禁止されている国に向けたコンテンツは認められていません。