このトピックでは、輸出向けに認証を受けた大麻生産の基本を説明します。扱うのは次の4点です。
- GACPが農場に求めること
- GMPが適用され始める工程
- EU-GMP基準がGMPに加えて求めること
- 出荷前に輸入国の規制当局が確認すること
3つの基準をわかりやすく
GACP(適正農業・採取規範)は、薬用植物の栽培・収穫・乾燥についての規則です。農場で適用されます。目的は、すべてのバッチを清潔に保ち、履歴をたどれるようにすることです。
GMP(適正製造規範)は、農場から出たあとの作業についての規則です。植物原料の加工、包装、最終製品としての出荷判定がこれに含まれます。GMPが適用されるのは加工施設で、畑ではありません。
EU-GMP基準は、欧州連合(EU)版のGMPです。ほかのGMPガイドとの違いや、実際の証明書がどのようなものかは、トピック「EU-GMP基準とPIC/S GMP」で説明しています。
一般的には、乾燥した植物が加工に回り、販売される製品になる時点でGACPの範囲は終わります。そこから先はGMPの範囲です。大麻の花穂の場合、この境界線の正確な位置は輸入国の規則で決まります。EUでは、乾燥とそれ以降の工程がGMPの範囲とされるのが普通です。ただし、国や地域によって査察官の判断が分かれることもあります。2026年には、ドイツのヘッセン州の保健当局が「収穫地で行う乾燥とトリミングも、すでにGMPを満たす必要がある」との見解を示しました。乾燥室を建てる前に、バイヤーにこの点を確認してください。花穂がどこに位置づけられるかは、トピック「原薬(API)」で説明しています。
訳者注:タイには大麻向けの独自のGACP基準があります。その内容はトピック「GACP認証はPGR不使用を意味するのか?」で一行ずつ解説しています。この基準に基づく農場の認証は、タイ伝統・代替医療局が行います。
まずやること: 農場と加工エリアの簡単な見取り図を描きましょう。各部屋に「農場作業(栽培、収穫、乾燥)」か「加工(トリミング、包装、抽出)」かを書き込みます。こうしておけば、建設や改修にお金をかける前に、各部屋がどの基準を満たす必要があるかがわかります。
作業の大半は「実際に起きたことと一致する記録」づくり
これらの基準で問われるのは、まず記録です。栽培方法はその次です。査察官は、書類の内容と、畑や乾燥室で実際に行われたことを照らし合わせます。「実施した」と書かれていても裏づけがなければ、その記録は認められません。
書面で残す証拠は、通常次の6つです。
- 標準作業手順書(SOP): 養液の調合や乾燥室の清掃など、日常作業ごとの手順を一つずつ書いた指示書です。全員が同じやり方で作業するため、バッチ同士を比べられます。
- バッチ記録: バッチごとに、何を・いつ・誰が行ったかを残す記録です。後で問題が見つかったときに、原因までさかのぼれます。
- 教育を受けた、氏名のわかる担当者: すべての作業は、書類に名前があり、教育記録のある人が行います。作業者がやり方を理解していたことを、査察官が確認できます。
- バリデーション済みの清掃: ただの習慣ではなく、試験で効果が確かめられた清掃方法です。前のバッチの残留物や汚染が次のバッチに持ち越されるのを防ぎます。
- 管理された保管: 温度と湿度を決められた範囲に保ち、記録する保管です。この記録が、出荷前に製品が劣化していないことの証明になります。
- ロットにひもづいた検査: すべての検査結果は、特定の1ロット(固有の番号を持つバッチ)にひもづけます。検査報告書の内容は、トピック「大麻の分析証明書(COA)の読み方」で説明しています。
訳者注:タイの気候では、保管と乾燥の記録を維持するのが難しくなります。雨季には、外気の湿度が乾燥室の許容範囲を超えることがよくあります。停電も予告なく起こり、エアコンや除湿機が止まります。タイでの乾燥のセットアップは「外気湿度85–95%での大麻の乾燥」で比較しています。
訳者注:ここで役立つ習慣が2つあります。1つ目は、電池式の温湿度データロガーを使うことです。停電中も測定が途切れません。2つ目は、停電のたびに開始時刻、終了時刻、とった対応をバッチ記録に書くことです。理由が書かれた空白なら、査察官は判断の材料を得られます。説明のない空白では、何の材料にもなりません。
訳者注:汚染物質の基準値には、農薬の残留も含まれます。タイでは、農業局(กรมวิชาการเกษตร)に登録された農薬だけを使い、ラベルの表示どおりに使用してください。大麻専用の製品リストがない理由は、トピック「タイGACPで合法的に散布できるもの」で説明しています。
まずやること: 小さなバッチを1つ選びます。2週間、そのバッチのバッチ記録を毎日つけてください。作業内容、時刻、担当者、乾燥室の温度と湿度を書きます。すでに残せている記録と、新しいSOPや機材が必要な記録が見えてきます。
輸出を前提に農場を計画する前に決めておくべき2つのこと
1. 証明書の対象は、特定の施設・工程・製品に限られます。 乾燥を別の部屋に移す、重要な工程を変える、栽培品種(カルティバー)を切り替える。こうした変更をすると、認証の内容も変わります。変更する前に、認証機関を通して手続きをしてください。小さな調整として扱ってはいけません。
やること: 変更記録をつけましょう。部屋・工程・栽培品種を変える前に、その内容を書き留め、承認が必要かどうかを認証機関に確認します。こうすれば、農場の改善を続けながら証明書を有効に保てます。
2. 輸入国の規則は、自国の規則と同じくらい重要です。 輸入国ごとに、次のものがそれぞれ定められています。
- 輸入許可(製品を国内に持ち込むために必要な許可)
- 農薬の残留や微生物など、汚染物質の許容基準値
- 一部の国では、その国の規制当局による査察
輸出のスケジュールが遅れる原因は、この輸入国側にあることが最も多いです。農場が認証を取得していても、バイヤーの国の手続きで何か月も待たされることがあります。
やること: 輸出向けに植え付ける前に、目標とする市場を1つに絞りましょう。その国の輸入許可の要件と汚染物質の基準値を、書面で入手します。それを現在の検査結果と比べてください。足りない点が、国境ではなく収穫前に見つかります。最初に読むなら「医療用大麻の花穂の5市場比較」と「輸出前の大麻の花穂の検査」がおすすめです。
訳者注:タイの法律について。大麻の花穂(ช่อดอกกัญชา)は、保健省告示「規制ハーブ(大麻)」仏暦2568年により、規制ハーブに指定されています。この告示は2025年6月26日から施行されています。規制ハーブを輸出するには、タイ伝統医療保護法 仏暦2542年(1999年)第46条に基づくライセンスが必要です。ライセンスなしで輸出すると、第78条により1年以下の拘禁刑、2万バーツ以下の罰金、またはその両方が科されます。
訳者注:規制ハーブに関する省令(第2号)仏暦2569年が、2026年4月30日に施行されました。この省令で、大麻の花穂のライセンス基準が厳しくなっています。抽出も計画に入れている場合は、大麻又はヘンプ抽出物に関する省令 仏暦2569年にも注意してください。こちらは2026年4月26日から施行されています。この省令のもとで、THC 0.2%を超える抽出物のライセンスを受けられるのは次の者だけです。
- 外国人事業法 仏暦2542年でいう「外国人」に当たらないタイの法人
- 国の機関
- タイ赤十字社
両方の省令については「タイの仏暦2569年の2つの省令」で説明しています。タイの輸出ライセンスは、認証とは別に申請する必要があります。
訳者注:大麻管理法案(Cannabis Control Act)は、まだ法律になっていません。内閣は2026年9月22日に法案を承認し、下院に送付しました。計画は、現在施行されている規則に基づいて立ててください。
どこから始めるか
- 冒頭でリンクしたGACPガイドを、前編、後編の順に読みます。監査員が農場と保管場所で何を確認するかがわかります。
- 「タイの農場から規制された海外市場へ」とその後編を読みます。輸出の手順を順番に把握でき、各段階で必要な書類もわかります。
- 上で説明したとおり、小さなバッチ1つで2週間のバッチ記録をつけます。記録の抜けを、まだ安く直せる段階で見つけられます。
- 目標市場を1つ選び、その国の輸入許可、汚染物質の基準値、査察の規則を一覧にします。収穫物をその市場に向ける前に、自分の農場に合うかどうかを判断できます。
- フォーラムの「GACP Farms」セクションで、認証を経験した生産者に聞いてみましょう。各段階に実際どれくらいの期間がかかったかを教えてもらえます。
GACP認証や輸出向けの認証を目指している方は、このトピックの下に質問や経験を投稿してください。